菅国務大臣
せっかくの機会でありますから、安倍内閣の慰安婦問題に対しての基本的なことをぜひ述べさせていただきたいと思います。
これまでの歴史の中で、多くの戦争があり、その中で女性の人権が侵害されてきた。二十一世紀こそ人権侵害のない世紀にすることが大切であり、日本としても全力を尽くしていく。さらに、慰安婦問題についても、今委員が言われましたけれども、筆舌に尽くしがたい思いをされた方を思い、非常に心が痛む。このことは、総理が発言をされております。
さらに、安倍内閣として、この問題を政治問題、外交問題にさせるべきではない。さらに、前回の安倍内閣において閣議決定をした、そういう経緯も踏まえて、内外の歴史学者、さらには有識者の手によって、さまざまな問題について今検討がされている。その中で、この問題についても学術的観点からさらなる検討を重ねることが望ましい。
これが安倍内閣の基本的な考え方でありまして、このことに基づいて私たちは今対応しているということです。
辻元委員
塩崎さんの答弁は踏襲しているかと聞いているんです。
菅国務大臣
今私が申し上げたのが、安倍内閣の基本的姿勢です。
辻元委員
ここで、資料の中に強制性を示すものがなかったというところが焦点になっております。
それで、一部、資料を御紹介したいと思います。
ここに本があるんですけれども、「終りなき海軍 若い世代へ 伝えたい残したい」、これはアメリカの下院で問題になった書物で、この中の、中曽根康弘元総理のこういう記述がございました。三千人からの大部隊だ、やがて原住民の女を襲う者やばくちにふける者も出てきた、そんな彼らのために、私は苦心して慰安所をつくったこともある、こういうくだりがアメリカで問題になったんですね。
これに対して中曽根元総理は、これは休憩と娯楽の施設をつくったんだと記者会見でおっしゃったんですが、その後また、一昨年に、こういう資料が出てまいりました。
皆さんのお手元に資料をお配りしております。ちょっとごらんになっていただきたいと思います。
これは「海軍航空基地第二設営班資料 防衛研修所戦史室」、これは防衛省から探していただいて取り寄せたものです。「電子複写不可」と書いてありますが、これは古い本だから、誰でもコピーしていいものと違いますよという意味ですので。
それで、まず一ページ目を見ていただきましたら、下の方に、右の下の三番目に「慰安所開設」というのがございます。そしてさらに次を見ていただきますと、一番最後のくだり、「設営後の状況」ということで、「主計長の取計で」、これはそのまま読みます、「土人女を集め慰安所を開設 気持の緩和に非常に効果ありたり」と出ておるわけです。
それで、こういうところに、あえてそのまま読みますが、「土人女を集め慰安所を開設」というところに、強制的に集めという、そういうようなものは見つかっていないということなんですね。
これは政府の通達などもないということですが、今も通達は出しています、世界じゅう通達も出しますが、強制的に集めろとか、そんな通達は普通、出ないと思うんですね。
そして、次のページを見ていただきますと、この「主計長の取計で」という主計長、真ん中ぐらいで、海軍主計中尉中曽根康弘さんというふうになっております。こういう資料も新たに見つかってきているわけですね。
この慰安婦問題、私は非常に深刻に受けとめているんですね。ただ単に強制するという文字がなかったというだけで、果たしてその論理が成り立つのか。
先ほど、塩崎さんの答弁にもありましたように、これは当時の石原信雄官房副長官、対応された方ですけれども、物理的証拠がないのに強制的に慰安所にされたということを断定するのはけしからぬ、行き過ぎであるという批判が当時もあったと。しかし、さまざまな証言やこういう資料から総合的に判断したというのが政府の見解だったわけです。
それで、私の質問主意書に対する答弁が、総理がおっしゃる閣議決定があるとか、官房長官が閣議決定があるとおっしゃっているのは、私の前安倍政権のときに出した質問主意書に対する答弁でしょうか。いかがですか、総理。総理がおっしゃっていますから。
菅国務大臣
いずれにしろ、慰安婦問題に対しての安倍政権の立場は、私が先ほど申し上げたとおりであります。(辻元委員「だから、私に対する答弁かと聞いているんです」と呼ぶ)あの答弁書は、平成十九年三月十六日付の答弁書です。
辻元委員
そうしましたら、今皆さんにお配りしている資料を見てください。これは答弁書をつけてございます。
この右側を見ていただきたいんですが、オレンジの傍線を引いてあるところ、同日の調査の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところであると。ここを取り上げられて、こういうことが閣議決定、閣議決定といいましても、安倍総理がみずから出された、何か発出したというわけじゃなくて、私の質問主意書に対して閣議決定をした答弁書という意味です。
ところが、その上を見てください。お尋ねの強制性の定義に関連するものであるが、慰安婦問題については、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関連資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の官房長官談話のとおりとなったものである。また、同日の調査云々で見当たらなかった、これはさっきの塩崎さんの答弁と同じなんです。
この十年前、政府はどのような答弁をしていたかというのが左にございます。これは片山虎之助委員に対する政府の答弁です。
政府といたしましては、二度にわたり調査をしました。一部資料、一部証言ということでございますが、先生の御指摘の強制性の問題でございますが、政府が調査した限りの文書の中には軍や官憲による慰安婦の強制募集を直接示すような記述は見当たりません。総合的に判断した結果、一定の強制性があるということで判断した。
これは十年前も同じ答弁をしているわけですよ。ですから、私の質問主意書に対して、この黄色とオレンジを入れかえて答弁した、同じ内容と理解してよろしいですね、官房長官。