つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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2006年3月23日 日本国憲法調査特別委員会

2006.3.23

議事録

高市委員

自民党の高市早苗でございます。

まず、辻元委員の基調発言につきまして、三点ほど先に続けてお伺いしたいと思います。

まず、辻元委員は、そもそも今の憲法を変える必要はない、よって憲法改正国民投票法、この制定の必要性を現段階で感じておられないということで御発言を始めていただきましたけれども、私も社民党は護憲政党ということは承知いたしております。現行憲法と現実の乖離を埋めるために、例えば、では現実と現行の憲法が乖離しちゃっているんだったら憲法の方を変えて現実に近づけるべきだという意見もある一方で、社民党の方では憲法の実効性をきちっと確保する、むしろ憲法を守ることによって現実との乖離を埋める、こういうことを大切に考えてこられた、こう承知いたしております。

しかし、そもそも現行憲法は、九十六条に改正手続というのが規定されておりますことから、改正の可能性を前提とした法規であると考えられます。そうしますと、国民投票法が制定されないと、守らなきゃいけないとおっしゃっている現行憲法の実効性も担保できないと私は考えるんですけれども、現行憲法を尊重される立場の強い政党だからこそ憲法の規定に沿った法整備をむしろ急がれるべきではないかと感じるんですが、いかがお考えか、これが一点目の質問でございます。

また、別の視点で申し上げますと、社民党は、外国人参政権ですとか子供の人権などに対して非常に熱心に活動されてきたと思いますし、そしてまた防衛問題でも、大変、現在自衛隊というのは違憲状態であるというようなことで発言をされてきたというふうに思うんですけれども、むしろ早急に憲法を改正して、ふだんの御主張のさまざまな人権について確実に守れる根拠規定をつくろうとは思われないのかどうか、こういったことが私の二点目の質問でございます。

〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕

そしてまた、三つ目でございますけれども、辻元委員は、本委員会の議論におきまして、国民投票法を制定する場合に留意すべき点ということで非常に多くの前向きな提案をしてくださった、こう感じております。例えば、投票方法ですとか、投票率要件ですとか、投票権者をどう定めるか、こういったことについても辻元委員はこの委員会で何度も発言をされております。

そして、きょうの御発言の中で、憲法というのは国家権力の制限をするものだ、だから非常に重いものであるといったことから慎重に考えるべきという御趣旨だったと思うんですけれども、これは、制限規範、つまり国家権力を制限する規範として憲法をとらえたお考え方なんじゃないかと思います。一方で、私などは、その制限規範という側面も憲法にはあるけれども、むしろ、今の時代、国民の生命財産、安全を守るために、国家に新たな責務を担っていただくということで、国家に新たな権限も与える授権規範といった性質、これも考慮しなきゃいけないんじゃないかな、こう考えます。こういった考え方の違いはあるにしましても、憲法は大変重いものだから慎重に議論すべきだという辻元委員の考え方は、私は十分理解はできます。

ところが一方で、この投票権者、国民投票を行う場合の投票権者の範囲について、昨年十月六日の本委員会で辻元委員は、義務教育を終了した年齢でもよいという参考人の意見は傾聴に値する、こう発言されています。むしろ、国民投票に関しては、投票権者の年齢をもっと若い世代に持っていってもいいんじゃないかというお考えだと推察をするんですね。この辺がどうも整合性がないように、私の理解不足かもしれませんが感じるんです。私の考え方を申し上げますと、憲法というのは国の最高法規でございます。国会議員の身分ですとか国会の役割のまた根拠法でもございます。ですから、ある意味では、数年ごとに議員や政党を選ぶ国政選挙よりもはるかに高度な判断力を投票権者には持っていただかなくてはならないんじゃないかな、こう感じるんですね。

大分古い話ですが、昭和二十年に有権者の年齢を二十五歳から二十歳に引き下げた、その国会の議事録が私の手元にあるんですけれども、そこで当時の内務大臣が、「近時青年ノ知識能力著シク向上シ、満二十年ニ達シマシタ青年ハ、民法上ノ行為能力ヲ十分ニ持ツテ居リマスノミナラズ、国政参与ノ能力ト責任観念トニ於キマシテモ、欠クル所ガナイモノト存ゼラレルノデアリマス、」ということで、民法上の責任能力を持っているし、十分国政参加の能力を持っている、責任観念もあるということで二十五歳から二十に引き下げた、こういった記録があるんですね。

必ずしも、この民法上の行為能力と国政参画能力、こういったものが一致しなきゃいけないということでもないのかもしれませんが、ただ私は、プライベートロー、私法上の行為能力を認めるに足る年齢よりも公選による公務員を選ぶための選挙に参加するに足る年齢の方が低くていいという理由もなく、さらにはすべての法律に優先する最高法規を判断するに足る年齢が最も低くてよいという理由もないんじゃないかと思いますので、この点をどう考えるかということが三点目でございます。

以上でございます。

辻元委員

質問ありがとうございます。

まず一点目なんですけれども、これはこの委員会でも議論に値するテーマではないかと思うんですが、この六十年間、改正の手続が定められてこなかったという意味をどう見るかということだと思うんです。

意見の中には、立法府の怠慢という御意見もあるんですけれども、私はもうちょっと違う歴史的な意味があったんじゃないかと思います。それは、私が今所属する前身の社会党だけではなくて、自民党の中の良質な保守と言ったら変なんですけれども、戦争が終わって、そして日本がこの憲法のもとでアジアの中で、世界の中で生きていくために、やはり改正ということに物すごく慎重であったという意思のあらわれとして私は受けとめているんですね。政治というのは、これはこうやからこうやろというのではなく、総合的に考えて、私は先輩方がこの九十六条の規定を急いでつくってこなかった意味という方を重く受けとめています。

私たちはその延長線上におります。今の状況を考えた折、総合的に考えて、これは何回も申し上げていますけれども、アジアとの関係もかなりぎくしゃくしているし、日米関係をとってみても非常に微妙な時期に来ております。ですから、今早急に整備を急ぐということの内外に及ぼす影響や、そして政治的な意味ということも考えて、今すぐ直ちにと急ぐ必要はないんじゃないか、そういう時期としては今いい時期ではないというふうに考えているわけです。ですから、これは社民党の文書の中にも、未来永劫反対し続けるというわけではなく、そういう意味、それから総合的に考えて、今急ぐ必要はないと申し上げております。

この点、何で六十年間つくられてこなかったかという点を深めるということは、私は、戦後を振り返る意味では、それぞれ議論を闘わすということはとても大事なことじゃないかなと思います。

二つ目なんですけれども、高市委員の中に自衛隊が違憲であるというふうな御発言があったんですが、そういう意味ではないんです。今自衛隊がイラクに行っているような状況は違憲状態じゃないかということですので、村山時代から基本的な姿勢が変わっているわけではありません。

一つは、人権など、人権だけではなく環境権とか知る権利の議論も出ておりました、そういう案件を入れなくても、今法律で対応している。よくこれは申し上げましたけれども、人権を入れたらいいというのであれば、まず、実体的な政策として人権施策を充実させていく。環境権のこともたくさんの委員が指摘されましたけれども、それでは、京都議定書や環境税の導入など、できることを先にやろうじゃないか。知る権利という言葉もよく出てきましたけれども、情報公開法のときに知る権利を入れようと主張した折に、反対したのは自民党の皆さんだったわけです。私は今すぐ情報公開法の中に、それではまず知る権利を入れようじゃないかと。

政策的な不作為をあたかも憲法を変えることによって大きく前進させることができるというのは、私たち立法の府にいる者として、そういう発想はとるべきではないと思います。まず、政策的な不作為は何かということを、実体を深めていく中で議論されるテーマだと思っております。今その段階だと思うので、まず実体的政策に取り組もうじゃないかということは、この委員会でも最初に申し上げておりました。

それから、年齢要件についてです。

これも非常に深い問題だと思います。高市委員がおっしゃったことも一つの意見として筋が通っていると思います。ただ、もう一つ、やはり将来を規定していくということもありますから、どれだけの年齢まで下げることができるのかということについて、主権者として行使することができるのは一体どれぐらいの年齢まで大丈夫なのかということを真摯に議論すべきだと思います。例えば、女性の場合は十六歳で結婚とか、それから少年法は十四歳から適用とか、そして長野県のある町では十二歳から住民投票の有権者にしたという例もございます。ですから、主権ということをどう考えるのかという深い問題にも絡むと思います。

私は、ちょうど中学で憲法の授業を受けたときに非常に感動したのを覚えているんですね。自分自身もっと知りたいと思って、ああ、これが私たちの基本法なんだということを深く心に刻んだのを覚えています。そういう意味で、私は、では大人であったら皆考えているのかというたらそういうわけでもないので、二十か十八歳かという今二者択一的な議論が主流ですけれども、それ以上下げられないのか、主権者の主権というものをどう見るのかということと絡めて議論をしていくべきだと思います。

一点だけつけ加えたいんですけれども、技術的に選挙権と同じじゃないと膨大な実務作業が要るから二十でいいんじゃないかというような、ちょっと信じられない意見も出ました。私たちはこの憲法というものの、主権者の主権の行使の範囲をどうするかという深い問題を論じているのであって、こういう場で技術的なことに立脚して発言が出るということ自体問題があるというふうに思った点も追加で申し上げます。時間をとって済みません。

高市委員

どうもありがとうございました。終わります。

中山委員長

古川元久君。

古川(元)委員

民主党の古川元久でございます。

私ども民主党は、この憲法改正国民投票法制につきましては、これは憲法の附属法として本来は憲法制定のときに整備されるべきであったものであります。その意味では、国民投票制度そのものの整備につきましては、これは整備をする必要性があるという基本的な立場に立っております。

ただ、この整備をするに当たりましては、まずその大前提として確認をしなければならないこととして、国民投票法制の整備が憲法改正の議論とは切り離された形の中で議論されなければならない、そのことを私どもはこの委員会で共通認識として持つべきであるという立場に立っております。

また、先ほど辻元委員からも御指摘がありましたけれども、この手続法の国民投票法制の議論は拙速に行われるべきではない、国民の中での議論も認識もまだ煮詰まっていないという御指摘もありました。やはりここの委員会の議論が国民の中での議論、認識の深まりも進めるような、まさにその意味でもオープンな場で国民投票法制について議論することの重要性というものがあるというふうに認識をしておりますけれども、拙速は避けて、国民投票法制を整備する際の論点、どういうものがあるかということを、きちんとこの公の場で議論をしていく、そのことによって国民の皆さんの認識も深めていく、その中でできる限り幅広い合意を形成して、その上で成立を目指すべきである、そうした基本的な視点に立っているということを最初に申し上げたいと思います。

また、国民投票というのは、先ほど辻元委員から、主権者としての権利の行使であるというお話がありました。その意味では、私どもは、この憲法改正のための国民投票法制というのは、単に改正を是とする主権者としての意思表示ができるだけでなく、改正を否とする、拒否する機会をも国民に保障するための整備でもある、そうした視点に立って議論をしているということを申し述べたいと思います。

その上で幾つか御質問をしたいと思います。

まず、辻元委員にお尋ねしたいと思いますけれども、私ども民主党は、憲法改正についての国民投票制度を議論するに際しましては、憲法改正のみならず一般的な国民投票もこの機会に同時に議論して整備をすべきである、そうした立場に立っております。

このことは、ヨーロッパへ国民投票法制の視察に行ったときにも、どこの国も憲法改正だけでなく間接民主制を補完するものとして、この国民投票という直接民主制の手法を限定的ではありますけれども取り入れている。その意味では、日本も、間接民主制を補完するものとして一般的な国民投票法制も導入すべきではないかと。その中で、当然これは、現代の立法については、国会単独立法の原則というのがありますから、それを害しない範囲で諮問的な形の一般的な国民投票を導入する。

それは、滝委員からも昨年の選挙のお話がありましたけれども、国民の意思を聞きたい、そのためにそのたびごとに衆議院を解散しているというようなことでは私はいかがなものかとも思いますので、やはりその意味では、国民に単一の争点、イシュー、問題で意見を聞きたいということであれば、一般的な国民投票を導入すべきではないかというふうに考えますが、その点については辻元委員の御意見はいかがでしょうか。

辻元委員

一般的な国民投票制度の問題についても、この委員会でも多くの委員から意見が出されたところだと思います。

私も、この際、諮問的な、一般的な国民投票制度をあわせて議論し、導入の是非についても私たち考えてみる大きなテーマではないかというふうに思いました。

特に憲法についての国民投票制度を持っている国への視察ということで行ったヨーロッパの国々でも、一般的な国民投票制度をあわせ持っているというところが、行ったところがそうばかりだったのかもしれませんけれども、大体あわせ持っていますよね。この一般的な国民投票制度のいい点と悪い点というのも私たちは聞いてきましたけれども、私は前回のこの委員会でも述べましたが、いきなり憲法というものを扱う前に、民主党の枝野議員も皇室典範の例などを基調発言のところでなされたと思いますけれども、やはり何回か一般的な国民投票というのをその前にやってみるというようなことはあってもいいんじゃないかなというふうに思っております。

ですから、民主党の国民投票制度骨子案を拝見しまして、一般的、諮問的な国民投票制度をあわせて検討されているという点は、非常に大事なポイントじゃないかというふうに思いました。