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活動ブログ

つじとも通信VOL.28:大阪から希望の受け皿となる政治を

2013.3.4

巻頭言

「最後まで、ハラハラしたよ」という声をたくさんいただきました。昨年の総選挙では、「当確」が深夜まで出ず、全国の支持者のみなさまにご心労をおかけしました。
私の選挙区・大阪10区は「日本一の激戦区」と言われ、今までの選挙で一番キツイ選挙でした。民主党への逆風だけでなく、橋下徹大阪市長の本拠地・大阪では、日本維新の会の猛烈な乱気流が吹き荒れたからです。「子どもたちにつけを回すのか、減らすのか。原発依存で利権の維持か、脱原発・自然エネルギーで新産業創出か。アジアとの対決を煽るのか、対話と共生を貫くのか。世襲政治の復活か、市民政治の実現か。敵を作って叩く『劇薬』か、生活密着の『漢方薬』か。私たちの『未来の選択』です」、と力のかぎり訴えました。
その結果、大阪で仲間全員が倒される中、接戦に持ち込み、小選挙区では破れましたが比例区で当選、再び国会に戻していただくことができました。
高槻・島本で投票に行かれた有権者の3分の1、6万5411人の方々が投票してくださり、そして全国のみなさんに「安倍首相が再び誕生しようとしている今こそ、ツジモトが国会に必要だ」と応援していただいたおかげです。
私は、いつも以上に自分の議席の責任の重さをズシリと感じています。
1月28日から通常国会が始まりました。
私は民主党・副幹事長として、党の再建(=リベラル勢力の結集)、そして予算委員として安倍政権との論戦の最前線に臨みます。
安倍政権が「ウルトラ・タカ派」であるだけでなく、石原慎太郎氏や西村眞悟氏が国会に戻ってきました。
そして、格差拡大の「戦犯」と言われていた竹中平蔵氏も経済政策の意思決定の中枢に帰り咲きました。
私は彼らに日本を「破壊」されるのではないか、という危機感でいっぱいです。
だから、こんな時だからこそ、政治の場でのリベラル勢力の結集が何より必要なのです。そのためには、まず、民主党の再生です。
今回の選挙の敗因の一つは、民主党の「立ち位置」がはっきりしていなかったことだと思っています。
アメリカ大統領選挙では「オバマVSロムニー」、フランス大統領選挙では「オランドVSサルコジ」、韓国大統領選挙では「文在寅VS朴槿恵」。どこも「リベラルVS保守」の構図がくっきりしています。
そしてアメリカの「ティーパーティー」のような日本維新の会も出てきた今、日本の「中道からリベラル」の政治勢力の重要性が増しています。民主党は「立ち位置」をそこに定めるべきです。
そして、現実の壁に突き当たった時、それを超える知恵やしたたかさ、しぶとさを鍛え直さなければなりません。
普天間飛行場移設問題や原発問題という日本にとって最も大きな既得権益とそれを擁護する官僚の岩盤を突破することができませんでした。
しかしそうした限界を、外から批判するだけではなく、中で格闘して思い知ったことは、今後、その岩盤を崩す上での大きな教訓となりました。岩盤が高ければ穴を掘ってみるなど、柔軟な発想で突破できるかもしれない。政権に入ったときに、一度は泥だらけになる覚悟をしていたので、この厳しい経験を生かして、これからが勝負です。
市民運動やNPOや労働運動との連携のあり方も再構築が必要です。
政治には忍耐力が必要です。スローガンを叫び、すぐに結果を求めるだけでは実質的に政治を動かすことはできません。
民主党が「原発ゼロ」を決める過程は、現実との格闘でした。総理大臣が「2030年代にはゼロ」と表明したことは日本の政治ではありえないことでした。少しでも前倒ししようと政権内部で七転八倒していましたが、市民運動の側からは「今すぐゼロと言えないのはけしからん」と批判されました。
一緒に現状を動かそうと後押しするのではなく、言いやすい相手を攻撃する。これでは、本当の敵は倒せないのではないでしょうか。その結果、原発推進の方に戻してしまったら元も子もありません。 
NPOとの連携で成果を出せたこともありました。その一つが、政権交代後自殺者が減少したことです。昨年は27766人、15年ぶりに3万人を割りました。
菅首相のときに、特命チームを官邸につくり、湯浅誠さんなど現場を熟知するNPOの人たちに政府に入ってもらい、連携して政策を実行した結果です。最初は官僚たちとのチームワークがうまく機能しませんでしたが、しだいに信頼関係が生まれていきました。市民と政治の「したたかな連携」、チームプレーをさらに強めるのが国会に戻していただいた私の役割である、と自覚しています。
安倍政権はどんな政治を進めようとしているのか。自己責任・弱者切り捨て・強者保護・格差拡大・原発推進・軍事優先・戦争美化・憲法改正…。
●問題点1 弱者切り捨て・強者保護
安倍政権の象徴的な政策が生活保護基準の切り下げです。特に影響を受けるこどもたちが心配です。不正受給の問題と基準の問題は切り分けるべきです。「生活保護はもらいすぎ」という人たちは、生活保護基準を切り下げることで、受給していない年収200万~300万円の低所得者層も負担増になることを、「もらいすぎ」と言っている人がどれだけご存じでしょうか。
例えば最低賃金の決定にあたり、生活保護基準は重要な要素です。最賃を引き下げる口実になりかねません。また、住民税を免除する基準も下がる可能性が高いのです。
何より、直撃を受けるのが子どもたち。生活保護を受けている家庭の子どもは約29万人。いま生活保護を受けていない世帯でも、自治体などの「就学援助制度」を活用して学用品や修学旅行の積立をしている子どもたちは141万人。生活保護基準が引き下げられれば、就学援助への影響が出て7万5000人の子どもたちが対象外になる、と懸念の声が続出したため、安倍政権はあわてて「就学援助には影響が出ないようにする」としましたが、本当に波及しないかどうかはわかりません。①受給世帯の子どもたちにかけられる教育費用が低減する②生活保護から外れる世帯の子どもたちへの影響が大きい、これらは変わりません。
貧しい家庭の子どもたちが学ぶ機会を奪われかねない一方で、安倍総理は祖父母が孫に用意する教育資金について、最高1500万円までは贈与税をかからなくする、という金持ち優遇減税を打ち出そうとしています。
貧困と低学力の世代間連鎖は、はっきりとした数字で出ています。まさに安倍総理は教育格差の拡大と貧困の再生産を推し進めようとしているのです。
●問題点2 格差拡大
安倍首相は、金融の操作でお金をどんどんまいて、それで円安に誘導すると言っていますが、働く人にまで回らないところ、目詰まりしてしまっているところが問題なのです。
外国人投資家などが株で大儲けし、大企業の内部留保が増えるだけなのでは。 インフレで物価が高くなる一方、給料は上がらず庶民の生活は苦しくなるのでは。その結果、格差がどんどん広がる。そういう最悪の事態が近い将来、到来するのでは。
そして、そうなった時に外に敵を作ってナショナリズムをあおり、乗り切ろうとするのでは。
●問題点3 原発推進
安倍首相の所信表明演説には、「安全神話」と「原子力ムラ」のド真ん中にいた自民党政権時代の反省の弁は一言もありませんでした。
第一次安倍政権時代の経済産業大臣は今の甘利経済財政担当大臣。当時、「原子炉建屋は地球上に存在するすべての建造物の中で最強であることは間違いない」「日本の原子力発電は100%安全」という発言を繰り返した。そして「津波による電源喪失はない」という答弁書を閣議決定していた事実に責任を感じていないのでしょうか。
安倍首相の地元・山口の上関原発の新規建設を民主党政権では認めてきませんでしたが、安倍首相は認めるのではないか、と現地では不安が広がっています。
●問題点4 軍事優先
さっそく安倍首相は集団的自衛権の行使を検討する、と言い出しました。
北朝鮮などがアメリカに向けてミサイルを撃ったような場合に日本から撃ち落とすことができるようにすると言っています。
この行為は憲法に抵触する集団的自衛権の行使になるだけではなく、技術的に無理だと防衛省も認めているのです。
一国の首相が、物理的に出来もしないことを検討すると言い張っていることは恥ずかしいかぎりです。
集団的自衛権の行使の本質は、イラク戦争のようにアメリカが戦争を始めた時、日本も自衛隊を派遣し参戦できるようにするということなのです。
アルジェリアの人質事件では、10名もの方が命を落としました。本当につらい事件です。しかし、この事件を受けて「いますぐ自衛隊法を改正すべきだ」という意見が噴出していますが、国際的な現実を知らない議論です。
主権国家はどこも、たとえ「自国民の保護」であったとしても他国の軍隊を国内には入れません。
もし日本国内のテロで外国人に被害が出た場合、被害国からその国の国民を守るため武装した軍隊を日本に入れろと言ってきても、日本は拒否するでしょう。どの国も基本的に同じです。   邦人保護で自衛隊が他国の国内で輸送などの活動できるようにしたいと安倍首相たちは言い始めていますが、こちらも国際社会ではそもそも受け入れられないことなのです。
アルジェリアの事件の背景には、石油メジャーによる資源の簒奪という構図があり、日本が一枚かんだと見られているのです。かつての日本は中東諸国からの評判が極めて高く、「日本は別」と思われていました。その評価が下がり、日本人が標的になり始めたきっかけが、イラク戦争への参加です。
もしも日本が集団的自衛権の行使を認めて、中東のどこかの国との戦争にアメリカと共に突っ込んでいけば、日本のエネルギー戦略は危機に陥ります。
アメリカともにベトナム戦争に突っ込んだ韓国は、いまもベトナム人から恨みを持たれています。もしも平和憲法がなかったら、日本も同じ道をたどっていたはず。今日の経済発展があったかどうか・・・。
●問題点5 戦争美化
村山談話や河野談話の見直しを口走る安倍政権の右傾化に対し、アメリカをはじめとする西側諸国も警戒感を強めています。
私は、当時の安倍総理に従軍慰安婦問題についての質問主意書を出しました。それに対し、3月16日に「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」という答弁書が出されて、海外メディアで一斉に報じられました。当時のシーファー米国大使が同日、「強制的に売春をさせられたのだと思う」という発言をし、韓国政府も遺憾の意を表明しました。オランダ人の慰安婦も確認されているので、オランダの首相が閣議で激怒して外相が日本政府に説明を求めました。国際問題になったわけです。
その後、アメリカ合衆国下院本会議において、「慰安婦問題」について日本政府が歴史的責任を認め、公式に謝罪するよう求める決議が採択されました。EUやアジアでも、次々に非難決議があがりました。この問題は、引き続き追及していきます。日本が戦後進めてきた外交政策を大転換する、と受け取られているからです。日本はアジアだけでなく国際社会から孤立してしまいます。
●問題点6 憲法改正
憲法改正要件を衆参議員の3分の2から2分の1の賛成に緩和しようとしています。
政権交代時代に入った今、2分の1で憲法が変えられるようになると、政権が変わるたびに憲法を変えることが可能になります。そうなれば、政治はさらに不安定になります。
自民党の新憲法草案にいたっては、国防軍問題などを指摘する以前に、そもそも憲法といえるシロモノではありません。
立憲国家では、国民が権力を縛るものが憲法であるというのが国際的常識。しかし、自民党の草案では国民に守らせる規範になっているのです。
国連などでアノ自民党草案を発表したら、国際的に笑いものになるでしょう。
私は、政治の役割というのは、貧困と戦争をなくすこと、つきつめればその二つだと考えています。そして、子どもたちが未来に希望を見出せるようにすることが、何よりの仕事です。
安倍政権はその逆行を進もうとしているように見えます。
私は、予算委員会で、これらの問題を追及していきます。
そして、本当に日本が立ち行かなくなる前に、希望の受け皿となる政治勢力を再構築しなければなりません。
それが焼け野原のようになった国会で貴重な一議席をいただいた私の仕事、と覚悟を決めています。