つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

News

2015年3月3日 予算委員会

2015.3.3

議事録

私は、集団的自衛権の行使をめぐっての先般の政府の閣議決定、これに関して今与党協議が行われていますけれども、この与党協議が、どうも閣議決定の範囲を超えてどんどんエスカレートしているんじゃないかという不安が広がっていますし、そもそも国民の中には、この閣議決定の変更によって日本が戦争ができる国になってしまうんじゃないかという不安が広がっていることも事実です。
ですから、ここは、何ができるようになって何が変わったのか、一つ一つ確認したいと思うんです。

その前に、今の枝野さんと中谷さんのやりとりを聞いておりまして、中谷さんは生まれた前だったので知らないという言葉だけが切り取られてというお話でしたが、中谷さん、生年月日はいつですか。

○中谷国務大臣

 昭和三十二年、一九五七年十月十四日です。

○辻元委員

 私よりちょっと上ということになりますが、中谷さんは今、文民統制というのは文官が統制するといったことを政府としては言っていないというような御答弁をされた。実は、いろいろな総理、歴代総理がよく似たことをおっしゃっているんですね。
どういうことかというと、佐藤栄作総理が、これは昭和四十五年四月七日ですが、本会議で言っています。これが主に定義みたいになっているわけです。これは、中谷さんは生まれていたと思うんです。まだ子供だったかもしれませんが。「自衛隊は政治優先のシビリアンコントロールの原則が貫かれております。そしてその背景には、戦前の苦い経験があることを忘れてはなりません。現在、自衛隊のシビリアンコントロールは、国会の統制、内閣の統制、防衛庁内部における文官統制、及び国防会議の統制による四つの面から構成されておりまして、制度として確立されているものでございまして、この点では不安はない」。
ですから、中谷さんが防衛大臣ですけれども、ここではっきり、防衛庁内部における文官統制もシビリアンコントロールの大事な一部であると先人たちはおっしゃってきた。これは、竹下総理はもっとはっきりおっしゃっていますよ、その後。防衛庁設置法をつくった中曽根さんも、私がつくったんだということで、大東亜戦争の悲劇から、これはいわゆる内局問題についてもちゃんとしたんだということを答弁されているんですよ。
中谷さん、防衛大臣として、今実際に安保法制の議論があって、先ほど言ったみたいに、日本は、過去の日本みたいに戻っちゃったらどうしようという不安もあることはあるんです。ということは、やはり、過去の戦争、戦後七十年だから、過去の反省とか、歴代の総理を含めてどういう議論をしてきたのか。
中谷防衛大臣は防衛大学校も卒業されている、そして自衛隊も経験されている。こういうことは学んでこられなかったんですか。はっきり言っているじゃないですか。どうですか。

中谷国務大臣

 私、防衛大学校で、シビリアンコントロールのことはしっかり学んだつもりでございます。特に、当時の学校長からは、自衛官である以前によき市民たれというような言葉も聞かせていただきました。
やはり、シビリアンコントロールというのは、国民の統制を受ける、それは国民の代表である政治家がしっかりコントロールするということでございますので、そういう意味で、それぞれのシビリアンコントロールの仕組みがつくられております。国会、内閣、総理、防衛大臣、そして、防衛省の中においても、政治任用である防衛副大臣、防衛大臣政務官、これ等が防衛大臣を補佐するということで、厳格な文民統制の制度が採用されていると思っております。

辻元委員

 いや、先ほど、文民統制というのは文官が統制するということを政府として言ったことはないとおっしゃっているので、実際に佐藤総理が、これも、要するに、文民統制の一つの重要なファクターであると答弁されているわけですから、先ほどの発言は間違いだった、過去にあったということじゃないですか。いかがですか。

中谷国務大臣

 先ほどは、そういう考え方をとったことはないというふうに申し述べました。

辻元委員

 そうすると、もう一度聞きますよ。佐藤首相が、防衛庁内部における文官統制。それで、竹下さんはこう言っているんですよ、防衛庁そのものの中でいわゆるシビルの方、内局の方がコントロールしていかれる、このシビリアンコントロールというのは、何重にもそういうコントロールという枠がかかっておりましてということで、この文官統制についても大事なシビリアンコントロールの一つであると答弁されているわけですが、中谷さんは、これはそうではないとさっきおっしゃったので、発言を訂正された方がいいんじゃないですか。中谷さんに聞いています。

中谷国務大臣

 シビリアンコントロールというのは、まさに政治家がコントロールするということであります。
確かに、防衛省には事務官、そして自衛官がいるわけでありますが、それぞれの仕事の分野を分類したというのが防衛省設置法の十二条でありまして、そこには文官たる事務官のやることが書かれていますが、片や、同時にできた自衛隊法においても、幕僚監部ということで、軍事的見地から大臣を補佐するという規定がありまして、この両者が、まさに車の両輪のごとく調整、吻合して大臣を支えていくという意味の補佐でありまして、あくまでもシビリアンコントロールというのは、政治家たる防衛大臣、またそれを補佐する防衛副大臣、そして政務官、これが行っていくものだと認識しております。

辻元委員

 いや、私は、政治家がコントロールすることはとても大事だと思っていて、ただ、今の現状は、政治家がちょっと勇ましいことをおっしゃる方もいらっしゃるので、懸念しています。そういうときに、むしろ自衛隊の隊員の方の方が現場をよく知っていて、そういうことはできないよとブレーキをかける役をされてきたことも存じ上げております。
私が聞いておりますのは、今おっしゃった、まさしくシビリアンコントロールは、佐藤栄作首相を初め、文官統制も一つの大きな重要な役割だ、シビリアンコントロールの一つの要素をなしていると歴代の首相が言ってきているから、このことは認めますねと言っているわけです。

中谷国務大臣

 確かにそういう言葉はありますが、ですが、この文官統制というのは、官僚が自衛隊をコントロールするという意味ではありません。その内容についても、こういう考え方であるということでお話をされたということではないと思います。

辻元委員

 私は、中谷大臣と安保委員会などでかなり議論をしてきて、このことにずっとこだわってこられていることはよく存じ上げているんですよ。
しかし、やはり過去の歴代の総理大臣も答弁されて、一つは過去の反省、それから、いわゆる文民統制、シビリアンコントロールの中の一つがやはり文官統制として構成されていると。これはつくられたんです。しかし、これの運用に当たっていろいろ問題があるという点を指摘されてきたことは存じ上げているんです。
なぜこれを言うかというと、やはり私たちは歴史に学ぶ、これが今しっかりと、戦後七十年で談話のことも言われていますが、二度と繰り返さないということをしっかり肝に銘じて、防衛大臣として、今、安保法制が議論されているわけですから、していただかないと、心もとないわけです。ですから申し上げているわけです。
それで、これはまたちょっと引き続き後でやりますが、今、安保法制懇の報告書から始まりまして、与党協議があります。その中で、どうも前の閣議決定のときに出てきていないような、船舶検査の話とか後方支援での武器弾薬の輸送とかという話まで飛び出てきて懸念が広がっていますので、これを一、二確認しておきたいと思います。
船舶検査については、今まで、要するに、平時の場合、いきなり自衛隊が出ていって、それから武器使用もできるようにして強制的にするのはその後トラブルになるからということで、これは国際的にもそうですけれども、その船の旗国の同意や船長の同意をしてやりましょうということだったですよね。これを何か強制的にできるように変えたいというような御提案をされているようなんですけれども、何か強制的にしなければならないような具体的な事案が発生したから言っているんですか、どうなんですか。

中谷国務大臣

 今から十五年前に周辺事態法ができたわけですが、思い出すと、辻元さんは、当時自社さ政権で、私も自民……(辻元委員「周辺事態のときはもう自社さじゃなかったです」と呼ぶ)その議論のときに、自社さ……

大島委員長

 勝手にそこで会話するのはやめなさい。

中谷国務大臣

 ともに議論をいたしました。それはもう十五年経ていますので、この間の安全保障環境、我が国をめぐる状況は大きく変わっております。
例えば、大量破壊兵器、弾道ミサイルが拡散して、国際社会においては、イランの核関連物資の禁輸、またテロ関連の物資の移動防止、こういうことが行われるなど、船舶検査の重要性は高まってきているということです。
そして、この変化と船舶検査の重要性の高まりを踏まえて、我が国の平和、安全に加えて、国際社会の平和及び安定にも寄与する船舶検査のあり方について現在検討をいたしておりますが、趣旨は、あらゆる事態に切れ目のない対応ができる安全保障法制でありまして、そういう観点で検討し、また、現在、与党で議論をしていただいているところでございます。
〔委員長退席、金田委員長代理着席〕

辻元委員

 今、安全保障環境が変わったとおっしゃって、いろいろ事例をおっしゃられたんですが、当時、約二十年ほど前に議論したときも同じような議論があったんです。船舶検査を強制的にするかどうかとさんざん議論したわけです。同じように、あのときも必要じゃないかという声もあったわけです、今おっしゃったように。
しかし、例えば、日本の船が不審船ということでもしもどこかで捕まって、いきなり軍隊が、相手が出てきて、そして武器も使用して強制的にされたら、これは何なんだと。そこで小競り合いになって、そして武力行使をしてしまって、それが国際問題にも発展する、これは日本だけじゃなくて世界じゅうで。
その大きな原因になるから、第一義的にはもちろん海上保安庁がやって、自衛隊が出ていくときには抑制的であらねばならぬから、やはり船舶検査は、今みたいな議論をさんざんしたんですよ、あのときも。でも、やはり船舶検査は同意が必要だね、平時はと。有事じゃないですよ、平時はということだったわけですよ。
何だか、見ていると、当時出てきた議論をまた同じように、国際環境が変わった、あのときも言っていましたよ。あのときは朝鮮半島危機だったわけですよ。同じことですよ。何か、閣議決定を法制化するどさくさに紛れてと言ったら悪いですけれども、在庫セールじゃないけれども、今までできなかったことを全部やってしまえというように思えるんですよ。
あのときも同じ議論をして、船舶検査は、やはり平時は、大きな国際紛争やちょっとした小競り合いから大きな武力行使につながることがあるから抑制的にしようねという議論があった。これは変わっていないと思いますよ。そうなる可能性は同じですよ、中谷さん。ここはよく考えていただきたい。
昔のこともおっしゃいました、そのころから議論してきたと。ですから、この本質は変わらないわけですよ。抑制的にすべきだと思いますが、いかがですか。

中谷国務大臣

当時から辻元委員とこういう議論はしてきました。
しかし、安全保障に思考停止はできないんですね。状況が変わっているんです、日本を取り巻く国際情勢も、世界の情勢も。こういった点で、いかにして日本の国の安全、そして世界の安定を考える、その中で我が国が何ができるのか。
現に、こういった視点で法整備をどうするか、あの当時も議論されておりましたけれども、こういった状況も変化しておりますので、そういった点で、国の安全や世界の平和の安定のために日本が何ができるかという観点で、あらゆる事態に切れ目のない対応ができることは何なのかということで検討されているということです。

辻元委員

 立法事実といいますか、それでこの二十年間物すごく困った、強制的に船舶検査ができなくて、我が国に何か危害が及ぼされそうになったとかがあれば別なんですよ。
今、中谷さんがおっしゃった答弁は、二十年前にも同じことをおっしゃっていた。状況が変わったと、朝鮮半島の。あのときはそうでしたよ。同じなんですよ。でも、本質は変わらないんですよ。
もう一つお聞きしたいと思いますが、先ほど、後方支援における武器弾薬、それから発進準備中の航空機への給油の問題も問題になりましたね。それは武力行使との一体に当たるおそれがある。
なので、これはちょっと内閣法制局長官にお聞きしたいと思います。
大森長官が昔このことを問われて、もうこれもずっと議論しているんですけれども、戦闘行為との密接な関係があるのではないかということで慎重になるべきだ、これは武器弾薬も航空機への給油もそうですけれども、そのような発言をされています。大いに憲法上の適否については疑念があるから慎重にやりなさいという趣旨の発言をされているんですね。これは変わっていないですね。

横畠政府特別補佐人

 この一体化の問題につきましては、提供する物資が武器弾薬であるか、あるいは食料、水等であるか、その物によって結論が異なる、そういう考え方は基本的にとってはおりません。
例えば、前線、戦場におきまして食料、水を提供する、それもまさに戦う力を補強する、現場で補強するということになりますので、それは一体化し得るというふうに考えております。武器弾薬でありましても、離れた場所で提供する場合には、いずれそれが戦場で使われるかもしれませんけれども、それは一体化するものではないというふうに整理しております。
それから、発進準備中の戦闘機に対する給油等でございますけれども、これにつきましては、明確にそれ自体が一体化するものであるから避けるという整理ではございませんで、そういうニーズはないだろうということでこれまで取り上げていないというふうに理解しております。

辻元委員

 今、発進準備中の戦闘機、ニーズがないという発言をされて、中谷さんも、当時のガイドラインのときにそういう発言をされていたと思うんですが、大臣も。結局、今の法制局長官とのやりとりみたいなのをあのときもまた延々やったんです。その結果、ガイドラインの、別表に、わざわざ備考として、物資の供給には、「武器(弾薬を含む。)の提供を含まないものとする。」そして「物品及び役務の提供には、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を含まないものとする。」と、もうややこしいから書いておこうねということになったと思いますよ。これは覚えていらっしゃると思いますよ。でしょう。
何かニーズがあったんですか、今。例えばアメリカから、武器弾薬を提供しろとか、発進準備中の航空機に給油してくれとか、あったんですか。

中谷国務大臣

 当時はニーズがなかったという結論でございました。
今検討しておりますのは、閣議決定にも書いていますけれども、我が国の安全の確保、国際社会の平和と安定のために活動する他国軍隊に対して、必要な支援活動を実施できるようにするための法整備を進めるということでありまして、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする観点から検討を進めております。
法律というのは、それがなければ自衛隊は支援も活動もできません。そして、そういった事態が発生してから新たに法律をつくるということでは間に合わない場合もございますので、ありとあらゆる事態を想定して法律を定めるという観点で今検討をしているところでございます。

辻元委員

 今のような御答弁もかつてもあったんです、主張する方からは。しかし、ニーズがないし、それから、大森長官のこの答弁も紹介されて、武力行使と一体化になる場合もあるから、考えられるから、ですからこれはやめておこうということをはっきりさせたわけです。
ですから、さっき申し上げたように、かつてできなかったことを、それもさんざん議論してそうしようということを、かつても状況が変わったとおっしゃった。それを、この際全部、閣議決定、法制化に合わせてやってしまえと。これは閣議決定に書いてあるんですか。切れ目のないとおっしゃったけれども、具体的に議論は出ていないですよ。そういうことまでやろうとするのはお控えになった方がいいんじゃないかと申し上げているわけです。
もう一点、後方支援でお聞きしたいですが、当時も、この後方支援については、ガイドラインのときは後方地域支援という言葉までつくって、リアエリアサポートという、ロジスティックじゃない言葉までつくってやりました。これも、その期間中を通じて武力行使が行われない地域に限って行ける、支援活動に行けるということだったわけですね。これを、現に戦闘が行われていない地域に区切ろうとしている。
では、具体的に伺いたいんですが、例えば新宿で戦闘があったとする、中谷さん、新宿で。今までだと、その期間中、戦闘が行われない。新宿東口であったとしましょう。その期間中はだめだということだから、例えば東京都はだめですよと、あらかじめ決めていかないと、いつそこが戦闘地になるかわからないから、行く前にあらかじめ決めておきましょうというのが、武力行使と一体化、要するに憲法九条に抵触しちゃいけないのでという考え方でしたよね。
サマワなんというのは、東京新宿から考えたら名古屋ぐらいなんですよ。それぐらい安全を見て、しかし貢献できることをやりましょうとさんざんおっしゃってきた。それよりも近づいていくと、いつ戦闘現場になるかわかりませんからという答弁だったんですよ。
これが、現に戦闘をしていない地域ということであれば、例えば新宿東口で戦闘が行われていて、渋谷はいいんですか。どうですか。
〔金田委員長代理退席、委員長着席〕

中谷国務大臣

 まず、その前に、先ほど法制局長官が答弁した、憲法の範囲内で後方支援については検討しておりますが、非常に安全保障の環境の変化とか近年の防衛協力、これの進展を踏まえて、その対象また内容を検討しているということで、あくまでも憲法の範囲内で、今の時点でどうあるべきかという観点で検討をいたしております。
それから、武力の一体化というか、現に戦闘が行われている現場の考え方でありますが、基本には、憲法で言う武力行使になってはいけないということで、武力行使との一体化を避けるためにそれぞれの法律ができてきたわけでございますが、今回、現に戦闘行為を行っている現場というのは、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し物を破壊する行為が現に行われている現場ということでありますので、それが適用されるかどうか、今の御質問でありますが、それぞれの状況に合わせて、これに的確に合わせていくということです。

辻元委員

 今の戦闘は、前半におっしゃったような状況ではなくて、市民と例えばテロリストが混在しているわけですよ。そして、どこでいつ誰が銃を向けてくるかわからない状況の非対称戦争になっているわけです。軍隊と軍隊がぶつかるということよりも、むしろ、いつでもどこでも戦場になっちゃうわけですよ。
ですから、現に戦闘が行われていない地域というのは、ある一定の範囲に入っちゃうと、もうこれは、戦闘が行われている地域と同じ、見分けることができないと思いますよ。この後方支援の問題は、後でまたちょっと時間があれば触れたいと思います。
次に、今回の新三要件について、さまざまな答弁がなされていますので、きちんと、何ができて何ができないのか整理をしたいと思っております。
今までの三要件は、一番最初に、我が国に対する急迫不正の侵害があることでしたね。それにつけ加えてこうあるわけですよ。すなわち武力攻撃が発生したこと。日本が武力攻撃で攻められたら反撃していいですよということですよね。
それが、主な変更点はここなわけですが、今度の新三要件では、我が国だけではなくて、さっきの枝野さんの議論と同じです。我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることと。二項も少し変わっていますが、主にはここが変更点。
法制局長官にお伺いします。
今までの答弁の中で、ちょっと整理してみますと、まず安倍総理の答弁で、二月二日に参議院で、地球の裏側まで行くんですかと問われたわけですね。これに対して、集団的自衛権を行使するのは、三要件が当てはまるかどうかで決まるということで、地理的にどこだから当てはまらない、近くなら当てはまるということではないと答弁されています。
もう一つ、二月十六日に、安倍総理は、憲法上、武力行使が許されるのは閣議決定にある新三要件を満たす場合。
これらを総合しますと、新三要件を満たせば、世界のどこでも武力行使ができるということになりますか。

横畠政府特別補佐人

 世界のどこでもという言葉は、なかなか、誤解を招きやすい言葉であろうかと思いますけれども、そのための新三要件ではもちろんございませんで、あくまでも新三要件を満たす、その場合に限って我が国は武力の行使ができるという考え方でございます。

辻元委員

 安倍総理が、地理的にどこだから当てはまらない、近くなら当てはまるということではないと言っているので、私は整理した方がいいと思うので、あくまで新三要件が該当した場合、武力行使ができる、それは、地理的に制限がなくて世界どこでもできるということですね。そこを答えてほしいんです。

横畠政府特別補佐人

 新三要件そのものには地理的制限はございません。ただし、どのような事態がこれに当たるかということの判断におきましては、その事態がどこで発生しているかということは、かなり大きな判断要素になり得るものと考えております。

辻元委員

 これは、もう一回言います。安倍総理は、地理的にどこだから当てはまらないということはないとおっしゃっているわけですね。
では、もう一回聞きますよ。新三要件というのは、それを判断するときに、では地理的な概念は考慮材料になる、今の御答弁はそう理解していいんですか。

横畠政府特別補佐人

 どのような事態がこの新三要件、特にその第一要件にございます、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることに該当するかは、個別の具体的な状況に即して、主に攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断することとなるというふうにこれまでも御説明しているところでございます。

辻元委員

 今、場所という御答弁がありましたが、そうすると、地理的なことは新三要件判断の上での条件になるという理解でいいんですか。条件の一つですか。

横畠政府特別補佐人

 繰り返しになりますが、新三要件そのものに地理的限定があるわけではございません。
ただし、どのような事態がこれに当たるかという判断におきましては、事態の発生場所というものは当然その判断の要素になるということを申し上げております。

辻元委員

 そうすると、もう一回確認しますが、安倍総理がおっしゃっている、地理的にどこだから当てはまらないということは、新三要件の条件ではないということですね。

横畠政府特別補佐人

 繰り返しになりますが、新三要件そのものに地理的制限はないということで、総理の答弁もその趣旨であろうと理解しております。

辻元委員

 ということは、世界のどこでも、新三要件が合致すれば武力行使ができる、新三要件そのものが合致すれば、ということになるじゃないですか。
もう一問、法制局長官にお伺いします。
多国籍軍などによる集団安全保障措置との関係を整理したいんですが、まず、新三要件を満たせば、いわゆる集団安全保障措置としての、よく言われる多国籍軍などに参加している国々と一緒に武力行使ができるということになりますか。

横畠政府特別補佐人

 憲法上、武力の行使が許容される要件として新三要件をお示ししているところでございますが、国際法上の違法性阻却事由がいずれであるかということとは直接は関係しておりません。もとより、実際に行使するためには、国際法上の違法性阻却事由が必要であるということは当然でございます。
その意味で、この新三要件を満たす場合ということでありますれば、その範囲内におきまして我が国としての武力の行使は可能であるというふうに考えております。

辻元委員

 ということは、今、突き詰めて言えば、新三要件を満たすということであれば、その条件のもとで集団安全保障措置としての多国籍軍にも参加できるということですね。もう一回確認します。

横畠政府特別補佐人

 繰り返しになりますけれども、新三要件を満たす場合には、我が国として、必要最小限でございますけれども武力の行使ができます。逆に言えば、新三要件を満たさない限り我が国として武力の行使はできないということでございます。

辻元委員

 私は、何についてというところで、集団安全保障措置、いわゆる多国籍軍などでも、満たせばできますねと聞いていますよ。そこをはっきりしてください。これは答弁を整理しているんですよ。
総理はこう答弁されていますよ、既に。この集団安全保障措置について、国際法上の武力行使の根拠が国連安保理決議に基づく集団安全保障措置になったとしても、新三要件を満たしている限り自衛隊は活動できるとおっしゃっているわけですよ。だから、私は整理しておきましょうということで、集団安全保障措置としての多国籍軍等にも、新三要件を満たせば日本は武力行使できるようになったんですねと聞いています。

横畠政府特別補佐人

 先ほどお答えしたとおりでございまして、憲法上、武力の行使が許容される要件が新三要件でございます。国際法上の違法性阻却事由とは別のことでございます。もとより、国際法上の違法性阻却事由を備えているということが必要でございます。
国際法上の違法性阻却事由としては、個別的自衛権として認められる場合、集団的自衛権として認められる場合にあわせて、国連安保理決議によって武力行使が認められる場合がございます。

辻元委員

 今、長々とおっしゃいましたけれども、多国籍軍等へも新三要件を満たせば武力行使ができるという答弁ですよ。
今まではどうだったかといいますと、今までの条件だと、我が国が攻められたときだけですから、今までの内閣法制局の答弁は、国連決議に従って我が国が武力の行使を行い得る場合でありましても憲法九条において禁じられていますとか、それから、集団安全保障措置に関しましても我が国としてこれを行うことが許されていないという答弁をしてきたわけです。日本が攻められたときだから、多国籍軍とかは一切だめよというのだったわけです。だから、湾岸戦争にもイラク戦争にも、どこも行っていないわけですよ。
ところが、これを、今回の新三要件に憲法解釈を変えたことで、新三要件に合致すれば、このような今までだめだったと言われている集団安全保障措置にも参加できることに変わったということですね。ここが変わった点ですね。これは法理上ですよ。

横畠政府特別補佐人

 国連の安保理決議がある場合、これは国際法上、武力の行使が可能でございます。しかし、我が国としては、憲法九条のもとで、国連決議があるからといって、その決議のとおりに全て武力の行使ができるという解釈をしているわけではございませんで、あくまでも憲法上の制約であります新三要件を満たす、それと重なり合う範囲において我が国としての武力行使が可能であるということを繰り返し申し上げているところでございます。

辻元委員

 それでは、あわせて聞きますが、今までの三要件だったらできないことが、新三要件になったら、合致した場合はできるということになったということですね。この点だけ答えてください。

横畠政府特別補佐人

 できる場合が……(辻元委員「あると。はっきりと言った方がいいよ。法理上」と呼ぶ)できる場合があるということでございます。

大島委員長

 辻元清美君、答弁者がしゃべっているときに、こんなことをやらないように。(辻元委員「委員長、わかりました。委員長も時々やるじゃないですか」と呼ぶ)いやいや、委員長の権限でやっているのでありますから。

辻元委員 失礼いたしました。

それでは続けます。
要するに、今までは、湾岸戦争にしてもイラク戦争にしてもアフガン戦争にしても、行けなかったんですよ。でも、新三要件というものに合致すれば行けると変わったんですよ。ここは大きな変更点なんですよね。これは明らかになりました。
総理にお伺いします。
総理は、今後とも湾岸戦争やイラク戦争のような戦闘には未来永劫参加することは決してないとおっしゃっています。こうおっしゃっている意味は二つあると思うんですよ。どっちか私はお聞きしたいんです。
今後とも湾岸戦争やイラク戦争のような戦闘が新三要件に当たることは絶対に未来永劫ないという意味でおっしゃっているのか、それとも、湾岸戦争やイラク戦争のような戦闘も、法制局長官が今法理上おっしゃったように、ケースによっては新三要件を満たすような場合があるかもしれないが、しかし、安倍政権の意思としては、政策的には参加しない、法理上はできるが参加しないということなのか、新三要件を絶対満たさないからだめだとおっしゃっているのか、どっちですか。

安倍内閣総理大臣

 はっきりとお答えをさせていただきたいと思います。
従来より、政府は、いわゆる海外派兵、すなわち、武力行使の目的を持って、武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣することは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されない、こう解釈をしてきたところでございまして、この自衛の中には、当然個別的、集団的両自衛権が入るわけでございまして、新三要件のもとでも、この見解には全く変わりはない。いわば、閣議決定を行う上において、これは政府として統一的な考え方を既に示しているとおりでございます。
先ほど辻元委員が引かれたものは、例えば、個別的自衛権を行使している中において、安保理の決議があって集団安全保障に変わったとしても、当然、これは、個別的自衛権で武力行使を行うということはそのまま継続していくことができるという文脈で答弁したとおりでございます。

辻元委員

 いや、違うんですよ、それは、総理。
それでは、先ほどからのホルムズ海峡の問題を聞きます。
湾岸戦争やイラク戦争は、中東で戦争がありました。しかし、あのときは、機雷はまかれておりません。そうしたら、湾岸戦争やイラク戦争のような場合でも、機雷をまかれたら、新三要件に当たる可能性があるということですか。

安倍内閣総理大臣

 いわば機雷がまかれたらということで、機雷がまかれたというのは、ホルムズ海峡に、例えば機雷がまかれたということでございます。そこでまだ停戦合意はなされていないけれども、事実上の戦闘行為が終わっている状況において、その敷設された機雷を除去しなければ、まさにこの新三要件に当てはまるという事態が生じ得るというときについて、先ほど来これは議論しているとおりでありまして、その機雷の掃海を行うことはあり得る、このように申し上げているところでございます。

辻元委員

 もう一回さかのぼってその前の質問に行きますが、はっきりここはしておきたいと思うんです。
湾岸戦争やイラク戦争に未来永劫行きませんというのは、法理的に、例えばさっきの機雷の除去みたいな場合は、先に戦争が起こっていて、そこに、新三要件が当たるからといって日本が行くわけですよ。そこで戦闘になるかもしれない、攻撃されるかもしれない。先ほど総理がおっしゃったように、日本が近海で自衛権を行使していて、その後、集団安全保障措置に変わったじゃないんですよ。違う場合もある。その違う場合も含めて、法制局長官は、新三要件に当たれば多国籍軍等の集団安全保障措置にも参加できるということを御答弁なさったわけですよ。
ですから、総理にもう一度お聞きしますね。
イラク戦争や湾岸戦争に行かないとおっしゃっているのは、これは法理上、絶対に新三要件に当たらないから行けないとおっしゃっているのか、法理上は行けることもあるが、政策上行けない、そんなことは日本はしませんよとおっしゃっているのか、どっちですか。これははっきりさせておいた方がいいですよ。

安倍内閣総理大臣

 既にもうはっきりさせていると思いますが、もう一度答弁をさせていただきます。
これは、従来より、政府は、いわゆる海外派兵、すなわち、武力行使の目的を持って、いわばアフガン戦争、イラク戦争、湾岸戦争に参加するというのは、これはまさにこれに該当するわけですね、武力行使の目的を持って武装した部隊を送ることに、これはまさに該当するわけでありますから、明確に申し上げられる、このように思うわけでございますが、武力行使の目的を持って、武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣することは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されない、このように理解をしているわけでございまして、これは新しい新三要件のもとでも変わらないということでございますから、いわば、憲法上それはできないというのが我々の考え方でございます。

辻元委員

 法制局長官にお伺いします。
先ほどから、集団安全保障措置には、法理的には新三要件が当たれば行けると。しかし、行くか行かないかは政策判断だと思うんですよ。法理的には行けるということでよろしいですね、新三要件が当たればですよ。

横畠政府特別補佐人

 新三要件に当たればというもちろん前提でのお尋ねだと思いますけれども、なかなかこの新三要件は厳しいものでございまして、先ほどの海外派兵の問題でもありますとおり、一般に自衛のための必要最小限度を超えるようなもの、そのようなものには憲法上もちろん参加することはできません。

辻元委員

 先ほどホルムズ海峡の例を申し上げましたのは、総理、それを言うからややこしくなるんですよ。
結局、ホルムズ海峡に行く。行って、単に、ホルムズ海峡の上を防弾ガラスかなんかで絶対にその船が攻撃されないように囲って、その中で海の掃除をするんじゃないんですよ。相手が攻撃する可能性が十分あるわけですよ。それが武力行使に発展していく。これは、要するに、湾岸戦争やイラク戦争だって同じなんですよ。ですから申し上げているわけです。
この話は私はまた詰めます。
きょうの法制局長官の御答弁では、新三要件を満たせば世界じゅうどこでも、満たせば武力行使ができるということは確認した。そして、多国籍軍のような集団安全保障措置でも、満たせば法理上は武力行使ができるということも確認できたと思います。
なぜこれを私が言うかというと、最後にこのことだけ示して終わりたいんです。
実は、皆さんに資料もお配りしていますが、戦前の海軍大臣官房という、「軍艦外務令解説」、これは、当時の山本五十六次官が、これは非常に有意義であるということで、政府の統一見解のようなものになっている中で、これを見ていただくと、満州事変、上海事変、注のところですね、「自衛行為ヲ発動シタリ。」と言っているわけですよ。
私は、総理がおっしゃるところの、ホルムズ海峡は日本の生命線というのは、満州は日本の生命線というのにどうも重なって聞こえて仕方がないんですね。いつも自国の権益の保護と邦人保護なんですよ。
では、戦前の自衛権の行使の要件はどうだったかというと、一番「国家又ハ其ノ国民ニ対シ、急迫セル危害アルコト。」、二番「危害ヲ除去スルニ、他ニ代ルベキ手段ナキコト。」、三番「危害ヲ排除スルニ、必要ナル程度ヲ超エザルコト。」、今と同じなんですよ。
最初に私は中谷さんに歴史の話をいたしました。邦人の救出とか権益保護ということで、満州事変から日本は戦争の泥沼に落ち込んでいくわけですよ。同じような要件をかけていても、戦前、行っちゃったわけですね。
しかし、これは、それでも、日本に危害を加えられた、急迫不正の危害なんですよ。今の新三要件のように、日本と密接に関係がある外国に危害が及んだときも行けるとはなっていないわけですよ。それでも行っちゃったから。過去の歴史でもこういうことがあるので。それで、自衛官は死ぬでしょう。亡くなるんですよ、戦争に行ったら。
石破さんにお伺いしたいと思う。
石破さんとも安全保障議論をかなりやってまいりました。実際に、ホルムズも、単に行くだけで、掃除じゃないですよ。反撃もある。自衛官が死亡することもあるし、自衛官が反撃して相手国の人を殺すこともあるわけですよ。そういうこともある、そういうリスクであったり、そういうことなんですよということを率直に言った上で安全保障議論をしないとだめだと私は思います。
石破さんはすごく率直にそうおっしゃっていたので、どうですか。そういう可能性は高まるじゃないですか、やはり行くと。いかがですか。

石破国務大臣

 この問題は長く辻元議員と議論してまいりました、今は中谷大臣が責任を持ってお答えになっておられるわけですが。
サマワに出しましたときも、あるいはインド洋に出しましたときも、これは、いかにして自衛官の生命身体を守るかということについては、いろいろな議論をしながら極限までやったと思っております。さればこそ、インド洋においてもサマワにおいても、一発の銃弾を撃つこともなく、一人も傷つけることなく、一人も傷つくことなく。
やはり私どもは、そういうような貴重な経験というものをよく生かしながらやっていかねばならぬ。リスクが高まるとせば、どうやってそれを回避するかということは、政府において万全の体制をしいてまいるというのは当然のことだと考えます。

辻元委員

 やはりリスクは高まるんですよ。
中谷大臣とも一昨年アメリカに参りました。アメリカでは、イラク戦争やアフガニスタンの帰還兵の問題が社会問題になって、どこへ行っても聞きました。それは、負傷して帰ってくるだけじゃなくて、人を殺して帰ってきたことが心のトラウマになって、今アメリカは深刻な状況になっているということを一緒に見聞きしたじゃないですか。
私は、それぐらい大きな問題、そして、多国籍軍にまで、満たせば行ける、新三要件があれば世界のどこでも行ける、それを閣議決定で決めていいんですかと申し上げたいわけです。だから我が国は、絶対に攻められた以外は戦争しないということを決めてきたんじゃないですか。それが、がんと歯どめが今回大きく外れるということだと思いますよ。
最後になりますけれども、安倍総理がこの道しかないとよくおっしゃいます。私は、安倍総理がおっしゃるこの道しかないは、いつか来た道につながっているんじゃないかと懸念しているんです。そうならないためにも、憲法解釈変更の閣議決定は撤回すべきであるということを最後に申し上げて、質問を終わります。