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2013年6月11日 法務委員会

2013.6.11

議事録

本日は、刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案につきまして、質問をさせていただきます。

まず最初に、この間の参議院での先立っての議論の中でも、刑の一部執行猶予が厳罰化などにつながるおそれはないのだろうかというような御指摘もございました。

そんな中で、裁判員制度もできておりまして、この裁判員制度との関係で、裁判員に対して、制度の趣旨や内容、そして情報提供など、この法律施行までにかなり丁寧な体制づくりも必要だと思うんですが、この点について、まず担当局からお願いをいたします。

稲田政府参考人

御指摘のとおり、今回の刑の一部執行猶予制度は、裁判員裁判の判決においても言い渡されることがあり得るというところでございます。そのためには、この新たな刑法第二十七条の二の第一項等の要件の存否を、裁判員を含む裁判所において御判断をいただかねばならないということになるわけでございます。

他方で、裁判員法は、六十六条第五項におきまして、裁判長は評議において裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行うなどしなければならないというふうに明示的に定められているところでございますので、現実に、刑の一部の執行猶予の言い渡しが問題となるような事案の審理におきましては、当然、この規定に基づき、裁判長は、裁判員の方に対して、今回の制度の趣旨でありますとか、適用するための要件等につきまして必要な説明を丁寧に行われることになると思います。

また、現在の刑事訴訟法の実務に鑑みますれば、検察官あるいは弁護人が当該事件の被告人に対して刑の一部の執行を猶予することが相当であると考える場合には、証拠調べや論告、弁論等の機会を通じて、刑の一部の執行猶予の要件の存否などについて必要な主張、立証を行うことというふうになると思います。

以上のように、裁判員裁判におきまして刑の一部執行猶予の言い渡しが問題となる事案においては、まず、法廷の場において、あるいは評議の場において、裁判員にとって必要な情報提供が司法関係者により適切になされるものというふうに考えているところであります。

また、さらに、今回の制度が施行されますに当たりましては、新たな制度でございますので、幅広く情報を提供することは重要なことであると考えておりますので、成立いたしました場合には、施行までの間に、担当者におきまして、この制度の趣旨や内容について関係者に周知するように努力していきたいと考えております。

辻元委員

今、さまざまな対応をしていただけるという御答弁だったんですけれども、ちょっと仮釈放との整合性について関連してお聞きしたいと思うんです。

仮に実刑二年という判決が出た場合をちょっと考えてみたいんですね。というのは、これはどっちが重いのかとか、裁判員の方も含めまして、非常に判断が難しい要素が一つふえるということになりますので、ちょっと実例でお聞きしたいと思います。

実刑二年の判決を受け、仮に一年六カ月で仮釈放になった場合、残りの刑期である六カ月の期間が保護観察の対象になります。一方、初めから、実刑二年の判決が出て、そのうち六カ月につき二年間の執行猶予がついて、執行猶予期間は保護観察に付すとなった場合、これはどちらが重い刑罰というような判断ができるんでしょうか。

稲田政府参考人

刑の軽重の判断というのは、確かに非常に難しいところがございます。従来も、実刑と執行猶予の場合でも、どちらが重いのかというのは最高裁の判例等も多数あるところでございます。

いずれにしましても、現在までの考え方、最高裁の判例等を見ますと、やはりその二つの刑の内容を具体的かつ総合的に検討して比較して考えるものだということになろうと思いますし、今回の制度の導入後におきましてもその点は同様でございますので、具体的には刑の実刑の部分の長短、執行猶予期間の長短などを比較して判断されるということが一般論として言えるんだろうと思います。

今御指摘のありました、二年で、うち一年六カ月を服役し、六カ月間が仮釈放なのか一部猶予なのかによってどちらが重いのか軽いのかということでございますが、多分、これにつきましては、二年の実刑を言い渡された場合につきましては、いずれにしても、仮釈放が認められるか否かにかかわらず、いわゆるこの二年は全部実刑でございます。仮釈放が認められても、刑期が二年であったということは縮減されることはありません。その意味においては、一部執行猶予の場合は、仮に、六カ月間の執行猶予部分につきまして、その後の執行猶予期間中に再犯に及ぶことなく刑が終了いたしますと、刑期自体は一年六月に軽くなるわけでございます。したがいまして、一年六カ月の刑を終わったということになりますので、そういう意味では、非常に教科書事例的に申し上げれば、二年の実刑のうち一年六カ月服役、六カ月仮釈放の方が、二年の刑のうち六カ月を一部執行猶予にされたものよりは重いというふうに言えるんだろうと思います。

辻元委員

仮釈放の場合は、その方の日ごろの態度その他で判断するわけですけれども、例えば六カ月を二年間の執行猶予つきの保護観察にしようというのは、裁判の時点で決めるということになりますので、その方にとってそれがいいのかどうかというものの判断というのは、特に裁判員で専門家でない場合、非常に難しい判断になってくるのではないかと私は考えますので、そういう点も考慮して、しっかりした対応をとっていただきたいというように思っております。

それに関連いたしまして、一部の弁護士会などからも、今回の改正についての懸念も示されております。それは、一つは、刑の一部執行猶予制度、これは刑法典に行為者の将来の危険性に着目した制度を新たに導入するものにほかならないという批判というか懸念がありまして、行為者の将来の危険性について、刑期を超えて自由を制限するのはまさに保安処分的であると言わざるを得ないという意見が出たり、過去の行為に対する責任としての刑罰を定める行為責任主義に抵触する可能性があるのではないかというような批判も出ております。

そんな中で、この刑の一部執行猶予判決により、管理、統制される期間を延長する、実質的には延長することになるわけですけれども、このような懸念についてはどういう御見解をお持ちでいらっしゃいますか。

稲田政府参考人

そのような御指摘もいただいているところではございます。

ただ、他方で、私どもの考え方は、まず刑の量定をするには、当該被告人の刑事責任というものを基本に置いて、その上でどういうふうにすることが再犯の予防ということも含めて有用なのかという観点で考えておりますので、刑事責任の程度ということを度外視して再犯防止等を考えている、特別予防だけを考えているというものでは全くないということは御理解いただきたいと思います。

そういうことも含めまして、今回の制度は、根本において行為責任というものを基本に置いておるところでございますので、御批判は当たらないのではないかというふうに思っています。