つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

活動報告・国会質問・質問主意書

提言型政策仕分け<その2>「入りにくく、出やすい大学へ」「貧困の再生産を断ち切ろう」

2011.11.29

国会ブログ

午前中の「教育」はきわめて議論の幅が広く、拡散しがちなテーマだ。論点は以下の通り。
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教育(大学):大学改革の方向性のあり方
①日本の大学は世界に通用するのか?
・大学の総収入・総支出は増加しているのに、世界の中で日本の大学のレベルは低下しているのではないか。
・国際的な大学ランキング(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)で、100位以内に入った日本の大学は2つのみ。
・国立大学生一人当たりの公財政支出などはG5と比較しても遜色ない。
②日本の大学は多すぎるのか?
・少子化の傾向にも関わらず、大学数や入学定員、教職員数が増えているのではないか。→少子化で18才人口は減少してきているが、私立大の定員割れは約4割。
・国立大学は学生数が増えない中でも、教職員数が増加。
・近隣に同じ工学系や教員養成系などの国立大学が存在しており、少子化・過疎化の中で共倒れのリスクが懸念される。
・定員割れによる学力低下などや赤字経営の大学の増加などをどう考えるか。→「大学全入」は大学の学力低下につながっているのでは。
③大学は人材を育てられるのか?
・専門教育を行っても効果が上げられない例が多く見られる。→法科大学院の定員充足率は8割を切っており、新司法試験の合格率は24%を切った。
・公立学校の新規教員採用者のうち教員養成系大学・学部のしめる割合は3割程度まで減少。卒業生のうち教員になった人の割合は約45%。
④大学はどのように改革すべきか?
・国民の大学教育に対する評価は低い。→「日本の大学では世界に通用する人材を育てることができていると思うか? 「できている」26%、「できていない」63%」。
・大学倒産時代に備え、統廃合や大学間連携、産学連携などの多様な自己財源確保が必要。
・大学が社会の実情と乖離し、社会のニーズに十分な対応ができていないのは、大学改革が進んでいないからではないか。どのように改革を進めるべきか。
何をもって「大学の国際レベル」を図るかは難しい。また、すべての大学が「国際的な人材を育てる必要があるか」という点も議論がある。今回の政策仕分けでは、大学の「研究分野」にはあまりふみこまず、「教育分野」について議論が進められた。
参考人の松本紘京都大学総長は「旧国公立大学への寄付は、税額控除になっていない。収入増を考えて、国民の負担に応えることをやっているが、規制の一部が緩和されていない」と指摘。私は「私立大学については、税額控除が認められるような法改正を実現させた。経営と学問を両立させることは困難だが、経営の緊張感が学問にもはねかえり、学問の成果があれば寄付も集めやすくなる。私学では今年実現したが、税額控除など国公立大学が寄付を集めやすくするための税制の問題は、今後、政治の場で議論されていく」と述べた。この点は「とりまとめ」にも反映されたため、私の所属する「新しい公共推進会議」などでも議論を進めていきたい。
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また、階委員が「私たちのころ、大学は入りにくく出やすい、と言われていた。いまの大学は入りやすく、出やすくなっているのではないか」と問題提起。私も同じ問題意識だ。「社会人をふくめ、みなが勉強できる機会が増えるのはいい。だけど、大学が経営安定化のために『授業料を払ってもらえるならどうぞ』と学生をとることだけを考えると、学位の質は落ちていく」と、「入りやすく、出にくい大学へ」と転換を訴えた。また格差が広がっている現状で、「大学経営が厳しくなることで授業料があがり、やる気があっても大学へいけない子どもたちが出てきている」と悪循環に陥っている現状についてただした。参考人の白井克彦早稲田大学前総長は「そうなっている。また大学が入りやすくなったのも事実で、学生の意欲を減らしたツケで大学は苦労している」と発言。
法科大学院については、私ははっきりと「誰も幸せになっていない制度。根本的に見直すべき」と主張。「小泉政権のときに、日本社会の形そのものをアメリカ型のグローバル化に合わせようとしたが、格差だけが広がった。その一連の流れの方向で司法制度改革が議論され、法科大学院が生まれた。しかしいま、東日本大震災を受けて、そこから見直さなくては。文部科学行政と法務行政がしっかり連携をとり、『制度は作ったけれど失敗だった』という危機感から見直し議論をスタートしなければ」と訴えた。
大学改革については、キャリアパスを多様化するとりくみについて議論が出た。私は「東大の大学院を出て、貧困問題などにとりくむ若者たちが出てきている。東日本大震災でもいろんな大学の学生がボランティアにきていた。問題が山積しているこの日本で、地域のリーダーを生み出すためには、社会の課題解決につながる活動も、大学評価の指標にしていくべきではないか」。これは、研究や教育といった「大学の機能別分化を進めよう」という提案にもつながる議論だ。
午前中で終わるはずの議論が、90分オーバーして終了。論点ごとに私たち「仕分け人」」がシートに記入し、それを「取りまとめ役」の玉木議員がまとめて発表。
<評価結果の概要>
大学の国際通用力の向上の在り方については、「教育分野」における向上などその具体的な達成目標と達成時期並びにその評価基準について明確化を図る。まずは各大学による自己改革によってその実現を図る。
少子化傾向の中での大学経営の在り方については、教育の質の確保と安定的な経営の確保に資するため、大学の教育の内容、例えば、生涯教育の拡充などへの転換を含む自律的な改革を促すとともに、寄付金税制の拡充等自主的な財源の安定に向けた取組を促す仕組みを整備する。法科大学院の需給のミスマッチの問題については、定員の適正化を計画的に進めるとともに、産業界・経済界との連携も取りながら、法科大学院制度の在り方そのものを抜本的に見直すことを検討する。
大学改革の全体の在り方については、国は大学教育において如何なる人材を育成するかといったビジョン及びその達成の時期を明示した上で、その実現のため第三者による評価などの外部性の強化に加え、運営費交付金などの算定基準の見直しなどの政策的誘導の在り方について検討する。加えて政策評価の仕組みの改善についても併せて検討する。