つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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「天皇の靖国参拝」に関する質問主意書

2006.1.31

質問主意書

平成一八年一月三一日
提出者 辻元清美
衆議院議長 河野洋平殿
麻生外務大臣は二〇〇六年一月二八日、小泉首相の靖国神社参拝問題に関連して、「英霊からすると天皇陛下のために万歳と言ったのであって、総理大臣万歳と言った人はゼロだ。だったら天皇の参拝なんだと思うね、それが一番」と発言した。さらに天皇の参拝が「何で出来なくなったかといえば、公人、私人の、あの話からだ。どうすれば解決するかという話にすれば、答えはいくつか出てくる」と発言した。また「日本の首相が、国内でここに行ってはいけないと外国から言われるのは通らない。中国が言えば言うだけ行かざるを得ない。たばこを吸うなと言われると吸いたくなるのと同じ」と発言した。
これに対し、小泉首相は一月三一日、「麻生さん自身の考えだから、とやかく言うことはない」と述べ、天皇の靖国参拝についても「誰に対しても、行けとか行くべきとか言うことはしない」と述べた。
他方、この麻生発言に対して韓国は反発を強め、一月三〇日、韓国外交通商省は麻生外務大臣の発言を撤回するよう強く求めた。
小泉首相の靖国神社参拝と一連の発言をめぐって、中国・韓国だけでなくアジア各国、アメリカからも非難や遺憾を示す声があがっており、日本外交は孤立化の危機を迎えている。そんな状況下で、第一六四回国会開会日の二〇〇六年一月二〇日に行われた外交に関する演説で、日本外交の責任者として、「我が国は、韓国及び中国との未来へ向けた友好協力関係を一層強化していきます。これは我が国の揺るぎない基本方針であります」と述べた麻生外務大臣が、さらなる対立を深めるような発言をしたことに対し、政府の対応が急ぎ求められている。
従って、次の事項について質問する。

  1. 一九五二年四月二八日から現在まで、政府が把握している天皇の靖国神社参拝の年月日をすべて明らかにされたい。一九七五年一一月二一日以降に参拝していないのであれば、その理由についてはどのように承知しているか明らかにされたい。
    併せて、一九五二年四月二八日から現在まで、内閣総理大臣の地位にある者が靖国神社を参拝した年月日をすべて明らかにされたい(いわゆる公式参拝であると私人としての参拝であるとを問わない)。
  2. 二〇〇五年六月六日付けの岩國哲人衆議院議員の質問主意書に対する同月一四日付けの答弁書の中で、政府は、「昭和天皇の靖国神社への御参拝は、いずれも、私人としてのお立場でなされたものである。国事に関する行為は、憲法に掲げられたものに限られており、神社への御参拝は、これに当たらない」と回答しており、一九七五年一一月二一日などの参拝について天皇は私人としての立場で参拝したという見解を明らかにしている。小泉首相の「誰に対しても、行けとか行くべきとか言うことはしない」という発言は、この政府見解にのっとったものであると考えられる。
    しかし、今回の麻生発言が想定している天皇の靖国参拝は、私人としての参拝という考えとは明らかに異なるものである。
    政府は、今回の日本外交の責任者である麻生外務大臣の発言と右の政府答弁との関係をどのように考えているかを明らかにされたい。
  3. いわゆるA級戦争犯罪人は、極東国際軍事裁判所で有罪判決を受け、国際的に戦争責任があると認められた者であり、我が国も日本国との平和条約第一一条において当該裁判を受諾している。
    このようなA級戦争犯罪人が合祀されている靖国神社に、「恒久の平和を念願し」、「平和を維持し・・・ようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思」(憲法前文)っている「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」(憲法第一条)である天皇が参拝できるようにすべきであるという考えを、「平和で安全な国際社会の維持に寄与するとともに主体的かつ積極的な取組を通じて良好な国際環境の整備を図ること並びに調和ある対外関係を維持し発展させつつ、国際社会における日本国及び日本国民の利益の増進を図ることを任務とする」(外務省設置法第三条)外務省の長である外務大臣(同法第二条第二項)が示したのが、今回の麻生発言である。
    外務大臣の右のような発言は、憲法、日本国との平和条約、外務省設置法に違反するものと考えるが、これについて政府はどのような見解であるかを明らかにされたい。
  4. 天皇は、内閣の助言と承認により国事行為を行うとされている(憲法第七条)が、私人としての行為については憲法上の規定はない。また、天皇が憲法尊重擁護義務を負うことは憲法において明記されている(憲法第九九条)。
    理論上は、天皇の私人としての行為と天皇の憲法尊重擁護義務との関係が問題になりうるが、この場合には、国事行為と同じく、天皇の私人としての行為についても内閣が責任を負うのかを明らかにされたい。仮に内閣が負わないのであれば、天皇の私人としての行為に責任を負うのは誰かを明らかにされたい。

右質問する。