つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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2013年5月29日 法務委員会

2013.5.29

議事録

榊原政府参考人

委員の御指摘がありましたように、平成二十一年の入管法改正によりまして、正当な理由がある場合を除きまして、所定の期間内に住居地の届け出をしないことや、配偶者の身分を有する者としての活動を六カ月間行っていないことが在留資格の取り消し事由とされましたが、そういった方がドメスティック・バイオレンスの被害者であり、ドメスティック・バイオレンスを理由として避難したり、または保護を必要としている場合は、正当な理由がある典型的な事例として、在留資格の取り消しを行わないこととしております。

また、そういった事情につきましては、法務省のホームページにおきまして、八種類の言語でその事情を掲載するなどして周知に努めているところでございます。

今後とも、ドメスティック・バイオレンスの被害者の保護を図る観点から、地方入国管理局等の窓口で確実な案内を行うなど、適切な広報に努めてまいりたいというふうに考えております。

また、そういったドメスティック・バイオレンスの被害を受けた方につきまして、どのような形で認定しているのかにつきましては、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律第一条の定義、配偶者からの暴力の定義にのっとりまして、配偶者からの身体に対する暴力またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動に該当する行為を受けた人は、ドメスティック・バイオレンスの被害者として認定させていただいているところでございます。

また、そういった状況にある方々につきましては、在留資格の更新の申請とか資格の申請に当たりまして、きめ細かな配慮ができるように努力しているところでございます。

辻元委員

今、前向きな御答弁をいただいたと理解するわけですが、先ほど認定は七十八件というのは、非常にまだ氷山の一角で、少ない数だと思うんですね。ですから、これはやはり、今おっしゃった多言語であったり、それからDVの被害に遭っている人たちが在留資格を取り消されるんじゃないかということでなかなか申し出られなかったり、さらにそれが深刻な被害につながっているということも考えられますので、その徹底をさらに前に進めていただきたいと思っております。

次に、外務省にちょっとお伺いいたしますけれども、そういうような深刻な事態で子を自分の母国に連れ去るというか連れて帰った場合、相手国がハーグ条約に加盟している場合、日本人男性が捜してくれというようになった場合は、これは、日本の中央当局がまず相手国、仮に先ほどタイの事例を申し上げましたけれども、タイの中央当局に対して要請をかけるということになります。

そうすると、この女性、まあ、女性が多いわけですけれども、女性がDVに遭っていたということになりますと、仕組みによりますと、相手国の中央当局から日本の中央当局の方にそのDV被害の調査の依頼などが来ると思います。前回の質疑では、例えばアメリカだったらアメリカの中央当局に要請すると。それで大丈夫かいという話があったわけですね、ちゃんとやってくれるのかなと。日本の在外公館もきちんと対応しなきゃいけないんじゃないですかという指摘もあったと思うんです、逆の場合ですね。

日本の中央当局がそれを受けて、どういう体制で、このDV被害等、人権侵害も含めて、調査をする体制は果たして整っているのかどうか、その点についてお聞きしたいと思います。

新美政府参考人

お答え申し上げます。

まず、委員から冒頭お話ございましたとおり、ハーグ条約は、外国から日本に子供が連れ去られた場合だけではなくて、まさに今御議論いただいておりますとおり、日本から外国に連れ去られた場合も当然適用になるわけでございます。

この委員会の場でも何回か政府側から御説明させていただきましたけれども、外務省あるいは日弁連等の調査におきましても、アンケートで、外国から子供を連れ去ってしまったり連れ去ろうとしているという件数と同じぐらい、子供を日本から外国に連れ去られてしまう、あるいは連れ去られてしまったという件数がございます。そういう意味から、私ども、外国から日本に来るのをインカミング、日本から外国に行くのをアウトゴーイングというようなことも便宜上使っておりますけれども、外国に連れ去られてしまうという場合についてもきちっと対応することが大事だと思っております。

今の委員の御質問につきましては、まさに条約におきまして、子の返還手続を行っている他の条約締約国の中央当局、先ほどちょっとタイの例を出していただきましたが、タイではこれは最高検察庁が中央当局になっているようでございますけれども、そこから日本に対して、子供の日本国内における心身、養育及び就学の状況その他生活及び取り巻く環境の状況に関する情報を問われることがあるわけでございます。

そのような場合につきましては、御審議いただいた条約の実施法案におきまして、一定の条件を満たしたときは、中央当局、日本の場合は外務省でございますけれども、外務省が実施法に基づきまして、国の行政機関あるいは地方公共団体、あるいはその他の情報を有している者に対して情報の提供を求めることができるという規定を国内法の法案で書いてございます。

したがいまして、我が国の中央当局、日本の場合は外務省でございますが、外務省だけでは調べられる情報は限りがございますので、今言ったような法律の仕組みのもとで、関係省庁あるいは地方公共団体等からDVも含めて必要な情報をいただいて、それを条約締約国、タイであればタイの中央当局に対して提供を行うということを想定しているわけでございます。

辻元委員

その際に、連携が非常に大事だと思うんですね。

先ほどから、入管及び警察の担当官の方から御報告をいただきましたけれども、入管に届けられているのは七十八件しかないわけですよ。日本人の女性が諸外国から連れ去って帰ってきている場合と同じぐらい起こっているという話がありましたね。そうすると、七十八件しかないんかいと。要するに、入管なんかに問い合わせたら、いや、これは違います、違います、違います。警察も、外国人か日本人かというのをそんなに区別した統計はないということなんですけれども。

その辺の、各省庁間の連携だけではなくて、今は、警察、入管の方にも来ていただいていますけれども、先ほど申し上げましたように、連れ去っている数の方が多いと思います。その際に、やはり積極的に外国人の被害に遭っている方の、拾い上げると言うたら変なんですけれども、情報としてあらかじめきちんと対応する。

そのためには、周知徹底とか、こういう場合は申し出てくださいとかというのをやっておかないと、連れ去った案件を相手の国の中央当局から要請を受けても、こちらは情報不足で対応ができないということになれば、ハーグ条約に加盟している国々で、相互の信頼関係と、やはり相互に人権を守っていくということに基づいた条約ですので、日本としても外国人女性の案件に対する対応も積極的にとっていただかないと、泣き寝入りじゃないけれども、する人がふえたり。

結局、日本に子だけが帰ってきたとしても、これは前回も指摘されましたが、DVで被害はあった、男性が女性にというケースが多いわけですが、子だけを連れ帰ってきた場合に、子に対する虐待ということにつながる率も高いということも多々指摘されております。

日本の中で暮らすその後、子の人権や子の成長にも大きく影響するという問題意識を持っていただきまして、ハーグ条約に加盟し、そして国内法を整備し、運用面では人権大国にふさわしいと言われる、国際的にも他の国にまさる対応をとっていただくように指摘をしておきたいと思います。

大臣、よろしくお願いします。いかがですか。

谷垣国務大臣

それぞれ、警察あるいは外務省、それから入国管理、いろいろなことがあると思いますが、今おっしゃったこと、ドメスティック・バイオレンス、これはやはり犯罪になり得ることを含んでいる、それから、人道的な観点からも的確な対応が必要な事案だろうと思います。

ですから、先ほど、国内に滞在する理由になるかならないかというのは局長が御答弁を申し上げましたけれども、そういうことを含めてきちっとした対応をしていかなければならない。今までもそういうつもりでやってまいりましたが、これからもそのような指導をしてまいりたいと思っております。

辻元委員

今、特に入管法の運用について前向きな御答弁をいただいたと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

さて、残りの時間で、前回の続きです。

それで、前回は、立憲主義への御認識、そして、公共の福祉を自民党の改正草案では公益及び公の秩序と変えていらっしゃることや、また、結社の自由、いわゆる広い意味でいえば表現の自由を、公益及び公の秩序での制限というようなことも自民党の草案に入っている点、それからさらには、憲法というのは権力を縛る規範であるという最初大臣の御答弁だったんですが、国民に対して憲法を尊重するというような条項が入っていて、これは私は問題ではないかという御提起をさせていただいた。

さて、きょうのハーグ条約関連法の運用にも家族の問題が出てきまして、もう一点私が気になっていますのが、自民党がお示しになっている日本国憲法改正草案の中に、二十四条、「家族は、互いに助け合わなければならない。」という、何か道徳規範というか、そういうものを入れていらっしゃるんですね。

家族は多様化しておりますし、そして今や日本は、今やというか私はずっと申し上げているんですが、一民族一政治形態の国というのはなくなっております。そんな中で、さまざまな、家族の破綻もあればいろいろあるわけですが、こういう道徳規範を憲法に入れるというのは、私はふさわしくないのではないか。

これは自民党総裁時代におつくりになった草案ですから、この間からしつこく聞いているんですが、これはどういう趣旨で入れられたんですか。これは私は憲法にふさわしくないと思うんですけれども。どうも説教臭いんです、自民党の憲法草案が。憲法は、説教じゃなくて、やはり権力をあらかじめしっかりと制約しておくという本当にシンプルなというか、そぎ落としたものにしておかないと、多民族の国家になりますし、何だか、一定の価値を憲法の中に入れるというのは、これは私はそぐわないと思うんですが、いかがですか。