つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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<答弁書>個人情報の提出は「強制ではない」――「自衛官又は自衛官候補生の募集事務に関する質問主意書」の答弁書が出ました

2023.12.1

国会ブログ質問主意書国会質問

2023/11/17(金)、「自衛官又は自衛官候補生の募集事務に関する質問主意書」を提出しました。

→12/1(金)答弁書が閣議決定されました。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/212/touh/t212055.htm

自衛官の募集について、自治体に対して個人情報の提出を「強制するものではない」こと、提出しなかったからといって「不利益な取扱いをしてはならない」ことを認めました。
また、自衛隊が行った調査で、「自衛官等募集があることを初めて知った募集広告等は何か」という問いに対し、「地本の郵便物」(すなわちDM)と答えた一般曹候補生は24156名中1.4%(17位)、自衛官候補生は25513名中1.3%(18位)という結果だったことを明らかにし、「必ずしも高いとは言えない」と答弁しました。

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自衛官又は自衛官候補生の募集事務に関する質問主意書

 

かつて安倍総理大臣(当時)は、平成三十一年二月十日の自民党大会で、自衛官又は自衛官候補生の募集事務に関して「新規隊員募集に対し、都道府県の六割以上が協力を拒否している悲しい実態がある」旨述べた。さらに住民基本台帳の一部の写しを提出していない地方自治体に対して、「法令に基づく防衛大臣の求めに応じず、資料を提出していません」、「募集に対する協力の現状はまことに残念と言わざるを得ません」と述べた(平成三十一年二月十三日衆議院予算委員会)。

報道によれば、この発言に対し「閲覧対応」としている自治体からは「法令に基づいた運用で拒否ではない」(さいたま市)、「できる範囲で求めに応じていて「拒否」には違和感がある」(広島市)、「名簿の提出に、条例で定める「相当な理由」があるかどうかが問題だ。自衛隊が明記されても対応は変わらない」(大津市)などの反発や疑問の声が相次いだ。当時閲覧で対応していた札幌市が「個人情報保護は憲法改正とは別の議論だ。仮に改正されても、直ちに名簿を提出するのは難しい」と述べるなど、「安倍元総理が憲法九条への自衛隊明記案と関連付けている点が不満に拍車を掛けている」(平成三十一年二月十七日東京新聞記事)と報じられている。

その後政府は、令和二年十二月十八日に「令和二年の地方からの提案等に関する対応方針」(以下「令和二年閣議決定」という。)を閣議決定した。令和二年閣議決定は「自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要な資料の提出を防衛大臣から求められた場合(自衛隊法九十七条一項及び同法施行令百二十条)については、市区町村長が住民基本台帳の一部の写しを提出することが可能であることを明確化し、地方公共団体に令和二年度中に通知する」と定めている。

この令和二年閣議決定を受けて防衛省・総務省は、各都道府県市区町村担当部長宛に「自衛官又は自衛官候補生の募集事務に関する資料の提出について」(令和三年二月五日付け)を通知した(以下「令和三年通知」という。)。令和三年通知は、「1 自衛官及び自衛官候補生の募集に関し必要となる情報(氏名、住所、生年月日及び性別をいう。)に関する資料の提出は、自衛隊法第九十七条第一項に基づく市区町村の長の行う自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務として自衛隊法施行令第百二十条の規定に基づき、防衛大臣が市区町村の長に対し求めることができる」、「2 上記の規定の募集に関し必要な資料として、住民基本台帳の一部の写しを用いることについて、住民基本台帳法(以下「住基法」という。)上、特段の問題を生ずるものではない」としている。令和三年通知以後、自衛隊からの協力要請を受けて、自衛官の募集に協力することを目的とし、住民基本台帳に登載された情報に基づいて、個人情報(氏名、住所、生年月日及び性別。以下「住基四情報」という。)を提供する自治体が増加した。

令和四年六月二十二日、兵庫県弁護士会から「自衛隊への個人情報提供に関する意見書」が発表された。同意見書は問題の所在を下記のように指摘している。

○住基四情報は個人識別情報として憲法十三条で保障された人格権のうちのプライバシー権によって保護の対象とされている。すなわち、憲法十三条は、国民の私生活上の自由が公権力に対しても保護されるべきと規定しており、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有する(最高裁昭和四十四年十二月二十四日大法廷判決)。そして住基四情報が、法的に保護されるべき情報に該当することは、個人情報保護法一条、二条及び最高裁判決でも認められているところである(最高裁平成十五年九月十二日第二小法廷判決、同平成二十年三月六日第一小法廷判決)。したがって、住基四情報を本人の同意なしに自衛隊に対して提供することは、憲法十三条で保障されたプライバシー権を侵害するおそれがある。

そして、令和三年通知が示すように自衛隊法九十七条一項及び同法施行令百二十条が個人情報提供の根拠規定となるかどうかについては、以下のように論じている。

○人権を制限するにはその根拠となる法律が必要となるところ、その法律により政令に人権制限の内容を委任する場合には、当該法律(委任立法)において人権の規制の趣旨、内容が明確に読み取れる規定であることが必要である。最高裁判例解説平成二十五年度によれば同判決は「最高裁が委任立法の適否を判断するについてはその規制の範囲や程度に応じた授権規定の明確性が重要となり得ることを明示的に述べた」と指摘されている(最高裁平成二十五年一月十一日第二小法廷判決参照)。したがって、自衛隊法九十七条一項及び同条からの委任命令をもって、プライバシー権の制限規定と位置づけるのであれば、同条から、プライバシー権を制限する趣旨が明確に読み取れることが必要となる。

○住基法では、平成十八年の法改正までは、誰でも住基四情報の写しを閲覧することが可能であったが(旧法十一条一項)、改正により原則非公開となり、閲覧できる要件が厳格となるとともに、国又は地方公共団体の機関は、法令で定める事務の遂行のために必要である場合には、市町村長に対して同写しの「閲覧」を請求することができる、と規定された(住基法十一条一項)。そのうえで住基法は、市町村長が住基四情報など住基法に掲載された情報のうちの本人確認情報を「提供」できる場合は、住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)による場合だけとしている(住基法第四章の二「本人確認情報の処理及び利用等」、同法三十条の六、同第三節「本人確認情報の提供及び利用等」)。

○以上のように住基法は、住基四情報について国の機関による「閲覧」しか認めておらず、唯一「提供」を認めている住基ネットに関しては、提供された個人識別情報の保護のための相当に詳細な規定が設けられている。すなわち、その提供する情報の内容、提供の方法が具体的に規定され、提供される本人確認情報の管理、利用、同情報の目的外使用の禁止、提供された本人確認情報の保護のための専門機関としての監視機関の設置と同機関による本人確認情報の保護に関する事項の調査審議権限の付与などである。

○自衛隊法九十七条一項は、「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う。」と規定するだけで、その事務の内容について具体的に規定はされておらず、全ては政令に委ねられているところ、施行令百二十条は「防衛大臣は、自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。」と規定する。自衛隊法九十七条一項をもって、個人情報の提供などによりプライバシー権を制限する趣旨が明確にされているとはいえず、同規定をもって人権制限内容を政令に授権する趣旨の法律と理解するには無理がある。

○もし仮に、自衛隊法九十七条一項等を根拠規定として個人情報の提供を認めることになると、法令上、提供対象となる情報が何ら限定されていないため、住基四情報に限らず、当該対象者の家族構成、経済状態、健康状態など地方自治体が保有する自衛官募集に有益と考えられるセンシティブ情報についても無限定に対象とされる危険性がある。

平成十五年の報道によれば、当時石川県は、自衛隊石川地方連絡部と共に情報要請マニュアルを作成し「世帯主との続き柄および世帯主氏名」や「職業、健康状態など募集上参考となる事項」までも要請可能だと記載していた。また自衛隊山梨地方連絡部は、山梨県内の六十四市町村に中学卒業生名簿の提供を依頼していたことが明らかになっている。

また、個人情報の保護に関する法律第六十九条第一項では「行政機関の長等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない」として、「法令に基づく場合を除き」個人情報の提供を制限している。

研究者からは、「法令の定めとは市区町村に対して本来の目的外での提供を例外的に容認する旨の規定を指します。たとえば、災害対策基本法四十九条の十一は、一項で市町村長は個人情報につき内部の目的外利用ができる旨を定め、二項で「災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、地域防災計画の定めるところにより」外部の諸機関に名簿情報を提供するものとすると定めています。」、「個人情報保護条例にいう「法令等に定めがあるとき」とは、当該自治体が保有する当該情報を目的外に提供することができると定める法令がある場合のことで、これと先に述べた自衛隊法令の定め方とを比べると、その違いは誰の目にも明らかです。(略)市区町村の長の権限を定めていない自衛隊法施行令百二十条が、個人情報保護条例にいう「法令等に定めがあるとき」にあたるとはいえません。」(前田定孝三重大学准教授「市区町村による自衛隊への住基情報提供の違法性について」「住民と自治」二〇二二年二月号)という指摘もあり、自衛隊法施行令第百二十条が「法令に基づく場合」といえるかどうかについては疑義がある。

当該事務の在り方について、以下質問する。

 

一 個人情報保護法第六十九条第一項における「法令に基づく場合を除き」について、行政機関の長等が個人情報につき条文上、内部の目的外利用ができる旨を明示的に規定していない法令に基づき政府が個人情報を地方自治体に求めた事案は、自衛隊法施行令第百二十条に基づく事案以外に存在するか。

二 住基法関係法令では、唯一「提供」を認めている住基ネットに関しては、提供された個人識別情報の保護のために相当に詳細な規定が設けられているが、自衛官又は自衛官候補生の募集に関して、提供される本人確認情報の管理、利用、同情報の目的外利用の禁止、提供された本人確認情報の保護のための専門機関としての監視機関の設置と同機関による本人確認情報の保護に関する事項の調査審議権限の付与など、情報保護のための規定は設けられているか。設けられている場合は詳細を明らかにされたい。また、設けられていない場合はその理由を明らかにされたい。

三 自衛隊法第九十七条は雑則の章のなかで規定されており、その規定の文言上は「自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う」としか規定してない。ところで、前文で引用した最高裁平成二十五年判決では、委任立法(授権規定)による権利制限の趣旨、内容が明確に読み取れるかどうかの判断要素として条文の文言以外に立法過程の議論も踏まえることが必要と判示している。そこで、自衛隊法第九十七条の立法過程において、プライバシー権に関する議論、すなわち住基四情報など個人情報の提供を認めることとプライバシー権の調整、個人情報を保護するための提供された個人情報の取扱方法など、住基四情報の提供とプライバシー権保護の関係に関して立法過程で議論された事実があるか。あるとすればその内容を具体的に指摘されたい。更に、自衛隊法施行令第百二十条の趣旨について解説する文献によると同規定は「募集事務がスムーズに遂行されるよう、内閣総理大臣は、都道府県知事及び市町村長に対して、募集に対する一般の反応、応募者数の大体の見通し、応募年齢層の概数などに関する報告及び県勢統計等の資料の提出を求め、地方の実情に即して募集が円滑に行われているかどうかを判断」するための規定としている(「自由国民・口語六法全書」第二十三巻「防衛法」自由国民社、一九七四年)が、ここでも個人情報の提供などの趣旨には言及されていない。住基四情報は上記「募集に対する一般の反応、応募者数の大体の見通し、応募年齢層の概数などに関する報告及び県勢統計等の資料」のどの部分に相当するか。

四 令和二年閣議決定にあたり、住基四情報が憲法第十三条で保障されたプライバシー権の保護の対象になっていることを検討しているか。また、住基四情報を目的外に提供することは、プライバシー権保障に関する問題であると理解をしているか、政府の見解を明らかにされたい。

五 自衛官又は自衛官候補生の募集に関して、地方自治体が保有する住基四情報以外の個人情報、たとえば家族構成、経済状態、健康状態などの情報についても、防衛大臣は自衛隊法第九十七条第一項と同法施行令第百二十条に基づき「提出」を求めることは可能か。また、現在、それらの「閲覧」や「提供」を求めていく検討をしているか。政府の認識を示されたい。

六 政府は令和二年閣議決定において、自衛隊法第九十七条第一項と同法施行令第百二十条に基づき、自衛官又は自衛官候補生の募集に関して、地方自治体に対して住民基本台帳の一部の写しの提出を求めることが可能であるとしている。しかし住基法第十一条第一項には、国又は地方公共団体の機関は、住民基本台帳の一部の写しを「閲覧させることを請求することができる」とのみ規定されており、市区町村による目的外の利用や外部提供についての定めはない。住基法上のどの条項が根拠となって市区町村が住民基本台帳に記載された個人情報を「提出」できると解したのか、政府の見解を明らかにされたい。

七 令和三年通知に従って市区町村が氏名などの「住民基本台帳の一部の写し」を提供することは、これの「閲覧」しか認めていない住基法第十一条第一項に違反するのではないか。国が、違反しないと解釈し、自治体に「提出」を求めるならば、法令解釈権が国の行政機関に一元化される可能性があるが、これは、機関委任事務の廃止に伴い条例制定権や法令解釈権を拡大させた地方分権改革の趣旨にも反する事態と思われる。市区町村は独自の自主法令解釈権を持っているという認識で間違いないか。

八 自衛官又は自衛官候補生の募集に関する地方自治体の協力について、政府は従来「私どもの方から依頼をいたしましても、それは自治体としてこたえる義務がございません」(平成十五年四月二十三日衆議院個人情報の保護に関する特別委員会石破茂防衛庁長官答弁)、「事実上の要請ですから、要請を断ることは当然あり得ます」(平成十五年五月十九日参議院個人情報の保護に関する特別委員会片山虎之助総務大臣答弁)、「実施し得る可能な範囲での協力をお願いをいたしております」(平成二十七年三月二十六日参議院外交防衛委員会中谷元防衛大臣答弁)などと述べてきた。政府の見解は今も同じか。

九 令和三年通知については、「本通知は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十五条の四第一項に基づく技術的助言であることを申し添えます」とされている。「技術的助言」である以上、地方自治法第二百四十七条第三項に「国又は都道府県の職員は、普通地方公共団体が国の行政機関又は都道府県の機関が行った助言等に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。」とあるように、個人情報の「提出」に応じない市町村に対して、不利益な扱いは生じないという認識で間違いないか。

十 安倍総理大臣(当時)は、住民基本台帳の一部の写しを提出していない地方自治体に対して、「法令に基づく防衛大臣の求めに応じず、資料を提出していません」、「募集に対する協力の現状はまことに残念と言わざるを得ません」と述べたが(平成三十一年二月十三日衆議院予算委員会)、自衛隊法施行令第百二十条に基づく防衛大臣からの求めに対して、住民基本台帳法第十一条第一項の条文のとおり、住民基本台帳の一部の写しを「閲覧させる」形で対応している地方自治体に対して、当時の政府は非協力的であると評価していたのか。それとも、安倍総理大臣の個人的な見解を述べただけの発言か。また、現在の岸田総理大臣および政府の見解を明らかにされたい。

十一 防衛大臣からの資料提出の求めに対し、住民基本台帳の一部の写しを閲覧させる形で対応している地方自治体に対して、政府は今後も資料を「提出」するよう求め続ける方針か。また、各地方自治体の方針によって、今後も住民基本台帳の一部の写しを閲覧させる形での対応にとどめることも何ら法令に違反するものではなく、当然に認められると思われるが、この点について政府の認識を示されたい。

十二 平成二十六年度まで防衛省が「自衛官等募集があることを初めて知った募集広告等は何か」について質問した調査はあるか。最新の年度について、調査の概要(担当部署、実施年度、調査対象者、全回答数、経費等)及び「ホームページ」「親・親戚」などそれぞれの項目の回答率と順位を明らかにされたい。とくに、「高校生等に対する自衛官等募集ダイレクトメール」として国会でも議論されている「自衛隊地方協力本部の郵便物」について回答率と順位を明らかにされたい。もし調査資料がすでに破棄されている場合でも、過去の調査から、自衛隊の今後の活動に必要な知見が明らかになっているはずであり、その中で特に「自治体から募集対象者を特定する情報を得なければ、自衛隊員の募集活動が著しく困難になるかどうか」について得られた知見を明らかにされたい。

十三 「防衛省 令和二年の地方からの提案等に関する対応方針に対するフォローアップを終了した提案一覧」の各府省からの第一次回答欄には、「複写機等による複写は、住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第十一条第一項の「閲覧」の概念を超えるものであることから、同項の規定により、地方公共団体が、住民基本台帳のコピー等を提供することは認められない」と記述されている。ここでは住基法上「コピー等を提供することは認められない」としているにも関わらず、令和三年通知の「2 上記の規定の募集に関し必要な資料として、住民基本台帳の一部の写しを用いることについて、住民基本台帳法上、特段の問題を生ずるものではない」とする理由を明らかにされたい。

右質問する。