つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

活動報告・国会質問・質問主意書

続・NPO議員連盟訪米報告

2013.10.8

今回の訪米ではワシントン、メリーランド、ニューヨークでNPO関係の14団体を訪問、政府サイドとNPOの両サイドからの意見が聞けた。
アメリカでは小さなNPOだけでなく、学校や病院も「非営利団体」として税制の優遇などは同等に取り扱っている。
さて、前回のブログではワシントン報告をしたので、今回はその後。
自治体=州政府はどのようにNPOを支援しているのかも大事なポイントだ。そこで、メリーランド州政府の公益財団課の担当者の話を聞くために、ワシントンから車で1時間あまりの州都アナポリスへ向かった。
メリーランド州だけでなんと18000のNPOがあるという。しかも、市民からNPOについて相談があれば、自治体の職員がどこにでも飛んで行くという。また、寄付を勧めるための講演を行ったり、「ギビング・ワイズリー」でどこに寄付をすればいいのかという市民や企業の相談にものっている。NPOの申請手続きもこの課が担当。不正運用のチェックもおこなっている。
「何人で業務に当たっているのですか」と質問すると「4人」との答えに驚く。この日はその内の3人が対応してくれた。
さらに州政府職員が700団体に寄付の促進を呼びかけ、今年は340万ドル集まったという。日本とはエライ違いやなぁ。
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メリーランド州の州旗と公益財団課の担当官たちと
続いてボルチモアヘ移動し、ジョンホプキンス大学へ。非営利セクター研究の世界的な第一人者、レスター・サラモン教授にお会いする。サラモン教授は私たちのためにパワーポイントまで用意してくれていた。世界銀行でも講演したばかりらしい。
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レスター・サラモン教授
私は、経済のグローバリゼーションでさらに先鋭化した「私益資本主義」が世界的に格差を拡大させ、社会に歪みをもたらしていると考えている。そしてこの歪みを市場の原理の中で正していくために、ソーシャルビジネスなどに注目しているのだ。社会主義ではなく、市場の原理の中で変革していく、いわゆる「公益資本主義」だ。そして「共益社会」を作るためにNPOの役割が大きいと考えて行動してきた。
サラモン教授も同じ見解だった。世界的にも同じ方向を目指す人たちが増えてきている、と実感。
ボルチモアからは高速列車「アムトラック」でニューヨークへ。
ニューヨークでは4団体と会合。まず、「MDRC」を訪問した。
この団体は日本でも新聞で紹介されている。”ソーシャルインパクトボンド”という新しいチャレンジをNPOとニューヨーク市がコラボして進めているのだ。
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ソーシャルインパクトボンドを進めるNPO「MDRC」
ソーシャルインパクトボンドとは新たな資金調達の仕組みで、投資家からNPOなどの活動資金をいったん調達した後、NPOなどによる社会問題の解決の成果に応じて政府が投資家に配当を支払うモデルのことだ。
MDRCは受刑者の再犯予防に取り組んでいるのだが、金融の仕組みを使って活動資金を集めているのだ。ゴールドマン・サックスなどの企業から債権で資金を集め、再犯率が一定下がったら、配当が出るという仕組みだ。まだ、成果は出ていないが、実験的で意欲的な取り組みとして注目を集めている。
次に、「National Center on Philanthropy and the Law」というロースクールでは、NPO税制の専門家と意見交換。
ここには、NPOの制度や税制を学ぶコースもある。
NPO社会を育てるには特に、どのような優遇税制でインセンティブをもたせるかが大事だ。アメリカでの税制優遇実現のプロセスと課題についてのレクチャーを受ける。現在、貧困問題に取り組む団体などへの優遇率を高めたらどうか、という議論があるようだ。
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ロースクールでNPO税制の専門家と意見交換
「Lawyers Alliance for New York」はNPOを支援する弁護士のNPOだ。
現役の弁護士の専従者と、大きな弁護士事務所からの出向者が事務局を担っている。そして、ニューヨーク州の1300人の弁護士が登録し、NPO団体の様々な相談に応じている。
特に、ホームレス対策や貧困問題に取り組む小さなNPOの支援を積極的におこなったり、ソーシャル・ビジネスにおける営利事業と非営利事業の協力の法的整合性などの難問にも答えている。
同行した弁護士出身の江田五月議員は「日本にも弁護士のNPOを作りたいなぁ」と…。ぜひ、広げていただきたい。
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NPOを支援する元気な弁護士たち
最後に、ニューヨーク州政府へ。
ニューヨーク州知事はNPOやボランティア支援を強化している。最近アメリカではハリケーンなどによる自然災害が多く、ボランティア活動の現場から州知事直轄の担当官を置いている。地域にボランティア活動のハブ(連結)作りを進めている。東日本大震災の時、私はボランティア担当の総理大臣補佐官を務めたが、同じような仕事だ。
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ニューヨーク州政府のボランティア支援担当官と
連邦政府レベルでは、「アメリコア」「シニアコア」「ピースコア」など全米レベルのボランティア制度があり(※)、オバマ政権では「ソーシャル・イノベーション・ファンド」という基金を創設し、資金援助もおこなっている。
国レベルでも自治体レベルでも支援を強化しているのだ。
(※ アメリコアは、主に若者を中心とした環境、生活、教育、災害救助等のボランティアプログラム、シニアコアは、退職者をはじめとする高齢者が、知識や経験等を活用して行なうボランティアプログラム。ピースコアは途上国支援ボランティア派遣プログラムで、50年の歴史を持ち、若者を中心に世界中の途上国に滞在して農業や教育、テクノロジーなどの分野で開発援助活動に取り組む。日本の”青年海外協力隊”に非常に近いプログラム。)
今回の訪米では、オバマケアに対する与野党の対立で「シャットダウン」にも遭遇したが、非常に有意義だった。超党派の議員で行動し、NPOからも2名同行してもらったので、今後の制度改正に向けて大きな原動力になっていくと思う。
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超党派の訪米議員とNPOのメンバー
さて、アメリカ訪問の最後に、「グランド・ゼロ」へ。
9・11の米国同時多発テロの現場だ。当時のワールド・トレード・センター跡地はメモリアルセンターになっている。敷地には水が流れ、その回りには犠牲者の名前が刻まれている。近くに新しいワールド・トレード・センターも建設されている。
今なお、世界中から多くの人たちが訪れている。9・11の犠牲者の追悼をして、アメリカを後にした。
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