つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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2006年5月18日 日本国憲法調査特別委員会

2006.5.18

議事録

小林参考人

憲法改正権に限界があるというのは、私の知る限り、世界の憲法学の常識であると思います。条文にあるなしではなくて、理論上当然のことで、日本国憲法に根拠のある改正権で日本国憲法を殺すということは論理矛盾、いわば親殺しみたいなもので、できなくはないけれどもしちゃいけないことなんですね。しちゃいけない。つまり、法律論というのは、規範ですから、できてもしちゃいけないということがあるわけです。

これは、案外法律学の常識で、ですから、今伊藤先生おっしゃった日本国憲法の三大原理を否定するんじゃ日本国憲法じゃなくなっちゃいますよね。あと余り争いのないところで、例えば権力分立とか地方分権とか、これはどうしても否定しようがないでしょうね、ということです。

ただ、何がその限界に当たるかの解釈論争は私はあると思います。例えば平和主義だとて共産党的平和主義と自民党的平和主義、石破先生があそこにおられますが、石破先生は平和主義者ですよ、でも、軍国主義者と言いたいでしょう、というようなことなんでありまして、だから、解釈の論争はあり得るけれども、改正権の限界というのは、これは当然のことであります。

辻元委員

先ほどから、両参考人の方から、昨年出されました自民党の新憲法草案が出た状況下でこの手続法を中立的に議論しようと言ってみても、やはり状況としてはそれに引っ張られる状況であるというような趣旨の御発言があったように思うんですね、影響が出ると。

今の改正の限界のお二人の御解釈から、あの自民党がお出しになった新憲法草案というものを、自民党の一部の方、中心的につくられた方の中には全面改正なんだというような御発言も出たことがあるんですけれども、これはどのようにごらんになっているのか。

特に、そもそも憲法とは権力の恣意的な濫用を防ぐというところが、小林先生のさっきのマイナス十点というところで、そこがちょっと主客転倒というか警鐘を鳴らしていらっしゃいました。私はそこがぐらついているのはマイナス十点どころではないと思うんですが、そもそも憲法というものの持つ意義とか意味というところを少しずらしていらっしゃる。

そういう意味で、今の憲法の改正の限界の問題と、そもそも憲法とはというところから見て、伊藤参考人と小林参考人にもう一度新憲法草案についての御意見を伺いたいと思います。

伊藤参考人

憲法改正の限界の内容についてどう考えるか、先ほど小林先生の御指摘があったように、平和主義の中身をどう考えるかなどは、やはり議論があるところだと思います。

ですが、それをおいても、例えば国民に義務を課す、国民に対する義務規範として、責務という言葉を使ってあったように思うんですけれども、まあ、それでも義務だと思います、そういう国民に対する義務規範にしようということは、やはりその憲法の本質を変えてしまう部分というふうに評価されても私はやむを得ないのかなというふうに一点思います。

もう一点は、これは私の考え方でありますが、私の平和主義の理解としては、戦争はしないということを国是とする国が、戦争をすることができるということに変えるということになると、やはりかなり根本的な国家の姿勢の変更になるのかな。そうすると、それは平和のあり方として、いろいろなあり方がある中で今の憲法が選び取ったものを変える、それが果たして許されるのか、私は個人的には限界を超えるのではないかというふうに考えています。

小林参考人

昨年の自民党の新憲法草案について、私はやはり九十点と言わせていただきます。つまり、愛国心を法で強制しようとするところがお粗末な勘違いで、法と道徳の混同で、それはマイナス十点なんですが、私自身は、六十年たつこの憲法はモデルチェンジが必要であるという前提で、そのために自民党が議論をあそこまで進めたということを高く評価しているんです。

と同時に、その十点の誤解が、憲法の前提が、憲法観がずれているという土俵のずれを大変心配する議論もあるんですが、私は実は心配していませんで、自民党のエキスパートは皆学識のある人たちですから、話し合うとわかるという体験も幾つもしています。と同時に、憲法改正というのは三分の二そろわなきゃできないわけですから、少なくとも民主党が合意しなければいけないんですが、民主党は頭でっかちなまでにそういう点はぶれがありません。ですから、民主党がその議論の過程で正してくれると私は確信しています。でなければ民主党が乗らないですから、どうせ壊れますから。

ですから、そういう意味では、どんどんどんどん話を進めていくことが、国民的論争のレベルを上げるという意味で意味があると思っております。

以上です。

辻元委員

ありがとうございます。

私は民主党の議員ではないので何とも今の御指摘については申し上げられないところですけれども、小林参考人とは以前から、議員になる前から憲法の問題でそれぞれ議論させていただく場面がありました。その中でも、それぞれの条項について意見が違うところはあるわけですが、やはり、そもそも憲法とはというところの共通基盤があるので議論ができるように私は思うんですね。ですから、そこの共通認識というところをきょうお二人から強く御指摘いただいたことは、非常に今後議論を進めていく上で有益なことではなかったかというように思います。

時間になりますので最後になりますけれども、私は、ここの委員会では議論されておりますけれども、国会全体の状況を見まして、先ほどから小林参考人からもいろいろな憂慮の点を御指摘いただいているように、やはり憲法とは何かというところの認識をさらに深めていく必要があると思います。ですから、それはあと一カ月ほどではなかなかできませんので、この国民投票法制についても、私は、憲法にまつわることですから、慎重にも慎重を重ねた議論をさらに続けていくということが大切だということを申し上げまして、両参考人には本当に心からお礼を申し上げまして、終わります。

ありがとうございました。