つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

活動報告・国会質問・質問主意書

安倍総理、総理大臣に「答弁権」はありません

2015.6.1

国会ブログ

安倍総理が私の質問を遮った「早く質問しろよ」というヤジについて、6月1日の衆議院「安保法制特別委員会」で、安倍総理は以下のように発言しました。

安倍総理:28日木曜日の特別、本特別委員会における辻元委員の質問の際に、私の不規則発言に関して、言葉が少し強かったとすればお詫び申し上げたい旨、申し上げました。さらに先ほど、委員長のご指示もいただきました。私の発言に対して、重ねてお詫び申し上げるとともに、ご指示をふまえ、真摯に対応してまいります。

「言葉が少し強かった」という安倍総理の発言を目の前で聞いて私は、総理はまだ、ご自身の発言の「本質的問題」にお気づきになっていない、と感じました。安倍総理のヤジ問題は、私ひとりの問題ではありません。三権分立や民主主義の根幹がかかっている問題なのです。

みなさんご存じのように日本は三権分立です。国会の委員会では、「立法府」の一員である国会議員には質疑権があります。これは国会議員のきわめて重要な権能のひとつです。

○衆議院規則第45条:委員は、議題について、自由に質疑し及び意見を述べることができる。
○憲法の解説書でも、国会議員の権能の1つとして、「質疑権」を挙げています。
『議員は、議題となっている案件について、その疑義をただすことができる。これを質問と区別して質疑という(衆規118条、参規108条等)。質疑は、議題に関連のある事項についても行うことができる。質疑は口頭でなされる。』(野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法Ⅱ(第5版)』(平成24年 有斐閣)112ページ)。

日本国憲法の下では、衆議院・参議院はそれぞれ自律的に運営されており、政府が議院に介入して、いつ審議するとか、いつ議決するなどといった日程などに関与することはできません。

一方、ヤジをとばした直後に、安倍総理はこのように発言しています。

「さきほど辻元議員が、時間が来たのに延々と自説を述べて、いわば私に質問をしないというのは答弁をする機会を与えないということですから、早く質問をしたらどうだということを言ったわけであります」

まるで国会質疑が総理の「答弁」のためにあるかのようなご発言です。しかし、「行政府の長」である総理大臣には、答弁して国民に説明する「義務」はあっても、質問をさえぎったり、自分に答弁させろ、という「権利」はありません。

○日本国憲法第63条:内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

一見、憲法上は、総理はじめ閣僚の答弁義務は規定されていません。しかし、総理はじめ閣僚は、議院の要請にもとづく「答弁又は説明のため」の出席義務がある以上、答弁義務があるというのが、常識的な解釈です(というより、「答弁義務はない」という解釈は聞いたことがありません)。

答弁義務については、過去の国会審議において、次のような質疑があります。

○参議院法務委員会(1975年06月05日)
・吉國一郎内閣法制局長官 憲法六十三条におきましては、内閣総理大臣その他の国務大臣の議院出席の権利と義務を規定いたしております。このことは、内閣総理大臣その他の国務大臣が議院に出席をいたしました場合には、発言をすることができ、また政治上あるいは行政上の問題について答弁し説明すべきことを当然の前提といたしておるのでございます。つまり、答弁し説明をする義務があるというふうに考えております。

・橋本敦委員 逆に言えば議員の方については、この憲法六十三条の反面解釈として、政治上行政上の問題について総理並びに閣僚に対する質問権を憲法が保障しているものだ、私はこう思いますが、その点も御異論ないと思いますが、いかがでしょうか。

・吉國一郎内閣法制局長官 確かに議員においては質問をされる権利がある、憲法上保障しているものであるということでございます。(略)諸外国の憲法におきましても、特に議院内閣制をとる国家におきましては、議院、議会と申しますか、議会と政府、内閣との関係においてこのような制度が保障されているものだと思います。そうして、この憲法第六十三条のその前にございます憲法六十二条の国政調査権、それと相まちまして、一般的な国会としての政府に対するあるいは内閣に対する監督権と申しますか、統制権と申しますか、そういうようなものを具現する手段として使われるものであると思っております。

日本は、「行政の長」を国会が選ぶ「議院内閣制」をとっている国です。そのため、内閣は国会に対し連帯して責任を負っています。

○日本国憲法第66条第3項:内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

国会で答弁や説明をするのは、内閣として「責任を果たすもの」と考えられるのです。

「答弁する機会が与えられないのは不当である」とか、「内閣に不利なことを聞かされるのは不当である」という趣旨で、最高権力者である総理大臣が発言したのであれば、「義務」と「権利」を混同していると言わざるを得ません。
安倍総理は以前にも、テレビ番組に注文をつけたことを追及されて「私にも表現の自由はある」と答弁しました。国会は、総理の表現の自由を守る場所ではありません。
そもそも憲法の役割は、権力が国民の権利を侵害するのを止めるためにあるのをご存じない? そうした総理のもとで憲法9条が踏みつけられようとしていることに、強い危機感を覚えます。

総理のヤジの直後、自民党席からは、総理を擁護するヤジもとびました。与野党関係のない、立法府の問題であるはずなのに。自民党は「官邸翼賛会」になっているのではないでしょうか。憲法の規範意識が希薄になっている総理や国会、そのなかで、こうした法案が出てきているのです。

今週も質疑が続きます。法案の矛盾点・問題点をしっかり追及していきます。