つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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集団的自衛権の行使に関する質問主意書

2013.8.5

質問主意書

平成二十五年八月五日提出
質問第五号

集団的自衛権の行使に関する質問主意書

提出者  辻元清美

集団的自衛権の行使に関する質問主意書

 本年八月二日、政府が内閣法制局長官に外務省出身者を起用するという報道がなされた。翌三日には安倍首相が設置した有識者会議がミサイル防衛システムなどの四類型の見直しにとどまらず、集団的自衛権の行使を全面的に容認する新たな憲法解釈を提言するという報道もなされた。
 集団的自衛権をめぐる議論はこれまでに立法府で積み重ねられてきており、これを無視して強引に解釈を変えようという試みは、国会答弁を形骸化させるものであり、立法府の立場から許されるものではない。
 従って、以下、質問する。

一 昭和五六年五月二九日、鈴木善幸内閣で閣議決定された「衆議院議員稲葉誠一君提出『憲法、国際法と集団的自衛権』に関する質問に対する答弁書」において、政府は「我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。」と答弁している。第一次安倍内閣においても、平成一九年五月一一日に閣議決定された「衆議院議員鈴木宗男君提出自衛権に関する質問主意書」に対する答弁書で、政府は「政府としては、従来から、憲法第九条は、外部からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされるような場合にこれを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することまでは禁じていないと解しており、他方、集団的自衛権とは、国際法上、一般に、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利と解されており、その行使は憲法上許されないと解してきたところである。」と答弁している。政府の認識は現在も変わりないか。
二 平成一六年一月二六日の衆議院予算委員会で、安倍晋三委員の質問に対して政府は「国家が国際法上、ある権利を有しているとしましても、憲法その他の国内法によりその権利の行使を制限することはあり得ることでございまして、国際法上の義務を国内法において履行しない場合とは異なり、国際法と国内法との間の矛盾抵触の問題が生ずるわけではございませんで、法律論としては特段問題があることではございません。それで、政府は、従来から、その九条の文理に照らしますと、我が国による武力の行使は一切できないようにも読める憲法九条のもとでもなお、外国からの武力攻撃によって国民の生命身体が危険にさらされるような場合に、これを排除するために武力を行使することまでは禁止されませんが、集団的自衛権は、我が国に対する急迫不正の侵害に対処するものではなく、他の外国に加えられた武力行使を実力で阻止することを内容とするものでありますから、憲法九条のもとではこれの行使は認められないと解しているところでございます。」(秋山収内閣法制局長官)と答弁している。政府の認識は現在も変わりないか。
三 防衛省は、現在、ホームページに「国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有しているとされています。わが国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然です。しかしながら、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものであって、憲法上許されないと考えています。」と明記している。英語版ホームページでも「It is, however, not permissible to use the right, that is, to stop armed attack on another country with armed strength, although Japan is not under direct attack, since it exceeds the limit of use of armed strength as permitted under Article 9 of the Constitution.」と記されており、これを集団的自衛権に関する政府の公式な立場として全世界に宣明しているが、安倍内閣の認識はこの通りと考えてよいか。
四 第一次安倍内閣における集団的自衛権をめぐる議論において、平成一九年六月五日の参議院外交防衛委員会で、法律の解釈権について、櫻井充委員の質問に対し、政府は「憲法を始めとする法令の解釈、これは当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また議論の積み重ねのあるものにつきましては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものでございまして、政府による憲法の解釈はこのような考え方に基づいてそれぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものでございます。したがいまして、その取扱いについては、これは慎重でなければならないというふうに承知しております。」(山本庸幸内閣法制局第一部長)と答弁している。政府の認識は現在も変わりないか。
五 平成一五年一二月一九日、政府は「集団的自衛権との関係については、今回我が国が導入するBMDシステムは、あくまでも我が国を防衛することを目的とするものであって、我が国自身の主体的判断に基づいて運用し、第三国の防衛のために用いられることはないことから、集団的自衛権の問題は生じません。」とする福田康夫内閣官房長官談話を出している。政府の認識は現在も変わりないか。そうであれば、「第三国の防衛のために用いられる」場合は、集団的自衛権の行使に該当するという認識でよいか。
六 第一次安倍内閣における平成一八年一一月二四日の衆議院安全保障委員会で、辻元清美の質問に対して政府は「我が国の現在導入しようとしておりますミサイル防衛システムというのは、アメリカへ向かって飛んでいくミサイルを迎撃する、そういう能力はないわけでございますから、今それをどうこうということはありません」(久間防衛庁長官)と答弁しており、さらに第二次安倍内閣における平成二五年四月一六日の衆議院予算委員会において、渡辺周委員の質問に対して政府は「実際、今アメリカが持っているBMDシステム、SM3ブロックに関しては、日本と同じ内容ですので、今、日本が、例えばグアムを射程とするようなミサイルが飛んだ場合、その迎撃システムは日本でも対応できない」(小野寺防衛相)、「今の段階では、いわば、グアムに飛んでいくミサイルを我が国の国内の施設を使って迎撃するという能力もございませんし、それは全く現在では想定をしていない。」(安倍首相)と答弁している。政府の認識は現在も変わりないか。
七 集団的自衛権の行使と戦時国際法の適用について
 集団的自衛権の行使が全面的に容認されると、ある国(以下「X国」とする。)がわが国の同盟国の領土ないし軍隊を攻撃した場合、
 1 わが国は、集団的自衛権の行使として、X国(X国内の同国の基地ないし軍隊)を攻撃することが認められるのか。
 2 わが国がX国を攻撃すると、わが国とX国との間には、戦時国際法が適用されるのか。
 3 わが国がX国を攻撃すると、X国は、国際法上、わが国を攻撃することが認められるのか。

 右質問する。