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橋下徹大阪市長の慰安婦を巡る発言の背景となった安倍首相の「閣議決定」に関する発言について

橋下徹大阪市長の慰安婦を巡る発言の背景となった安倍首相の「閣議決定」に関する発言について

辻元清美は慰安婦問題をはじめとする歴史認識問題について、国会議論を積み重ねてきました。
その結果、河野官房長官談話をめぐる国会での議論や歴代総理の見解と、安倍首相・橋下市長の発言との間の矛盾が明らかになってきました。

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橋下徹大阪市長の慰安婦を巡る発言の背景となった安倍首相の「閣議決定」に関する発言について

2013.5.23
民主党衆議院議員 辻元清美

日本維新の会の代表である橋下徹大阪市長の慰安婦を巡る発言が波紋を巻き起こしている。これは、安倍晋三総理の慰安婦問題についてのこれまでの認識と発言が、橋下発言を誘発したと考えられる。

河野官房長官談話について、安倍首相は、第一次安倍内閣で「強制連行を直接示すような記述はなかった」ことを初めて「閣議決定」(D)をしたとし、それを根拠に河野官房長官談話の見直しを示唆する発言(A・B)を繰り返している。また、橋下市長は、これらの安倍首相の発言を根拠に「強制連行はなかった」という趣旨の発言(C)を繰り返している。
しかし、ここで安倍首相がいう「閣議決定」は、歴代内閣の認識(E・F)と同じ認識を示したにすぎず、またすでに、1997年に橋本内閣でも同じ内容の答弁の閣議決定(G)がなされており、第一次安倍内閣であらたな事実を閣議決定したわけではない。
歴代内閣では、「強制連行を直接示すような記述は見当たらなかったが、関係資料の調査や関係者からの聞き取りなどから全体として判断し、河野官房長官談話となった」との認識が繰り返し示されている。すなわち、「強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」ということは認めた上で、河野官房長官談話を発出したとの認識が示されてきたのであり、第一次安倍内閣での「閣議決定」もそれを踏襲したにすぎない。
したがって、「強制連行を直接示すような記述はなかった」ことを根拠に河野官房長官談話を見直すことはできない。

<安倍首相の発言>
A)「さきの第一次安倍内閣のときにおいて、質問主意書に対して答弁書を出しています。これは安倍内閣として閣議決定したものです。つまりそれは、強制連行を示す証拠はなかったということです。」(2013年2月7日・衆議院予算委員会)
B)「河野洋平官房長官談話によって、強制的に軍が家に入り込み人さらいのように連れていって慰安婦にしたという不名誉を、日本は背負っている、安倍政権のときに強制性はなかったという閣議決定をしたが、多くの人たちは知らない、河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がある、孫の代までこの不名誉を背負わせるわけにはいかない。」(2012年9月15日・日本記者クラブでの討論会〔野党党首時代〕)

<橋下市長の発言>
C)「河野談話は閣議決定されていませんよ。それは河野談話は、談話なんですから。だから、日本政府が、日本の内閣が正式に決定したのは、この2007年の閣議決定だった安倍内閣のときの閣議決定であって、この閣議決定は慰安婦の強制連行の事実は、直接裏付けられていないという閣議決定が日本政府の決定です。」(2012年8月24日囲み)
※安倍首相、橋下市長の発言は同種のものが多くあるため、一部を掲載。

両者の発言で、強制連行がなかったという根拠に挙げている「2007年の第一次安倍内閣での閣議決定」とは、辻元清美が提出した質問主意書に対する答弁(D)を指す。
※質問主意書とは、議員が政府に対して文書形式で質問をすること。それに対する政府の答弁は文書でなされ閣議決定して回答をする。
D)「安倍首相の『慰安婦』問題への認識に関する質問主意書」(2007年3月8日辻元清美提出)への答弁(2007年3月16日)
「関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の内閣官房長官談話のとおりとなったものである。また、同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」

安倍首相は、上記答弁の後段の部分だけを引用して、「強制連行を直接示す記述はなかった」とし、この部分を、河野官房長官談話を見直す根拠にしようとしている。
しかし、この答弁は、前段とセットになっていて、「強制連行を直接示すような記述は見当たらなかったが、関係資料の調査や関係者からの聞き取りなどから全体として判断し、河野官房長官談話となった」という内容になっている。
これは、歴代の内閣と同じ答弁(E・F)を繰り返したに過ぎない。

<歴代の内閣の答弁>
E)片山虎之助委員の質問に対する平林博官房外政審議室長による政府答弁(1997年1月30日参議院予算委員会)
「政府といたしましては、二度にわたりまして調査をいたしました。一部資料、一部証言ということでございますが、先生の今御指摘の強制性の問題でございますが、政府が調査した限りの文書の中には軍や官憲による慰安婦の強制募集を直接示すような記述は見出せませんでした。ただ、総合的に判断した結果、一定の強制性があるということで先ほど御指摘のような官房長官の談話の表現になったと、そういうことでございます。」

F)板垣正委員の質問に対する村岡官房長官の政府答弁(1998年4月7日総務委員会)
「第一点は、先生今御指摘になられましたように、政府が発見した資料、公的な資料の中には軍や官憲による組織的な強制連行を直接示すような記述は見出せなかったと。第二点目は、その他のいろいろな調査、この中には、おっしゃったような韓国における元慰安婦からの証言の聴取もありますし、各種の証言集における記述もありますし、また日本の当時の関係者からの証言もございますが、そういうものをあわせまして総合的に判断した結果一定の強制性が認められた、こういう心証に基づいて官房長官談話が作成されたと、こういうことでございます。」

さらに、安倍首相は「いわばその重たい閣議決定をしたのは初めてであります」(2013年3月8日の辻元の予算委員会質問に対する答弁)と、歴代内閣で初めて、「強制連行を直接示す記述はなかった」ことを閣議決定したと答弁している。ところが、これも虚偽答弁である。
すでに1997年11月21日、高市早苗議員の提出した質問主意書に同じ内容の答弁(G)が橋本内閣によって閣議決定されている。
G)高市早苗議員の質問主意書「慰安婦」問題の教科書掲載に関する再質問主意書(1997年11月21日)に対する答弁書
「いわゆる従軍慰安婦問題に関する政府調査においては、発見された公文書等には、軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接的に示すような記述は見られなかった。他方、調査に当たっては、各種の証言集における記述、大韓民国における元慰安婦に対する証言聴取の結果等も参考としており、これらを総合的に判断した結果、政府調査結果の内容となったものである」

上記のように、河野官房長官談話について、第一次安倍内閣で新しい内容の閣議決定をしたわけではない。第一次安倍内閣は、歴代の内閣と同じ答弁や閣議決定を繰り返したに過ぎないのであって、河野官房長官談話を見直す根拠は存在しない。

にも関わらず、第一次安倍内閣であたかも新しい認識を示したかのような答弁を繰り返し、河野官房長官談話を見直す根拠にしようとする安倍首相の姿勢は、国民をあざむこうとしていると言わざるを得ない。
また、こうした安倍首相の発言をもとに発言する橋下市長も認識不足と言える。

以上

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