つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

News

2013年11月12日 経済産業委員会

2013.11.12

議事録

本日は、産業競争力強化法案の審議に当たりまして、五名の参考人の皆様には貴重な御意見をありがとうございました。

この間、もう十年以上、どうしたら日本の経済が再生できるのか、そして、働く人たちがディーセントワーク、人間らしく生き生きと働くことができるのかということを議論してまいりました。

その中で、企業がもうかれば人々が果たして幸せになるのかというテーマが一つありました。もうけだけ追求して、そして賃金は下がる、さらには暮らしが苦しくなっていく、格差が広がっていくようではだめじゃないかと。

もう一つ、この間、デフレの原因は何かという議論もございまして、安倍総理は予算委員会で、私もその場におりましたけれども、デフレは貨幣現象であると言い切られた。

一方、この十年以上にわたりまして、これは日本に特徴的な現象ですけれども、アメリカもそしてヨーロッパも、リーマン・ショックなどもございましたけれども賃金は一定上がっている、しかし、日本は下がり続けてきた。賃金が下がるということは、内需を含めて経済が非常に縮んでいくことじゃないか、やはり賃金の問題や人を大切にしてこなかった点がデフレの原因ではないかというような議論が、この間ずっと国会の中でも進められてまいりました。

そんな中で、安倍総理は、今回この法案をお出しになるに当たりまして、世界で一番企業が活躍しやすい国にするんだという発言があったわけです。世界で企業が一番活躍しやすい国は、果たして人が幸せになるのか。そういう国が人を幸せにしないと意味がないわけです。ですから、その点などについてきょうはお聞きをしたいと思います。

まず最初に、佐々木参考人に。

いろいろ経済界で御活躍をなさっておりまして、世界じゅうの国々ともおつき合いされていると思いますが、今この時点で、世界で一番企業が活躍しやすい国は、ああ、あそこやなという国があったら教えていただきたい。

佐々木参考人

我々は、グローバル化の中で世界の企業といろいろおつき合いをしながら、アライアンスを結びながら、自身の競争力を高めていくという努力をしているわけですが、ではどの国が一番働きやすいかというと、その国その国ごとにやはり規制の体系が違うということがあると思います。

日本も実際には非常に働きやすい国だと我々は思っています。ただし、いろいろな意味で、みんなで一緒になって働く。

先ほど賃金の話とか人を大切にしているかというようなお話もありましたけれども、日本の企業でいいますと、リーマン・ショック直後においても五・一%の失業率でしかない。そのときに、たしかアメリカは九・九%ぐらいになっていたと思うんです。そういう意味では日本は働きやすい国です。

企業はそのときに、売り上げも利益率も非常に下がったにもかかわらず正規社員をしっかり確保して失業率を上げなかった、こういうこともあります。そういうことがまた許されながら、企業倫理も含めて、日本での企業の活躍の仕方は若干外国とは違う面もありますけれども、日本は日本で、また企業としての動き方というものについて、ある方向性を持って活躍ができる国だと思っています。

ただ、世界のグローバルマーケットの中で本当に我々が競争していかなければいけないときに、コスト競争力であるとか性能の競争力、イノベーションの競争力、そういうことを全部やるに当たって、今の環境は安倍政権になるまでは六重苦の話がありました。そのうちの三つぐらいが今解決をしつつある中で、この条件をしっかり解決していって、さらに日本の企業が人を大切にでき、賃金も上げていける、こういう形にしていけば、日本が一番活躍しやすい国になると認識してございます。

辻元委員

よく法人税が安い国がいいんじゃないかとかいろいろ言われるわけですが、では、どこなんだと言われたときに、タックスヘイブンの地域がいいのかとか、そうでもないわけですよね。トータルに考えてどうなのか。

今、日本の話がありましたけれども、賃金は下がり続けたわけです。トリクルダウン理論というのがこの間も議論されてきました。ぽたぽた落ちて、そして労働者までお金が回っていくんだと。しかし、この間見ていますと、非正規社員がふえてきた。非正規社員をバランサーのようにして、賃金をカットしていくなりして企業が生き延びていくというような指摘も一方であるわけです。

先ほどイザナギ景気の話も出ましたけれども、景気はずっと拡大していった、そして内部留保もたまっていった、今三百兆とも言われている、しかし賃金は下がっています。

そこで、神津参考人にお聞きしたいんですが、先ほどボトムアップの政策が必要だとおっしゃいました。トリクルダウンと対照的におっしゃったのかもしれないです。そのボトムアップの政策。そして、先ほど私は、ディーセントワークで、やはり人間らしい暮らしができる社会にしないと、内需も拡大しないし少子化も進んでいく。ということは、経済全体が縮んでいくことになります。

その働く立場から見たボトムアップ型の政策、もう少し詳しくお聞きしたい。それから、ディーセントワークが果たして日本で実現しているのかどうか。この点についてお聞きをしたいと思います。

神津参考人

ありがとうございます。

トリクルダウンという言葉は、私ども連合も率先して使っているんですけれども、辻元委員におっしゃっていただいたようなことだと思っています。

やはり、イザナギ景気が戦後最長と言われながら、結果として格差の拡大を生んでしまった。それで、デフレの脱却ということには到底至らなかったということを、私どもとしては、日本の経済社会全体が顧みる必要があるんだろうというふうに思っています。

給与所得も九七年以降ずっと減り続けている。これは平均でということであります。連合傘下の労働組合においても、この間、労使交渉において、いわゆる大手のところは基本的に定昇制度であるとか基本賃金のカーブ維持とかをもって賃金は維持をしている。あるいは、年によっては賃金改善という手法をもって向上を果たしている部分もある。したがって、格差が拡大したことが全体の水準を押し下げているということであります。

御質問いただいた、非正規のところ、あるいは格差の拡大の一つの大きい要因として、やはり中小企業で働く者の関係があると思います。

これは政策の面でもぜひぜひあらゆる局面において光を当てていただきたいと思うわけですが、率直に言って、言うはやすく行うはかたしのところがあると思います。これは政労使が力を合わせて、自分たちのやれるところ、守備範囲のところを精いっぱいやるということだと思います。

政府に求めることで非正規に関したところでいえば、基本的には、政策以前の問題ですが、いわゆるブラック企業なるものがばっこするというようなこと、そこはしっかりとした労働基準ルールの適用をこれまで以上に強化していただきたいと思います。

そして、政策面ということでいえば、やはり最低賃金。これはここ数年は向上するという結果になってきているわけですけれども、まだまだだと思います。やはりそこのところは一層力を入れていただくということが必要だと思います。

また、正規労働者への転換です。

統計などを見ても、私どもが把握しているところでいえば、いわゆる不本意な形で非正規という働き方をせざるを得ない方々が四割ぐらいいらっしゃるということですから、これは日本の社会にとって大いなる損失を結果として招いているということだと思います。

労働法制の問題はさまざまな論点で議論されていますが、やはり本人にとっても自己実現を図れるような働き方、もちろん非正規を望んでいる方もいらっしゃるわけでありますから、全てを否定するつもりはありませんけれども、四割の方々が、本当は正規社員としての働き方を望んでいるにもかかわらず、心ならずも非正規という働き方に甘んじざるを得ない。

先ほど新浪参考人からも、人材の育成が企業として物すごく大事だということで、そういうふうにやっていただいている企業ももちろんあるわけですけれども、一方で残念ながら使い捨てに結果としてなってしまっているところも少なからずあるわけでありますから、やはりこれは政策面においても、どうやって本人方が働く者の立場で望んでいる形に転換ができるのか、そういった施策の推進をお願いしておきたいと思います。

それから、パート労働法も今宙に浮いた形になっているわけですけれども、やはり均等、均衡処遇。これも言うはやすく行うはかたしのところがありますが、現状をつぶさに精査していただいて、目に余るような実態がそこここにあるのではないかと思いますから、均等、均衡処遇ということについて、さらに深掘りをしていただきたいと思います。

それから、中小企業に関してですが、先ほど申し上げたように労使関係の問題でもありますけれども、定昇がないと結果的には実質賃下げになってしまっているということがあります。これは価格転嫁がなかなか進まないということが一つあると思います。

先ほどの意見の中ではいろいろな支援策について要請申し上げましたけれども、消費増税が来年の四月です。価格転嫁は関係省庁におかれてもそういった仕組み、あるいはそういった発信を今準備されているやに伺いますけれども、私ども連合としても、そういった仕組みをつなぐ役割を果たしていきたい。働く者あるいは経営者の方々から、価格転嫁がなされていないというようなことが発信されれば、私ども連合としても、それを関係した制度につないでいく努力もしていきたいと実は考えておるんです。

やはりそこらについては、行政当局のいろいろな指導を含めて力を発揮していただくということが極めて重要だと思いますので、その点をお願い申し上げておきたいと思います。

それから、ディーセントワークですね。

私ども連合は、よく正社員中心の組合だというふうに言われますが、実は非正規も百万人ぐらいいるというふうに私は思っています。

一方で、正規社員も、さっき意見の中でも触れましたが、やはり長時間労働ということが本当に抜きがたい問題としてあります。これから先、男女共同参画社会を実現していく上でも、やはりそこのところはしっかりと働きかけていくことが大事だと思っています。やはりカローシなんという言葉が日本語発で世界に流布するようなことだけは避けていかなきゃいかぬ、こういうふうに思っています。

辻元委員

今のお話で、政労使の十分な話し合いと合意という点がありました。

実際に、ドイツは今、経済が堅調だと言われています。今の政権になる前のシュレーダー政権で政労使の協議が徹底的に行われ、一定の雇用の流動化ということも必要なわけですけれども、その場合には、よい流動化と悪い流動化があるだろう、やはり同一価値労働同一賃金というか、均等待遇をどうしていくのかということも含めて話し合いがなされ、働く人をきっちり守っていこうという中で政労使が話し合われたのが基盤になって、今のメルケル政権の堅調があると言われております。

そこでもう一点、ちょっと違う角度からお聞きをしたいんです。

新浪参考人にお聞きしたいんですが、私自身はNPOの支援をずっとやってまいりまして、「新しい公共」推進会議では、新浪参考人にもお越しをいただいて、一緒に支援をしてまいりました。

そんな中で、ソーシャルビジネスの可能性です。

先ほど健康増進の話をされました。私は五Kと言っていまして、健康、観光、教育、環境、きずな、この五つの産業を伸ばしていく。その際には、ソーシャルビジネス的な、社会問題を解決することを一つの仕事にしていくという分野が、日本の中でも、今までのさまざまな産業構造の転換もですけれども、必要だと思っているんです。その点についての御意見を伺いたいこと。

これは中小企業の支援にもつながると思うんです。ですから、小出参考人に、中小企業の、新しく起業なり仕事をかえていくに当たってのネック、何が問題点になっているのかということをお二人にお聞きしたいと思います。

新浪参考人

ありがとうございます。

私は、新しい公共、とりわけ前政権のときに税制が変わった、大変に評価すべきことだと思います。その中で、若い人たちが社会に貢献したいというのが、三・一一のこともありまして、大変大きな希望になってきたんだな、こう思うわけです。

その中で、私も新しい公共はもっと取り組むべき課題である。また、ここに、私たち企業と、いわゆるソーシャルな部分で社会と向き合うところで、まだ我々がわからないところを手助けしていただくこともあり得ると思いますし、国が全てやるのではなくて、自分の町は自分たちで守るんだ、こういったところにもつながることになると思うんです。

今申し上げているのは、全て国に頼って何かをやるということではなくて、いわゆるソーシャルエンタープライズが、まさに自分たちで自分たちの町の発展のためにやっていくということは大変重要なことだ、このように思います。そこに、私たちみたいな企業でノウハウを持ったところをどう巻き込んでやっていくか、これが大切だと思います。

一方で、課題は、我々企業にしてみると、どこと組んだらいいのか、認定であろうがなかろうが、どういうところが一番いいのか。まだまだ新しい公共があれから進んでいない、こういうふうに思いまして、NPOの皆さん、意気込みが非常にある方々、しかし一方で我々との接点がどうもまだまだ持ちづらい。

ありていに言いますと、何となく企業サイドからすると大丈夫かなと思うようなところをもっとうまくつなぐことができることによって、いわゆるNPOの皆さんは、志があって、その実現もでき、また企業のノウハウも活用できるんじゃないかなと。

また、企業からは、六十歳以降、企業に残るよりも、ノウハウのある人たちがNPOに行く。とりわけNPOの若い人たちは意識は大変あるんですが、ノウハウの面で企業からもっと卒業生をうまく移動できれば、私は、地方の抱える問題点を早く解決できるんじゃないか、このように期待をしております。

以上でございます。