つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

活動報告・国会質問・質問主意書

「今後の経済見通し等に関する質問主意書」を提出しました

2016.10.14

国会ブログ

10月13日、質問主意書を提出しました。答弁書が閣議決定されるのは10月21日(金)になります。

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今後の経済見通し等に関する質問主意書
平成二十八年十月十三日

提出者  辻元清美

「日本再興戦略」(二〇一三年六月十四日閣議決定)に基づき設置された「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」は、二〇一三年十一月二十日に報告書をとりまとめ、「デフレからの脱却を図り、適度なインフレ環境へと移行しつつある我が国経済の状況を踏まえれば、国内債券を中心とする現在のポートフォリオの見直しが必要」「収益目標を適切に設定するとともに、リスク許容度の在り方についても検討すべき」と提言した。
また、内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」(二〇一四年一月二十日)を公表した。同試算によれば、アベノミクスの「三本の矢」の効果が着実に発現した場合の「経済再生ケース」は今後十年(二〇一三~二〇二二年度)の平均成長率を実質二%程度、名目三%程度と想定しているが、これは全要素生産性(TFP)上昇率が二〇二〇年代初頭にかけて一・八%程度まで上昇するという前提となっている。なお、一・八%のTFP上昇率は、いわゆるバブル期(一九八三年二月~一九九三年十月)の平均に相当する数値である。
その後、安倍総理は二〇一四年一月二十二日のダボス会議で「日本の資産運用も、大きく変わるでしょう。一兆二千億ドルの運用資産をもつ年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)については、そのポートフォリオの見直しを始め、フォワード・ルッキングな改革を行います。成長への投資に、貢献することとなるでしょう」とGPIFの運用見直しに言及した。さらに「日本再興戦略・改訂二〇一四」(同年六月二十四日閣議決定)では、「運用の改革は、専ら被保険者の利益のために行うものである」としつつも、続けて、「こうした運用が結果的に成長への投資、ひいては日本経済に貢献し、経済の好循環実現にもつながる」という記載がある。年金積立金は、厚生年金保険法・国民年金法やGPIF法の規定に基づき、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ確実な運用を保持すべきものであり、結果的であったとしても日本経済への貢献が目的ではない。GPIFには運用委員会が設置されているものの、労使推薦を含め委員はいわゆる学識経験者であり、法的に保険料拠出者である被保険者の意思確認を行う体制が存在せず、被保険者の意思確認がないまま政府が一方的に、しかも結果的であったとしても日本経済への貢献を目的に運用見直しの方向性を定めることは、年金積立金の目的外利用に当たるという指摘もある。
そのようななか、二〇一四年十月三十一日にGPIFは、国内債券の比率を六十%から三十五%に引き下げ、国内債券約三十兆円を事実上市場に放出することになる新基本ポートフォリオを公表した。しかし同日、GPIFの公表に先立ち、日本銀行は「『量的・質的金融緩和』の拡大」として、長期国債の買い入れ枠を約三十兆円追加することを公表している。当時の三谷隆博GPIF理事長(日本銀行出身)は、運用改革の狙いについて被保険者の利益確保が第一とし、日本銀行の追加金融緩和と公表が重なったのは「連携ではない」と強調した。しかし、同日公表により一気に円安・株高が進んだわけで、先立って日本銀行が「『量的・質的金融緩和』の拡大」を公表していたことを日本銀行出身の三谷理事長が知らないはずもなく、そのため、市場に影響があることを承知の上でGPIFが公表に踏み切ったとすれば、「年金積立金の運用が市場その他の民間活動に与える影響に留意」することを求めるGPIF法第二十条第二項に反する可能性がある。
このように法律の目的とは異なる政府の意図を疑わざるを得ない年金積立金の運用は、被保険者・受給者の年金制度に対する不信を増大させ、また、不利益をもたらしかねないという懸念が高まっている。
以下、質問する。

一 全要素生産性(TFP)上昇率の定義をお教え願いたい。また、過去二十年の全要素生産性(TFP)上昇率の各年度の数値を明らかにされたい。とくに、民主党政権時における全要素生産性(TFP)上昇率、第二次・第三次安倍政権における全要素生産性(TFP)上昇率を明らかにされたい。その上で、現在全要素生産性(TFP)上昇率は上昇傾向にあるのか下降傾向にあるのかという分析と、「経済再生ケース」の前提となる数値(後述のとおり現在は二・二%程度が使用されている)を達成するための見通しを明らかにされたい。
二 前述のとおり、平成二十六年一月二十日に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」における「経済再生ケース」では、全要素生産性(TFP)上昇率について、「二〇二〇年代初頭にかけて一・八%程度(第十循環から第十一循環(一九八三年(昭和五十八年)二月から一九九三年(平成五年)十月)の平均)まで上昇」とされている。一方、平成二十七年二月十二日に同じく内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」における「経済再生ケース」では、全要素生産性(TFP)上昇率について、「二〇二〇年代初頭にかけて二・二%程度(第十循環から第十一循環(一九八三年(昭和五十八年)二月から一九九三年(平成五年)十月)の平均)まで上昇」とされている。一・八%が二・二%に上方修正された理由は何か。
三 平成二十八年七月二十六日に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」によると、「経済再生ケース」では、全要素生産性(TFP)上昇率が「二〇二〇年代初頭にかけて二・二%程度(第十循環から第十一循環(一九八三年(昭和五十八年)二月から一九九三年(平成五年)十月)の平均)まで上昇」する前提で、平成三十二年度の名目GDP成長率が三・九%程度、名目GDPが五八二・七兆円に達するとされている。この二・二%が仮に元の一・八%だった場合の平成三十二年度の名目GDP成長率と名目GDPの推計を明らかにされたい。
四 同じく平成二十八年七月二十六日に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」によると、「経済再生ケース」では、「国・地方の基礎的財政収支黒字化目標年度である二〇二〇年度において▲五・五兆円程度(対GDP比▲一・〇%程度)の赤字が残る」とされているが、この二・二%が仮に元の一・八%だった場合の平成三十二年度の国・地方の基礎的財政収支(金額と対GDP比)を明らかにされたい。
五 平成二十六年十月三十一日に日本銀行が「『量的・質的金融緩和』の拡大」を、GPIFが基本ポートフォリオの変更を含む「中期計画の変更」を公表したが、それぞれの公表時刻を明らかにされたい。また、政府は日本銀行とGPIFの公表時刻について事前に知っていたか。
六 平成二十六年十月三日の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)第八十五回運用委員会の議事要旨に、ある委員の「二〇〇八年度の損失は国内債券中心であったため九兆円で済んだわけだが、それを大幅に上回る三十兆円という、単年度で発生する可能性のある大きな損失を国民が受け入れるかどうか」との発言が記載されている。一方、平成二十六年十二月二十四日に長妻昭衆議院議員が提出した質問主意書における「仮に新しいポートフォリオを過去十年間にあてはめると、リーマンショックがあった二〇〇八年度の赤字額はいくらだったか」との質問に対し、政府は平成二十七年一月九日の答弁書で「約マイナス二十六・二兆円」と答えている。「三十兆円」と「二十六・二兆円」の差がどのような根拠によるものか明らかにされたい。
七 平成十六年年金制度改正にもとづく年金財政フレームでは、「概ね百年間で財政均衡を図る方式とし、財政均衡期間の終了時に給付費一年分程度の積立金を保有する」とされている。これまで平成二十一年と平成二十六年に財政検証が行われたが、次回の財政検証はいつ頃予定しているのかお教え願いたい。また、その際は一回目の平成二十一年から一定年数経過していることになるので、概ね百年間からその一定年数を差し引いて財政見通し期間を設定するという理解でよいか確認したい。
八 平成二十六年財政検証では、長期の経済前提におけるケースAの全要素生産性(TFP)上昇率については、平成二十六年一月二十日に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」における「経済再生ケース」の一・八%が用いられている。二・二%に改めて財政検証を実施し直す必要はないか。
九 平成二十六年財政検証における足下の経済前提の名目長期金利についても、平成二十六年一月二十日に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」における「経済再生ケース」に準拠する場合として平成二十六年度一・〇%、平成二十七年度二・一%、「参考ケース」に準拠する場合として平成二十六年度一・〇%、平成二十七年度一・五%が置かれている。一方、平成二十八年七月二十六日に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」では、名目長期金利は「経済再生ケース」「ベースラインケース」ともに平成二十六年度〇・四%、平成二十七年度〇・三%と大きく下方修正されている。さらに、平成二十八年九月二十一日に日本銀行が「金融緩和強化のための新しい枠組み:『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』」として、長期金利について「十年物国債金利が概ね現状程度(ゼロ%程度)で推移するよう、長期国債の買入れを行う」との方針を決めたこともあり、平成二十六年財政検証時の長期金利の見通しはすでに足下から大きく崩れている。このような観点からも財政検証を実施し直す必要はないか。
十 そもそも、財政検証の経済前提の設定にあたり用いられる国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口は向こう五十年であり、また、概ね百年間もの期間を財政見通し期間に設定している諸外国は見受けられない。加えて、事実、平成二十六年財政検証の経済前提はアベノミクスを意識した内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」が大もととされており、すなわち、財政検証は時の政権の政策による影響を排除できず、中立性の確保という点で非常に問題のある仕組みであると考える。以上のことから、財政検証については、財政見通し期間を例えば国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口と同じ五十年間に短縮するとともに、時の政権が掲げる成長戦略に沿った経済見通しとこれを前提に置いた検証から、権威ある独立機関による客観的な検証への改革が必要ではないか。

右質問する。