つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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<答弁書>「岸田文雄内閣総理大臣の広島・長崎における外国人の原爆被害状況の認識に関する質問主意書」の答弁が出ました

2023.5.16

国会ブログ質問主意書

2023/5/1(月)「岸田文雄内閣総理大臣の広島・長崎における外国人の原爆被害状況の認識に関する質問主意書」を提出しました。

→答弁書が5/16(火)に閣議決定されました。

【答弁】参67辻元清美君(岸田文雄内閣総理大臣の広島・長崎における外国人の原爆被害状況の認識に関する質問主意書)

→G7で被爆の実相を世界に発信するといいながら、「原子爆弾の投下による死没者数に関する調査を実施することは考えていない」「調査に膨大な時間を要することから、お答えすることは困難」という答弁に驚きました。ナチスの犯罪を今なお追及し続けているドイツの首相も参加するG7を前にして、世界に発信してしまったのは岸田総理の言葉の薄っぺらさです。

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岸田文雄内閣総理大臣の広島・長崎における外国人の原爆被害状況の認識に関する質問主意書

 

岸田総理は、本年五月十九日から二十一日にかけて開催するG7広島サミットに韓国のユン・ソンニョル大統領を招待することを決定した。

韓国では今も多くの被爆者が原爆後障害に苦しんでいる。在韓被爆者は、日本の朝鮮植民地支配の結果、生活の糧を求めて、あるいは徴兵や徴用によって広島、長崎に行くことを余儀なくされ、原爆の被害を受け、九死に一生を得て祖国に帰国した人たちである。その数は二万人を超えると推定されており、令和五(二〇二三)年二月末現在千八百五十三人が「社団法人・韓国原爆被害者協会」に登録されている。在韓被爆者が受けてきた歴史的、身体的、精神的、そして社会的な被害に対して日本政府も大きな責任を負っている。日本政府は「在韓被爆者への賠償問題は一九六五年の日韓請求権協定で解決済み」という立場を一貫してとってきたが、実際には何の賠償も援護もなく、在韓被爆者が病苦と貧困の悪循環の中に放置され続けたことは、これまでに報じられてきたとおりである。

しかし、在韓被爆者たちが原爆後障害に苦しみながらも日本政府に対して賠償と謝罪を求め続けた結果、日本政府は平成二(一九九〇)年五月の日韓首脳会談において韓国政府に「在韓被爆者のための人道的医療支援金四十億円」の拠出を約束した。これにより、在韓被爆者は被爆から半世紀近くが経って初めて、韓国で医療費の支援を受けることができるようになった。だが、一時的支援金の四十億円は十年もたたないうちに底をつき始めた。韓国の被爆者が再び何の援護もない状態に陥ってしまう危機を未然に回避するため、平成十(一九九八)年、郭貴勲(クァク・クィフン)氏が「被爆者援護法の平等適用を求める裁判」を起こした。日本在住被爆者に対して日本政府は、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(以下「被爆者援護法」という。)によって医療費や健康管理手当を始めとする各種手当ての支給を行ってきたが、日本国外の被爆者はその対象外とみなした。郭氏は「同じ被爆者」として日本在住被爆者と同等の援護を、被爆者援護法の精神に沿って行うべきであると訴えた。

こうした動きに伴い日本の国会には超党派の「在外被爆者に援護法適用を実現させる議員懇談会」が結成され、郭氏が第二審の大阪高裁で勝訴したとき、日本政府に上告断念を求めて強力に働きかけた。それが功を奏し最終的に日本政府は上告を断念し、在外被爆者を被爆者援護法の適用から除外してきた日本政府の「通達」は廃止された。その後も、在韓被爆者たちは、被爆者援護法の全面適用を求める裁判を次々と提訴し、その裁判にはアメリカやブラジルに在住する日系人や日本人の被爆者も加わるようになった。この一連の裁判で在外被爆者の原告らは勝訴を重ね、平成十九(二〇〇七)年の三菱広島徴用工被爆者裁判の最高裁判決では、日本政府に在外被爆者を被爆者援護法から排除してきたことに対する慰謝料(原告一人当たり百万円)の支払いが命じられ、平成二十七(二〇一五)年には在韓被爆者医療費訴訟が最高裁で勝訴し、これをもって、被爆者援護法に定められた援護のうち介護手当以外の全ての援護が在外被爆者にも適用されるようになった。被爆から七十年目のことであった。

岸田総理が「被爆の実相を伝えることが開催の原点」というG7広島サミットにユン・ソンニョル韓国大統領を招待することは日韓の友好に寄与するものと考えるが、以上のような在韓被爆者に対する日本政府の取扱いの歴史を踏まえるならば、岸田総理にはこの歴史を十分に認識し、そして深く反省し、ユン・ソンニョル大統領に対して「韓国人の被爆時及び被爆後の実相」について誠意を尽くして説明することが求められている。さらに、岸田総理は、各国首脳らに対して、「日本人の原爆被害の悲惨さ」を訴えるだけでなく、「韓国人を始めとする外国人の原爆被害の実相」を正確に伝えてこそ、核兵器廃絶を各国共通の課題にするための一役を果たしうると考える。

そこで、岸田総理がG7広島サミットで各国首脳に伝えようとしている「被爆の実相」がいかなるものであるのかについて、以下質問をする。

 

一 私が第二百十回国会に提出した「岸田文雄内閣総理大臣の広島・長崎における外国人の原爆被害状況の認識に関する質問主意書」(第二百十回国会質問第四八号)に対する答弁(内閣参質二一〇第四八号)の「三の1及び5について」では、「核兵器がもたらしたあらゆる被害についての正確な認識を広め、被爆の実相を世代と国境を越えて世界に発信することは、我が国の重要な責任であると認識している。」とされている。

ここにいう「核兵器がもたらしたあらゆる被害についての正確な認識」及び「被爆の実相」には、「原爆の被害を受けたのは日本人だけではなく、多数の韓国人(当時は「朝鮮人」)を始めとする様々な外国人がいたことの正確な認識」及び「外国人の被爆の実相」も含まれているか。政府の見解を明らかにされたい。

 

二 同答弁の「一の1から4までについて」では、原爆犠牲者の数に関して、「「広島の原爆犠牲者が十数万」及び「長崎の原爆犠牲者が七万」については、広島市及び長崎市が昭和五十一年に国際連合へ提出した資料において、昭和二十年十二月までの原子爆弾の投下による死没者について、広島市においては約十四万人、長崎市においては約七万人とされていることを基にしており、両市によると、「日本人以外の外国人犠牲者」は含まれているが、「出身国ごとの数の内訳」は把握していない」とされている。

政府は、「被爆の実相」の基盤となる「原爆犠牲者の数」に関して、広島市と長崎市の資料を引用するのみで、日本政府の責任で公表すべき数を示さなかった。また、「日本人以外の外国人犠牲者」に関しては「正確な認識」は皆無であると国際的に解されかねない答弁を行った。

しかし、「被害についての正確な認識を広める」ために広島でG7サミットを開催する岸田総理が、ユン・ソンニョル大統領を含む各国首脳に、「「日本人以外の外国人犠牲者」は含まれているが、「出身国ごとの数の内訳」は把握していない」という説明をすることは岸田総理の広島サミット開催の意図にそぐわないと考える。そこで以下質問する。

1 広島、長崎における「原爆犠牲者の数」と、「日本人以外の外国人犠牲者の数」について、広島市及び長崎市の集計を引用するのではなく、また、「出身国・地域ごとの数の内訳」についても、日本政府としてきちんと調査した上で、自らの責任において公表すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。その上で、政府の責任において公表する数字としての広島、長崎における「原爆犠牲者の数」、「日本人以外の外国人犠牲者の数」及び「出身国・地域ごとの数の内訳」を改めて明らかにされたい。

2 日本政府は、「韓国の被爆者の賠償問題は日韓請求権協定で解決済み」と主張している。こう主張するからには、日本政府は韓国人の原爆被害の実相を把握し、それに基づいて韓国側と賠償問題を協議したと考えられるが、これについて政府の見解を明らかにされたい。

3 国立国会図書館蔵の「陸海軍関係文書」の中の「内地在住朝鮮人戦災者概数」に、「広島県の総戦災者数三十五万九千人、朝鮮人戦災者数一万二千九百人」、「長崎県の総戦災者数二十万四千九百人、朝鮮人戦災者数七千九百人」という記録がある。これは日本政府が把握している人数であると考えられるため、以下の点を明らかにされたい。

(1) この人数は原爆による戦災者を含んでいるか。

(2) 含んでいるとすれば、広島、長崎それぞれ何人か。

4 今野東参議院議員(当時)が第百六十九回国会に提出した「戦時下朝鮮人強制動員被害者の名簿など被害認定関係資料の調査と提供に関する質問主意書」(第百六十九回国会質問第一五三号)に対する答弁(内閣参質一六九第一五三号)の「三及び四について」において、政府は、次のように答弁している。

「朝鮮半島出身の旧軍人・軍属については、政府は、昭和四十六年に二万千九百十九人の「旧日本軍在籍朝鮮出身死亡者連名簿」、平成五年に十四万三千二百十一人の陸軍「留守名簿」、二万千四百三十三人の海軍「軍人履歴原表」及び七万九千三百四十八人の海軍「軍属身上調査表」並びに平成十九年に旧軍人・軍属の供託書正本等延べ約十一万件のいずれも写しを、また、平成三年に九万八百四人、平成四年に一万七千百七人のいわゆる朝鮮人徴用者等に関する名簿の写しを、それぞれ韓国政府に引き渡している。」

「政府としては、朝鮮半島出身の旧軍人・軍属の人数に関し、約二十四万人については、旧陸海軍から引き継いだ人事関係資料により把握している。しかし、旧国家総動員法(昭和十三年法律第五十五号)により徴用された朝鮮半島出身者の人数については、把握していない。」

この答弁に関連して、以下の点を明らかにされたい。

(1) 「朝鮮半島出身の旧軍人・軍属の人数に関し、旧陸海軍から引き継いだ人事関係資料」で明らかにできる、広島市内にあった旧日本軍施設における朝鮮半島出身の旧軍人・軍属の人数を示されたい。

(2) 「平成三年に九万八百四人、平成四年に一万七千百七人のいわゆる朝鮮人徴用者等に関する名簿の写し」から明らかにできる、広島市、長崎市内に徴用された朝鮮人の人数を示されたい。

 

三 「被害についての正確な認識」及び「被爆の実相」には、九死に一生を得て生き延びた被爆者たちの健康及び生活の実態も含まれる。しかしながら、被爆後に日本を離れた被爆者(在外被爆者)たちは長年にわたり日本政府の被爆者援護行政から排除されてきたために、その実態は明らかではない。

だが、在外被爆者裁判の勝訴により被爆者援護法が在外被爆者にも適用されるようになって以降は、日本政府が所管する統計で部分的ながらも在外被爆者の健康状態を把握することが可能になってきた。その統計が、前述の第二百十回国会質問第四八号における「四の1の(2)」、「四の2の(2)及び(3)」で明らかにすることを求めたものである。それに対する政府の答弁は「お尋ねについては、把握しておらず、お答えすることは困難である。」というものであった。

しかし、厚生労働省の国家予算で執行される被爆者援護施策に関しては必ず決算報告がなされる。「把握しておらず」という答弁は「質問項目の全てについては把握できていない」と解されるので、今回は質問内容を医療費に関する金額に限定して、以下のとおり質問する。

1 日本政府(厚生労働省)が平成十六(二〇〇四)年に開始した「在外被爆者保健医療助成事業」による助成金について、平成十六(二〇〇四)年以降の国別の年間助成金額の年度別統計を明らかにされたい。なお、韓国の被爆者への助成金については、厚生労働省が毎年四月一日に被爆者一人当たりの年間上限額に被爆者健康手帳及び被爆時状況確認証の交付人数をかけた金額を大韓赤十字社に送金していると承知している。

2 被爆者援護法第三章第三節「医療」に定めのある「医療費の支給」及び「一般疾病医療費の支給」について、平成二十八(二〇一六)年一月一日(在外被爆者に対する前記二種の医療費支給の開始日)以降の国別の年間支給金額の年度別統計を明らかにされたい。なお、前記二種の医療費支給については、厚生労働省から地方自治体への法定受託事務として取り扱われており、韓国の被爆者については長崎県が、韓国を除くそれ以外の国の被爆者については広島県が実施していると承知している。

 

四 前記二及び三で言及した日本政府所管の資料からも、これまで明らかにされてこなかった「被害についての正確な認識」及び「被爆の実相」を明らかにすることは可能であると考える。政府は、今後、日本政府の責任において、「被害についての正確な認識」及び「被爆の実相」の解明に積極的に取り組む意思はあるか。さらには、日本政府所管の原爆関連資料を公開し、官民を挙げて「被害についての正確な認識」及び「被爆の実相」の究明に取り組む意思はあるか。

右質問する。