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2005年10月6日 日本国憲法調査特別委員会

2005.10.6

議事録

163-衆-日本国憲法に関する調査…-2号 平成17年10月06日

辻元委員

社会民主党の辻元清美です。

私は、五年前に憲法調査会が衆議院に設置されたとき、最初の委員の一人となり、中山委員長ともヨーロッパへの調査にも同行させていただきました。その後、社民党では土井たか子前議員を中心として議論してまいりましたけれども、当特別委員会が設置されるに当たり、再び私が担当させていただくことになりました。

本日は、その委員会での初めての発言ですので、まず最初に日本国憲法についての私の見解と立場を明らかにさせていただき、次いで国民投票制度に対する意見を述べたいと考えております。

まず、憲法とは何かということから確認をしたいと思います。

これは調査会でも随分議論された点ですけれども、十八世紀後半のアメリカの独立革命、そしてフランス革命以来、憲法とは、国家権力の恣意的な発動を制限するため、国家は何ができるのかという限界を定め、さらに権力の行使の手続を定めるものだということが常識になっている点は多数の方が指摘されたとおりだと思います。このように、憲法とは国民から国家に突きつけられたルールであるという根本原則を常に踏まえながら本委員会も運営されることを強くまず申し上げておきたいと思っております。

その認識に立ちまして、私の立場は、今早急に憲法を変える必要はないという立場です。したがって、国民投票制度制定を急ぐという必要性も感じておりません。

その理由について、もう一度、今までの調査会での議論を振り返りながら、何点か焦点になった点についてまず私の意見を述べさせていただき、その後、国民投票制度についての意見を述べたいと思います。

一つ目は、環境権や知る権利やプライバシーなど、時代が変わったことで新しく出てきた概念について憲法に入れた方がよいという議論についてです。

私は、これらの権利を認めることは大切だと思っております。しかし、国会議員として私たちが今すぐしなければならないことは、まず、今の法律や施策を点検し、これらの権利を実現するに当たってふぐあいがあるのならそれを改め、それによってこれらの権利を実行していくということだ、私は今もこの意見を変えておりません。

例えば、環境問題で温暖化が深刻になっております。私は、京都議定書作成のときは自社さ政権の与党におりました。京都に行って随分多くの議員たちとも、各国の人たちと議論をしました。そのとき日本は、九〇年を基準に六%削減する、温室効果ガスを六%削減すると公約しました。しかし、昨年を見てみますと七・六%ふえているというありさまなんです。私たち社民党初め多くの人たちが環境税の導入についても強く主張してきましたけれども、政府・与党はなかなか踏み切ろうとしておりません。また、環境アセスメント法などの規制ももっと厳しくしなければならないと私は考えますが、なかなか実現しません。これらは憲法に環境権を入れるという以前に、今すぐ取り組める政策であるはずなんですね。

もう一つ、情報公開法についても申し上げたいと思うのです。

知る権利という議論も憲法調査会で出てきたと聞いております。一九九九年に情報公開法ができたとき、この議論も自社さ政権で行いました。私は担当者でした。そのときに、情報公開法に知る権利というこの権利を入れるべきだと私たちは最後まで主張いたしました。しかし、一貫として反対したのは残念ながら自民党の皆さんだったんです。この知る権利などを憲法の中に入れるべきだと今強く主張されている方の中にも、当時、いざ法律の中に知る権利を入れるということになれば、大きく反対されたという方もお見受けいたします。私は、情報公開法には知る権利という言葉を入れることは魂だと思っておりましたので、このときは涙をのんで、法律を成立させなきゃいけないということで削った苦い経験があります。

さて、そういう中で、もしも私たちが新しい憲法に知る権利を入れることが非常に重要だと考えるのであるならば、この情報公開法に即座に、今、皆で改正をしようということに向けて大きく進むべきだと思うんですけれども、その情報公開法にいまだ知る権利という言葉は入っておりません。私は、これらのきちっと政策的になされなければならないことを後回しにして、憲法論議のときだけ新しい人権であったり、それから環境権ということを声高に叫ぶというのは、これは順序が違うというふうに強く申し上げたいと思います。この点は調査会でも指摘された点だと思いますけれども、改めて強調したいと思います。

次に、憲法九条についても意見を述べさせていただき、変える必要がないという立場で国民投票制度についての意見をその後に申し述べたいと思います。

今、残念ながら現在の世界では紛争はたくさん起こっております。しかし、そのような現実であるということを前提にしながらも、日本という国が国際紛争にどのようにかかわるのか、紛争を予防し、和解のプロセスをつくっていけるのか、平和構築に向けてどのようなアクションプログラムを持てるのか、その中で憲法九条を使っていけるのかどうか、その点をまずきっちり私たちはもう一度、こういう時代だからこそ検証すべきだと考えております。

私は、かつてNGO活動で紛争地と言われる地域を訪問し、目の前で発砲されたという経験もあります。また、パレスチナとかイスラエルなどの紛争当事国同士の民間対話などのコーディネートなども行ってきました。そんな経験から、紛争地の人たちが一番望んでいることは何かを常に考え続けてきました。実は、紛争地の人たちが最も望んでいること、それは、だれか早く来てこの紛争を終わらせてほしいということだと思います。ですから、現在のように紛争が多発する時代だからこそ、紛争の調停や和解のプロセスづくり、そして紛争予防の役割というのがますます重要になってきています。

そういう中で、日本は憲法で、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と宣言し、他国で戦争することを認めていません。私は、だからこそ、紛争の調停や解決や和解のプロセスづくりなどにおいては他国より日本が力を発揮できるのではないかと考えております。これは、単に憲法九条を宝の持ちぐされにするのではなく、憲法九条を武器にして紛争解決に乗り出すという積極的な立場です。私は、憲法九条を守ってさえいれば世界に平和が訪れるとは考えていません。そのような消極的な態度ではなく、憲法九条を持っているという日本の特徴を生かして平和構築に具体的にコミットしていくという非常に厳しい立場の選択として、今のような意見を申し上げたんです。

なぜこういうことを先に申し上げるかといいますと、私は、やはり手続法という議論に絞って議論されるというときに必ず、憲法を変えるべきなのかどうかというところに立ち返って、私たち委員が毎回検証しながら手続法の議論を進めていくということは非常に重要だと思っております。これは切り離して手続法なんだ、いや、ここまでは憲法を変えるか変えないかの議論なんだというように、実務的には切り離せる問題と言われるかもしれませんけれども、常に私たちがそこに立ち返るということは非常に重要な点だと考えますので、一番最初に、憲法とは何かということ、そして、それぞれの立場を明らかにするという意味において発言をさせていただきました。

特に、今の国際情勢を考えても、イラク戦争の行方など混沌としている中、そしてアジアとの関係が非常にぎくしゃくしている中で、憲法を変えようという方向性を持った議論を日本が進めていくということは、私たちのとるべき道としてどういう国際的な意味を持つかということも常に考えながらなされるべきだというように思っております。無邪気にと言うと変ですけれども、いや、これは改正の手続についての議論なんだから切り離して考えられるというのは、今の国際情勢の中での日本の立場を見たときに非常に甘い考えではないかと思いますので、あえてここを一番最初に、政治状況、そして国際情勢の中での議論であるということを指摘させていただきたいというふうに思っております。

次に、こういう観点から、私は、憲法を今変える必要はないという立場ですが、国民投票法についての意見を申し上げたいと思います。

先ほどから主役は国民であるということを申し上げてまいりましたけれども、憲法改正をするためには、政府や国会の側ではなく、国民の側から今の憲法は変えなければならないというかなり強い要望ががんがん出てきて初めて、政府や国会がその声に従って改正に踏み切るという性質のものであると考えております。私には、現在の流れというのは、これとは逆に、政府とか国会が何か国民に憲法改正を迫っているというか、そういう姿にも見受けられて仕方がないんです。

さてそこで、立法不作為という意見が先ほどから出ております。そういう立場に立って見るならば、果たして立法不作為でしょうか。立法不作為とは、ある権利を行使させるために必要な法律を制定しないことが違法となるという解釈は、調査会でも指摘されたとおりです。その典型は、先月最高裁の大法廷判決で取り上げられた、海外に住む日本人が選挙権を行使できるようにしてこなかったという事例などです。ここでは、憲法で保障された選挙権を行使するための法律が制定されなかったことが立法の不作為として違憲とされました。

これに対し、国民投票法についてはそのような事態は生じておりません。国民の側からも、また国会でも、憲法を改正すべきであるという具体的な声が今まで高まってこなかった。そして、国民投票法が制定されなかったことによって不利益をこうむったという人は実際なかなか見受けることができません。したがって、国民投票法が制定されてこなかったことを、すなわち立法の不作為であるというような議論をすることについては、多くの疑問が前調査会でも投げかけられたとおりで、私もそのとおりだと思います。これはおかしいと思います。そして、今申し上げたような立場で、すぐに制定しなければならないというように私は考えておりません。

しかし、この委員会において国民投票法の内容を議論するに当たり、幾つかの点を、一番最初の委員会ですので、指摘させていただきたいと思います。

まず、憲法改正は、主権者である国民が行う最も重要な政治的選択です。ですから、その意思が正確に反映されなければなりません。したがって、改正案についての賛否を一括して問うのではなく、それぞれの論点ごとに投票できるようにすべきであると考えます。これは多くの人たちが指摘しているとおりです。また、有権者については、義務教育を終了した年齢でもいいのではないかという意見も出ておりますが、考慮に値すると考えております。

次に、憲法改正の適否は、あらゆる角度から自由な討議を経て決定されなければならないと思います。公職選挙法のような、選挙運動を原則的に禁止し、特定の行為だけを許すというやり方ではなく、国民投票法は憲法改正案の是非について自由濶達な議論を保障するというものでなければならないと考えます。また、国民が積極的にそれを望む場合にだけ行われるものであることを保障するために、投票方法や可決の要件についても慎重な考慮が必要になると考えます。例えば最高裁の国民審査に見られるような、バツをつけるという投票制度だけではだめだと思います。

立法府が制定する法律とは異なり、憲法は国民が国家に対して命じるものであるから、この国民投票のやり方については、国民の意向が正確に反映される制度を制定されるべきであるということを最後に申し上げて、私の発言を終わります。

以上です。(拍手)

辻元委員

二回目の発言の機会を与えていただいて、ありがとうございます。二回目ですから短目にします。

きょう、中身と手続法は切り離せるのかというところが一つの大きな論点になったのではないかと思います。この点についてはしっかりと議論をしていくべきだと思うんです。その中で、発議内容に応じて一括か個別かを後回しにして決めるというような意見も出ておりましたけれども、手続法においては、一括か個別かということは肝になると思っております。非常に重要なポイントであると思いますので、この点を後回しにしてこの手続について議論を進めていくということは、この改正法というものそのものの意味をなさなくなってくるのではないかというふうに思っております。

この点については、また次回、議論を深めさせていただきたいと思います。

もう一つだけ申し上げたいと思うんです。

今の御発言の中にも、この憲法の議論というのは国民の意思である、そして国の根幹である、自由で活発な国民の議論が必要であるという大変重要な発言を自民党の議員の方からいただきました。

しかし、今この委員会を見ますと、半分以上いてはらへんわけです。二十二名なんですね。ですから、次回からはやはり最後まで、その国民を代表してここで議論を進めておりますので、きちんと各党派最後まで出席して、活発な議論をこの委員会でできるように強く要望したいと思うんです。

といいますのは、私、社民党の議員なんです。社民党、人数少ないといって一人なんですね。先ほどから憲法九条の議論や改正の議論が出ております。憲法変えぬでええんちゃうかという立場で議論しているわけですが、九条も含めて、やはり国民には半数その声があると思うんです。ですから一人でも、頑張ってその立場を代表してしっかり議論していこうという決意でこの席に臨んでおります。しかし、理事会でも、数が少ないということで、オブザーバーで、陪席ということで、中山委員長は優しいですから発言の機会も与えていただけそうなんですけれども、なかなか発言の機会もないんです。しかし、やはり頑張っていきたい、議論していきたいと思っております。

ですから、先ほどから出ております、国民の意思を大切にする、国の根幹の議論である、自由で活発な議論を国民に求めるというのであるならば、この委員会の運営、最初に当たりまして、各会派きちんと、少なくとも最後まで参加していくという姿勢で、ぜひ委員長のこの委員会運営をお願いしたいと思います。

ありがとうございました。