つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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<答弁書>Uber資料は精査が必要、と政府答弁――「ライドシェアについての河野太郎大臣の『相関関係』発言とUber Japan提出資料に関する質問主意書」

2023.12.22

国会ブログ質問主意書国会質問

2023/12/12(火)、「ライドシェアについての河野太郎大臣の『相関関係』発言とUber Japan提出資料に関する質問主意書」を提出しました。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/212/meisai/m212110.htm

→12/22(金)答弁書が閣議決定されました。

【答弁】参110辻元清美君(ライドシェアについての河野太郎大臣の「相関関係」発言とUber Japan提出資料に関する質問主意書)

政府は、Uber Japan社が行っている比較・分析方法に一定の意義があるとした一方、Uber Japan社が異なる年度を使ったりしている点については「精査が必要」と答えた。「一定の意義がある」のであれば、ぜひ必要な精査を行っていただきたい。ほぼ政府の公開資料を使った分析なので、時間のかかるものではないと考える。

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ライドシェアについての河野太郎大臣の「相関関係」発言とUber Japan提出資料に関する質問主意書

 

二〇二三年十一月二十七日の参議院予算委員会で、私の質問に対し、河野太郎デジタル行財政改革担当大臣は次の発言(以下「河野大臣発言」という。)をしている。

○そもそも日本と諸外国において性犯罪の件数、発生件数等が違いますから、それを同一のものとして考えるということはできないと思います。

○自動車の中あるいはタクシーの中で起こっている犯罪とそれぞれの国全体として起きている犯罪の数、これには相関関係がありますので、海外で危ないものがそのまま日本で危ないということには一概にはなりません。

また、ライドシェアの利用に関連した犯罪行為について、私が提出した「ライドシェアをめぐる世界各国の犯罪事案等と禁止・規制事例に関する質問主意書」(第二百十二回国会質問第一八号)に対し、政府は次の答弁している。

○現時点で把握している限りでは、(略)「日本のタクシーと米国の主要ライドシェア企業の比較として、輸送回数では、日本のタクシー約五・六億回、米国主要ライドシェア企業が約六・五億回と、おおむね似たような数字となっておりますが、例えば、令和二年における(略)性的暴行件数につきましては、日本のタクシーでは十九件、米国ライドシェア企業におきましては九百九十八件」(以下「答弁一」という。)

内閣府規制改革推進室、外務省、国交省、警察庁によれば「外国におけるライドシェアや日本国内のタクシーで起きている性犯罪の発生件数や発生率と、それぞれの国全体として起きている性犯罪の発生数や発生率の相関関係」について政府自身が調査・分析した資料は現時点で存在しない。一方で、内閣府の規制改革推進会議に提出された同様の資料は、以下が存在する。

○内閣府規制改革推進会議第一回地域産業活性化ワーキング・グループ(以下「WG」という。)(二〇二三年十一月六日)「諸外国におけるライドシェア法制と安全確保への取り組み」(Uber Japan社(以下「UJ社」という。)提出、以下「資料①」という。)

○同第二回地域産業活性化WG(二〇二三年十一月十三日)「「地域交通に関する資料のご提出について(依頼)(内閣府規制改革推進室(十一月七日))」への回答と検証」」(一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会)、「諸外国におけるライドシェア法制と安全確保への取り組み(追加)」(UJ社提出、以下「資料②」という。)

河野大臣も出席した第一回地域産業活性化WGにおいてUJ社は「今回御説明するのも、諸外国の事例や客観的なデータを御提供し、国内における精度の高い議論に貢献するため」「本来はアメリカにおけるタクシーとライドシェアの犯罪発生件数を比較するべきですが、アメリカにおけるタクシーの被害件数は公表されていません。そのため、ここでは左側でアメリカのUber乗車中及び日本のタクシー乗車中の性犯罪の発生比率を比較、右側でアメリカと日本の国全体の発生比率を比較しています。左では強制性交等及び強制わいせつの件数、右側では強制性交等のみの件数となっているのは、アメリカの国全体の強制わいせつの発生件数が公表されていないため」としている。

他の委員の、別の政府(こども家庭庁)資料では性犯罪・性暴力の発生件数の差が二〇一九年に日本と米国で八・七倍となっており、ライドシェアの性犯罪発生率が五倍になる、という指摘に対し、UJ社は「あちら(※こども家庭庁)の表ですと、日本の発生件数は強制性交等及び強制わいせつになっておりまして、アメリカですと強制性交等のみになっているというところで、アメリカの全体件数が日本と比較すると純粋な比較ではなく、小さく出ていると理解しております。そのため、私どものスライドでは強制性交等のみの件数に日本も絞りまして、比較をしている」(以下「UJ発言」という。)と説明した。

以下、UJ社が提出した資料①六頁のデータと分析結果である。なお、UJ社は注で「米国の強制わいせつ発生件数は公開されていないため、国全体の比較は強制性交等の件数を使用」と述べている。

○乗車回数十万回当たり強制性交等+強制わいせつ発生率(二〇一九年、米国はUber、日本はタクシー) 米国 〇・一五三五(乗車回数六・五億回、発生件数九百九十八件)、日本 〇・〇〇三四(乗車回数五・六億回、発生件数十九件)→米国/日本 四五・二倍(以下「比較1・補正前」という。)

○人口十万人当たり強制性交等発生率(二〇一九年) 米国 四三・五(発生件数十四万三千二百二十四件)、日本 一・一(発生件数一千四百五件)→米国/日本 三九・二倍(以下「比較2」という。)

UJ社は「四五・二倍(比較1・補正前)」と「三九・二倍(比較2)」を比較、以下分析している。「ライドシェア乗車中の犯罪発生率は国の治安事情を反映―米国Uberと日本のタクシーにおける強制性交等・強制わいせつの発生率の差は、米国と日本の社会全体における強制性交等の発生率の差と同程度と考えられる。Uber乗車時の性犯罪率が際立って高いわけではない」(以下「Uber分析」という。)。

しかし、UJ社が示す出典を確認したところ、UJ社が提出した「乗車回数十万回あたりの強制性交等+強制わいせつ発生率(二〇一九年)」である「米国 〇・一五三五(乗車回数六・五億回、発生件数九百九十八件)」「日本 〇・〇〇三四(乗車回数五・六億回、発生件数十九件)」は、二〇二〇年の数字であった。二〇一九年は「米国 〇・二〇一九(乗車回数十四億回、発生件数二千八百二十六件)」「日本 〇・〇〇二五(乗車回数八・八億回、発生件数二十二件)」が正しく、したがって米国/日本はUJ社が算出した「四五・二倍」でなく「八〇・七倍」である。そのため、正しい二〇一九年の数字である「八〇・七倍」と「三九・二倍」を比較すれば、二・一倍となり、決して「同程度」とは言えないと考える。

さらに大きな問題がある。第二回地域産業活性化WGにおいて、全国ハイヤー・タクシー連合会が指摘しているように、UJ社が提出した「四五・二倍(比較1・補正前)」と「三九・二倍(比較2)」は、車内と全体における性犯罪の発生率を算出する基準が異なっており、「強制性交等+強制わいせつ発生率」か「強制性交等発生率」のいずれかに統一しなければ、正しい比較ができない。しかし「UJ発言」からは、基準が異なれば母数が変動するため、比較時に有意な結論を得られないことを理解していることは明白である。それにも関わらずこうした資料を提出した理由を明らかにしなければ、今後UJ社が提出する資料は検証が必要となり、「精度の高い議論に貢献」どころか議論自体が成立しない可能性がある。

UJ社が規制改革会議に出した考え方と、答弁一で示された考え方をもとに、基準を統一して整理すると以下の通りである。なお、答弁一における「性的暴行」は「強制わいせつ」と「強制性交等」の合計を指すことは、警察庁の資料から明白である。また、答弁一における「米国の主要ライドシェア企業」の数字の根拠は「Uber US Safety Report」の「Sexual assault(性的暴行)」と考えられる。以下発生率は、同資料から算出した。

○件数・輸送回数 二〇一九年性的暴行計:二千八百二十六件(うち強制性交等:二百四十七件)、輸送回数:約十四億回。二〇二〇年性的暴行計:九百九十八件(うち強制性交等:百四十一件)、輸送回数:約六・五億回

○乗車回数十万回当たり発生率 二〇一九年性的暴行計:〇・二〇一九、強制性交等:〇・〇一七六。二〇二〇年性的暴行計:〇・一五三五、強制性交等:〇・〇二一七

一方、日本国内について、答弁一における「日本のタクシー」の数字の根拠は「警察庁・犯罪統計書、罪種別・発生場所別・認知件数「タクシー内」」と考えられる。以下発生率は、同資料から算出した。

○件数・輸送回数 二〇一九年性的暴行計:二十二件(うち強制性交等:ゼロ件)、輸送回数:約八・八億回。二〇二〇年性的暴行計:十九件(うち強制性交等:ゼロ件)、輸送回数:約五・六億回

○乗車回数十万回当たり発生率 二〇一九年性的暴行:〇・〇〇二五、強制性交等:〇・〇。二〇二〇年性的暴行:〇・〇〇三四、強制性交等:〇・〇

また、現在警察庁のホームページに開示されている二〇〇四年~二〇二二年のデータ等から以下が算出される(二〇〇三年以前は「タクシー内」の項目がない)。

○件数・輸送回数 二〇〇四年~二〇二二年性的暴行計:二六七件(うち強制性交等:十六件)、輸送回数:約百九十九・七億回

○乗車回数十万回当たり発生率 性的暴行:〇・〇〇一三、強制性交等:〇・〇〇〇〇八

また、国全体の性犯罪数については、法務省・令和四年版犯罪白書「各国における性暴力の発生件数・発生率の推移」があり、米国内の性犯罪(「Sexual violence(Rape)」のデータ)について下記の記載がある。

○米国内の発生件数 二〇一九年性的暴行計:記載無し、強制性交等:十四万三千二百二十四件。二〇二〇年についてはいずれも記載無し

○米国内の人口十万人当たり発生率 二〇一九年性的暴行:記載無し、強制性交等:四三・五。二〇二〇年についてはいずれも記載なし

また、内閣府・男女共同参画白書「強制性交等・強制わいせつ認知件数の推移」には、日本国内の性犯罪について下記の記載がある。

○日本国内の発生件数 二〇一九年性的暴行計:六千三百五件、強制性交等件数:千四百五件。二〇二〇年性的暴行計:五千四百八十六件、強制性交等件数:千三百三十二件

ここに、当該年度七月一日の人口推定値を用いて計算すると、下記のことが分かる。

○日本国内の人口十万人当たり発生率 二〇一九年性的暴行:五・〇、強制性交等:一・一。二〇二〇年性的暴行:四・四、強制性交等:一・一

答弁一を基準に、性的暴行・強制性交等・強制わいせつを区別し、年度と算出基準をそろえた場合、UJ社の提出したデータは以下の通り補正される(二〇一九年の米国全体の強制性交の発生件数・発生率は不明、かつ性的暴行総数は二〇一九・二〇二〇年ともに存在しない。)。

○乗車回数十万回当たり強制性交等発生率(二〇一九年、米国はUber、日本はタクシー) 米国 〇・〇一七六(乗車回数十四億回、発生件数二百四十七件)、日本 〇・〇(乗車回数八・七億回、発生件数ゼロ件)→米国/日本 比較不能

○乗車回数十万回当たり強制性交等発生率(米国は二〇一九年Uber、日本は二〇〇四~二〇二二年タクシー)米国 〇・〇一七六(乗車回数十四億回、発生件数二百四十七件)、日本 〇・〇〇〇〇八(乗車回数百九十九・七億回、発生件数十六件)→米国/日本 二二〇・二倍

○人口十万人当たり強制性交等発生率(二〇一九年) 米国 四三・五(発生件数十四万三千二百二十四件)、日本 一・一(発生件数千四百五件)→米国/日本 三九・二倍

このことから、米国Uberと日本のタクシーにおける強制性交等の発生率の差(二二〇・二倍)は、米国と日本の社会全体における強制性交等の発生率の差(三九・二倍)と比較して五・六倍と算出され、「同程度」とするには無理があると考えられる。

UJ社の提供データは、Uber社のレポート以外は政府の公開資料をもとに作成されており、客観性が高いという印象を与えている。第一回地域産業活性化WGでは「性犯罪や安全性の件は、結局要するにデータ上はほとんど変わらない(略)Uberさんのデータから出ていると思います」「性犯罪等の安全面の差異は実はないのではないかというのが先ほどデータで示されました」という委員発言もあり、UJ社の提供データとUber分析が一人歩きして使われている現状がある。内閣府規制改革推進会議は、UJ社の姿勢と提出データへの疑義を看過すべきでないと考える。また、UJ社は資料②で「弊社が提示した資料の目的は、サービス提供国の犯罪発生件数(絶対数)のみに基づいた各国の治安情勢の違い等を考慮しない比較の問題点を指摘すること」「一つの数字や比較が一人歩きをすることがないよう、多面的なデータを見て検討材料とすることが重要」と述べている。まったく同感であり、以下質問する。

 

一 ライドシェアの議論に対する河野大臣発言について

1 「そもそも日本と諸外国において性犯罪の件数、発生件数等が違いますから、それを同一のものとして考えるということはできない」上、「自動車の中あるいはタクシーの中で起こっている犯罪」と「それぞれの国全体として起きている犯罪の数」に「相関関係」があると述べているが、そうであれば「自動車の中あるいはタクシーの中で起こっている犯罪の発生率の差」と「それぞれの国全体として起きている犯罪の発生率の差」を比較・分析するUJ社のアプローチは意味があるという認識か。

2 河野大臣発言における「相関関係」について、政府は過去に調査を行ったことがあるか。あれば明らかにされたい。もしなければ、今後調査を行う予定があるか明らかにされたい。

3 内閣府の規制改革推進会議に業者等から提出された「外国におけるライドシェアや日本国内のタクシーで起きている性犯罪の発生件数や発生率と、それぞれの国全体として起きている性犯罪の発生数や発生率の相関関係」に関する資料にはどのようなものが存在するか。

 

二 私が提出した質問主意書に対する「答弁一」について

1 令和二年における性的暴行件数について、日本のタクシー「十九件」の出典は「警察庁・犯罪統計書 令和二年の犯罪」の「罪種別・発生場所別・認知件数「タクシー内」」で間違いないか。また、十九件のうち「強制性交等」は何件か。

2 令和二年における性的暴行件数について、米国ライドシェア企業「九百九十八件」の出典は「Uber US Safety Report」で間違いないか。また、九百九十八件のうち「強制性交等」にあたる事件(Non-consensual sexual penetration)は何件か。

3 日本のタクシーと米国の主要ライドシェア企業の比較として、二〇二〇年における各輸送回数、性的暴行件数、そのうちの強制性交等及びそれに相当する項目の件数を明らかにされたい。様々な数字があることを鑑みて、上記1及び2で示した文献資料を用いていただきたい。

 

三 UJ社が内閣府規制改革推進会議に提出したデータ「四五・二倍(比較1・補正前)」と「三九・二倍(比較2)」と、これに基づくUber分析について

1 性的暴行・強制性交等・強制わいせつのカテゴリーが混在して計算されていることは間違いないか。

2 同じ年度のデータが元資料にあるにも関わらず、異なる年度が用いられていることは間違いないか。

3 UJ社が提出した「乗車回数十万回当たり強制性交等+強制わいせつ発生率(二〇一九年)」は「二〇二〇年」の間違いである。正しく二〇二〇年の数字を用いれば、米国/日本は「八〇・七倍」となり、「米国Uberと日本のタクシーにおける強制性交等・強制わいせつの発生率の差は、米国と日本の社会全体における強制性交等の発生率の差」は二・一倍となるはずである。UJ社が、このような異なる基準を用いた数値で算出した資料を提出した理由は何か。その点、政府や座長はUJ社に確認したか。

4 「米国Uberと日本のタクシーにおける強制性交等・強制わいせつの発生率の差は、米国と日本の社会全体における強制性交等の発生率の差と同程度と考えられる」というUber分析は政府も同じ認識か。

5 「Uber乗車時の性犯罪率が際立って高いわけではない」というUber分析は政府も同じ認識か。

 

四 二〇一九年の米国ライドシェアが強制性交等の発生率〇・二〇一九に対して、日本のタクシーは発生率ゼロ、参考値で二二〇・二倍となる。一方米国と日本の社会全体における強制性交等の発生率の差は三九・二である。米国Uberと日本のタクシーにおける強制性交等・強制わいせつの発生率の差と、米国と日本の社会全体における強制性交等の発生率の差を比較すると二〇一九年は五・六倍だが、これは「同程度」という認識か。「同程度」と言える場合は根拠を示されたい。

 

五 UJ社の姿勢について

1 提供データについては、政府として検証を行い、今後の規制改革会議の議論に資するデータかどうかを明白にする必要があるのではないか。

2 データの客観性に疑義がでるようであれば、UJ社に資料の再提出を求めるか、提出資料として認めないなどの判断をすべきと考えるがいかがか。

3 当該データの一人歩きを避けるため、規制改革推進会議HPから削除すべきではないか。

 

六 UJ社は「今回御説明するのも、諸外国の事例や客観的なデータを御提供し、国内における精度の高い議論に貢献するため」と述べているが、UJ社は「客観的なデータを御提供」したといえるのか。また、「精度の高い議論に貢献」していると考えるか。

 

七 UJ社が提出した資料②について

1 同社が内閣府規制改革推進会議に提出したデータ「四五・二倍(比較1・補正前)」と「三九・二倍(比較2)」は、「サービス提供国の犯罪発生件数(絶対数)のみに基づいた各国の治安情勢の違い等を考慮しない比較の問題点を指摘」するという目的を果たしているか。むしろ比較できないものを比較して、議論を混乱させたように思うがいかがか。

2 「一つの数字や比較が一人歩きをすることがないよう、多面的なデータを見て検討材料とすることが重要である」とあるが、すでに同社の提出データ「四五・二倍」と「三九・二倍」の「比較」を「一人歩き」させてしまっているとしたら問題ではないか。そのような委員を選出し、提出データを検証することもなく政府のHPに掲載し続けている内閣府規制改革推進会議の責任は重いと考えるがいかがか。

右質問する。