つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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「凍土壁」の解凍要件及び撤退要件、選択経過及び代替工法に関する質問主意書

2014.6.18

質問主意書

平成二十六年六月十八日提出
質問第二六七号

「凍土壁」の解凍要件及び撤退要件、選択経過及び代替工法に関する質問主意書
提出者  辻元清美

「凍土壁」の解凍要件及び撤退要件、選択経過及び代替工法に関する質問主意書

 福島第一原子力発電所における地下水の建屋内への流入抑制、建屋内の汚染水の増加抑制及び建屋内の汚染水の海洋への遺漏防止は、福島第一原子力発電所事故のすべての被災者への国の責務であるとともに、国及び国民の国際的責務である。これから構築しようとする遮水壁は、これらの目的を、より早期に、より実効的に実現するものであることが求められる。
 平成二十六年六月二日付で提出した「福島第一原子力発電所における『凍土壁』の解凍要件及び撤退要件に関する質問主意書(以下質問主意書①)については同年六月十日に答弁書(以下答弁書①)が、平成二十六年六月五日で提出した「福島第一原子力発電所における『凍土壁』の選択経過及び代替工法に関する質問主意書(以下質問主意書②)については同年六月十三日に答弁書(以下答弁書②)が閣議決定されたところであるが、答弁書①では、「御指摘の『仮設構造物』の定義が必ずしも明らかでな」いとして具体的答弁がなく、答弁書②でも、「『恒久構造物』と『仮設構造物』の定義が必ずしも明らかでな」いとして、質問二に対する回答がなかった。
 質問主意書①及び②における「恒久構造物」とは、長期間にわたりある目的に実効性のある本体的な構造物のことである。例えば、建屋を取り囲み閉合したRC地中連続壁は、凍土壁のようにいつかは解凍され撤去される構造物でなく、それ自体が地下水の建屋への流入を防止し、汚染水を地中連続壁の外に遺漏させない効果をもつ恒久的構造物である。他方「凍土方式の陸側遮水壁」(以下凍土壁)は「地盤凍結工法」によるが、同工法は「地盤凍結工法は地盤を人工的に凍結し、凍土のもつ完全な遮水性と優れた力学的強度を利用して、土木工事中の遮水壁・耐力壁とする仮設工法である」(地盤工学会「土質基礎工学ライブラリー二十三・土の凍結-その理論と実践」一九九四年六月発行)とあるように、土木工事中の一時的な期間しか用いられない「仮設工法」である。また「仮設構造物」とは「本体的構造物を構築する上で必要となる一時的な仮に設ける構造物のことである」(日本建築学会編集「仮設構造物計画の手引き」二〇〇九年二月発行)。凍土壁は、建屋止水等の完了後は解凍撤去される構造物で、まさにこの仮設構造物にあたるが、規模において前例がない極めて大規模なものであり、政府において少なくとも七年間これを存続させ、維持管理するとするものである点で、異例のものである。凍土壁についての右一般的定義と本件凍土壁計画の右特異性をもとに、以下のとおり、質問する。

一 凍土壁の仮設構造物性について
 1 答弁書①では、「『建屋の止水』等の凍土壁以外の対策により、地下水の『建屋への流入』が防止され、凍土壁が不要であると認められるまでの間(略)凍土壁を維持することとしている」(答弁①-一)とあるが、右の定義に基づき、改めて問う。凍土壁は地下水の建屋への流入を防止する「恒久構造物」ではなく、凍土方式は「地盤凍結工法」のことであるため「仮設工法」であり、凍土壁は「仮設工法」による「本体的構造物を構築する上で必要となる一時的な仮に設ける構造物」であると政府は認識しているか。異なる場合には、どのような認識か明らかにされたい。
 2 右の定義に基づき、改めて問う。凍土壁が選択される場合の最も重要な論点である「その遮水壁が恒久構造物か仮設構造物か」の点について、他の工法との比較評価はなされたのか。またそこで、専門的知見を得たのか。なされたとすれば、何時、どの機関・委員会等で、誰との間で、どのような比較評価がされたのか、検討結果とともに、回答されたい。

二 「建屋の止水」とそれ以外の「建屋への流入」を防止する対策について
 1 答弁①-一で明らかにされた「建屋の止水」以外の「凍土壁以外の対策」とは如何なる対策のことか、具体的に明らかにされたい。対策ごとに、その開始時期、完了時期を明らかにされたい。また答弁書①には「凍土壁とは別の工程」とあるが、具体の工程や委託先等の詳細は、政府発表文書等のどこに示されているのか。
 2 答弁書①において「建屋の止水については、平成二十六年から七年程度を目安として行うこととしている」とある。これは建屋の止水を完了する時期との趣旨か。そうであれば、その開始時期はいつからか。特に、後記の質問四の凍結管外周凍土の閉合の完了との関係について、閉合の確認前に止水の開始を予定しているのか、明らかにされたい。
 3 答弁書②では、凍土壁は「凍結管の交換が可能であり長期間運用可能である」とあるが、実験工事で凍結管の交換を行ったことがあるのか。ある場合には当該交換箇所を明らかにされたい。
 4 凍結管の交換が必要となるのはどのような場合か。凍結管の交換には凍結管が垂直に設置されていることが前提であるが、各ボーリング孔当たり凍結管の長さは三十メートル以上である。それらは一体のものか、溶接で継ぎ足したものか。溶接であれば、凍結管の溶接個所はいくつあるか。岩盤層を含む地層三十メートル以上に及ぶ凍結管を垂直に設置することの障害は何か。
 5 答弁書②における凍結管の「長期間(運用可能)」とは、具体的にどれくらいの期間か。実験工事における凍結開始時期、完了時期はいつか。実験工事における凍結完了から二カ月ほどで、「長期間運用可能」と判断した根拠は何か。完工検査は行うのか。いつ、どの段階で行うのか。

三 「地下水の流入抑制のための対策」の「全体計画の実施スケジュール」(平成二十五年五月三十日、汚染水処理対策委員会)によれば約一・五キロメートルに渡る凍土壁の凍結完了までに要する期間は工事着工後から半年程度であり、答弁書②では「凍土壁は、雨水の排水等発電所の管理上現在も必要な埋設管を破断することなく原子炉建屋等の近傍に構築することが可能」とある。
 1 約一・五キロメートルの凍土壁を設置し、凍結を完了するまでをこの期間で終えると予定するにあたり、凍土壁設置予定場所周辺の地質調査、地下水調査を行なったか。行なったのであれば、その調査主体、調査時期、調査内容を明らかにされたい。
 2 凍土壁設置予定地周辺と建屋内・外に存する埋設管の数、位置についての調査を行なったか。行なったのであれば、その調査主体、調査時期、調査結果を明らかにされたい。
 3 右の埋設管につき、地上のものと地中のものを区分して、その数を明らかにされたい。
 4 右の地中の埋設管のうち、「現在も必要な埋設管」の数、位置、用途について調査は行なったか。行なったのであれば、その調査主体、調査時期、調査内容を明らかにされたい。また、「雨水の排水」の他に何が「現在も必要」であるのかを明らかにされたい。
 5 凍土壁設置後も、地中の埋設管が密閉されずに凍土壁の外と通じている場合、地下水の流入ないし、汚染水の流出が生じると思われるが、その認識を問う。

四 答弁書②では「『非閉合箇所』が意味するところが必ずしも明らかではない」とあるが、凍結管外周の飽和土が凍結して凍土壁となるには、深さ約三十メートルにわたり、凍結管外周土の全体が一様に凍結し、隣接するこのような円筒状の凍土柱同士が重なり、隙間なく完全に閉合する必要がある。完全に閉合せず隙間が空くところが非閉合箇所である。
 1 答弁書②では、「地下水の流速は、凍結した箇所から順次減少し、凍結の遅い箇所で一時的に速くなる」として、約一五〇〇本の凍結管の凍結が同時に起こるのではないことを前提としているが、凍結が早く生じる箇所、遅く凍結するという場所はどのような条件によるものか。
 2 隣接する円筒状の凍土柱同士の間が完全に閉合せず、隙間があいていれば、地下水の建屋への流入を防止できないのではないか。また、地下水の流速が早くなった場合には、凍結はより困難になるのではないか。係る非閉合箇所が地表面ではなく地下深部に及ぶ場合、これを閉合して、「一時的」状態から脱するには、どのような手法が予定されているのか。
 3 答弁書①における「地下水流入が抑制されない場合等、凍土壁の効果が現れないと認められる場合」には、右のように凍土柱同士の間の閉合ができない場合が含まれているか。
 4 凍土柱同士の間の閉合はどのようにして確認するのか。答弁書②において「温度や水位の変化に係るデータ等から、凍土が閉合し凍土壁が構築されたこと」を確認したとあるが、隣接する凍結管の中央位置での深さ方向に沿う温度が計測されていたのか、その結果を明らかにされたい。
 5 地中で凍土壁の閉合が完全にできない等、「凍土壁の効果が現れないと認められる場合に備え」た「重層的な対策」として「雨水の浸透を防止するために発電所の敷地内を舗装する」ことはどのような意味があるか。他にどのような「重層的な対策」を想定しているのか。

五 建屋の止水と汚染水の「移流」及び「拡散」について答弁書②は「凍土方式の陸側遮水壁については、原子炉建屋等への建屋への地下水の流入を防止するために構築するものであり、放射性物質に係る(略)「移流」及び「拡散」を防止するために構築するものではない」としている。四に述べた凍結管の閉合が完全にできなければ、地下水の流入を防止することができず、凍土壁は遮水壁としての役割を果たせないことになるが、他方で答弁書①に「『建屋の止水』等の凍土壁以外の対策により、『建屋への流入』が防止され、凍土壁が不要であると認められるまでの間(略)凍土壁を維持する」とあるように、建屋内の汚染水が建屋、更には凍土壁の外側へ漏出することも防止されねばならない。さらに原子炉圧力容器等の「内部の正確な状況は把握できていない」ため、「原子炉建屋等から外部に水が漏れることがないよう、原子炉建屋等における水位が、周辺の地下水の水位よりも低くなるよう管理を行っている」とのことである。
 1 政府は、建屋等内の水位を建屋外の水位より低くなるよう管理を行なっていれば、建屋内の汚染水が建屋外に遺漏することはないとの認識か。そうでないならば、どのような認識か。
 2 地下水位の如何にかかわらず、建屋の止水が完了するまでの間は、建屋内の放射性物質の建屋外への「移流」及び「拡散」に伴う移動が生じるのではないか。政府の認識を問う。
 3 建屋内の汚染水中の汚染物質の建屋外への「拡散」が生じうる場合、凍土壁の構築が完了し、建屋の止水が完了するまでの間に、他に、どのような対策をとる予定か。
 4 建屋の内外を繋ぐ埋設管が残置され、これが密閉されていなければ、汚染水の建屋外部への流出に伴い、汚染物質の「移流」及び「拡散」による外部への漏えいが生じるのではないか。政府の認識を問う。
 5 こうした「移流」及び「拡散」問題について政府として検討したことはあるか。あるのであれば、何時、どの機関・委員会等で、どのように検討されたのか。検討結果とともに示されたい。

 右質問する。