つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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2006年3月23日 日本国憲法調査特別委員会

2006.3.23

議事録

笠井委員

日本共産党の笠井亮です。

まず、お二方に御質問する前に、前提問題として、先ほど辻元委員の基調発言の後で、今退席されちゃっていますけれども、中山委員長が発言されたことについて一言述べておきたいと思うんです。

委員長は国民投票制度づくりを急ぐのは昨年の憲法調査会報告書と本会議での発言が根拠になっているようなことで言われたと思うんですが、この問題は事実関係の問題として大事だと思うんですが、憲法調査会は、国会法百二条の六及び憲法調査会規程第一条で日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うことを目的に設置されたもので、ある事柄について決定したりする会議体ではなかったわけであります。だからこそ、報告書でも憲法改正手続法の整備について、「整備を急ぐ必要はないとする意見もあったが、早急に整備すべきであるとする意見が多く述べられた。」こういう表現をとったわけであります。

また、憲法調査会はその性質上議案提案権を持たない会議体であること、これは議院運営委員会の国会法改正小委員会で繰り返し議論されたことであり、そのだめ押しとして申し合わせ事項にも議案提案権を持たないことが確認されました。だからこそ、本会議でも議長は中山会長に対して報告ではなく発言を許すという形で行ったわけでありまして、それに拘束力はないということを指摘しておきたいと思います。

その上に立って、まず滝委員に伺いたいと思います。

先ほど冒頭で、国民との関係での対応について述べられました。前回の委員会での私の基調発言の中でも、そしてまた、きょうも辻元委員からも紹介ありましたが、最近のNHKの世論調査の結果、さらには毎日新聞の最近の世論調査でも、日本国憲法が戦後の平和維持や国民生活の向上に役立ったという評価をする人が八割という、毎日でいえば評価があるということも紹介いたしました。滝委員は、一方でそういう調査の結果も出ているわけですが、今日の憲法改定論議あるいは国民投票法制に関する国会における議論について、国民は率直にどう見ていると感じていらっしゃるか、その認識を伺いたいと思うんです。

〔船田委員長代理退席、委員長着席〕

滝委員

私は、二つに分けて申し上げたいと思います。

一つは、笠井委員がおっしゃるように、日本国憲法のこれまでの機能というのは、恐らくだれしもそれに対してマイナスの評価を与えるようなものではない、大変日本の発展に役に立ってきたし、日本の平和にとっても役に立ってきた、そういうような評価を私はいたしております。それだけ歴代の、この国会の中での論戦がそういうものを支えてきたというふうに認識をいたしております。

ただ、今の段階で、これからの世界情勢、あるいは現在の自衛隊の姿を見て、このままいつまでもほうっておくのがいいのかどうかということになると、疑問である。

それは、今までも自衛隊に関しては憲法の条文と実態との乖離というものは指摘されてきましたけれども、これからもその乖離をほうっておいていいのかということになると、それは好ましくないだろう。やはり、基本的に、法治国家として改めて六十年たって宣言するためには、条文との乖離というものは放置できない。私は、それを放置しておいて解釈だけで運用するということになると、国会が絡んでいくわけでございますから単純に法律以下とは申しませんけれども、いわば法律以下になる、行政の力だけでもって条文が運用されていくということは望ましくない、そういう意味では実態との乖離を、整合性をとらなければいかぬ、そういう認識を持っています。

笠井委員

私は国民の認識はどうかというふうに伺ったのですが、その点についてはお答えいただけなかったのかなと思います。

私としては、その乖離については、現実を憲法に合わせるということで解決するということが一番の道ではないかなというふうに思っておりますが、そのことを申し上げておきます。

辻元委員に伺いたいと思うのですが、九十六条二項について先ほどお話がありました。それに関連してなんですけれども、前回の委員会で私が発言して、日本国憲法は基本原則を変更する改憲を許していないということを終始述べたのに対して、自民党の葉梨委員から批評という形で、私はフェアに答弁を求めていただければよかったなというふうに思ったんですが、質問でなく批評という形でコメントがあって、スロバキア、スペインのことを挙げられて、日本国憲法九十六条には基本原則を変えてはならないという規定はないという趣旨で発言されました。

私は、外国の憲法を見る場合には、それぞれの国の成り立ち、それから歴史や文化、政治的経験などが背景にあるということで、それぞれだということを考慮すべきことは言うまでもないと思うので、その点では、御一緒にヨーロッパへ行ってもそういうことを感じてきたと思うんですが、そもそもスロバキアについては憲法改正の国民投票制度はありません。スペインについて言えば、基本原則を変える場合の規定というのがあるわけですけれども、しかし、そういうふうにスペインで言っているような規定が日本国憲法にないから、日本では基本原則を変えていいんだということには決してならないんじゃないかというふうに思うのです。

そこで辻元委員に伺いたいのは、先ほど改正限界ということを言われました。九十六条二項では、「この憲法と一体を成すものとして、」ということで明確に規定している。これは憲法学界でも憲法の同一性、継続性を前提としているとされております。この規定自体が現憲法の基本原則を変えてはならないという、ある意味非常に厳格な規定になっているというふうに私は思うのですけれども、その点についてどういうふうにお考えか、改めて伺いたいと思います。

辻元委員

この点は、きょうの私の基調発言でも後半で時間を割いて申し上げた点で、「一体を成すもの」ということをどう見るかと。私は、笠井委員がおっしゃるように、基本原則は変えることが難しいという立場をとっております。この点をしっかり議論した方がいいという提起もさっき申し上げたんですね。

それで、変えたいと思っている人は、いや、変えれんねん、何とでもできんねんという意見が多くて、変えたくないと思う人は「一体を成す」というところは基本原則は無理じゃないかというような言われがちな傾向があるんですけれども、私は、この「一体を成すもの」ということが規定されている、それから、先ほど紹介しました前文に主権在民の原理が書かれていて、「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」という、この意味は何かということはしっかり議論を深めるべきだと思います。意見は、同意見です。

それから、どこの国でもという話についても一言申し上げたいんですけれども、例えばフランスですと共和政体は改正の対象としないとか、ドイツの場合は改正の限界は人間の尊厳の不可侵、国民主権、連邦制の原理、立法における州の原則等、いろいろですね、それぞれの国の事情によってやはり改正の限界というのは憲法につきものの議論であるというように私は考えております。

笠井委員

もう一つだけ伺いたいんですが、今、基本原則ということを言われました。私も、日本国憲法の基本原則という点では、国民主権、恒久平和主義、基本的人権の尊重、それに加えて議会制民主主義や地方自治の原則も含まれると考えておりますけれども、いずれも戦前の歴史、痛苦の記憶に立ったものだと思います。

とりわけ前文と九条については、二度と戦争をする国にならないと誓った国際的な公約であって、戦争のない新しい世界を展望して、その先駆けとなるという決意が込められているということで、私はこれは変えてはならないものだというふうに思うのですが、改めて辻元委員に、憲法の重要な基本原則である九条の持つ内外での今日的意義について触れていただければと思うのですが、いかがでしょうか。

辻元委員

九条は、私たちは守るという立場です、現状のまま守るという立場です。それは、過去の戦争をどう受けとめるかということだけではなくて、これも以前委員会で申し上げましたが、日本は人道国家たらんということが非常に多くの人の望んでいることではないかというように考えますので。

九条の意味の再定義と言っているんですけれども、今、イラク戦争など混沌とした情勢、暴力の連鎖がとまらない社会の中で、日本はあらゆる紛争を武力で解決しないというからこそ紛争の和解や調停、紛争予防などの面で活躍ができると考えています。これは日本が持つ一つの特質なんですね。今、こういう時代であればあるほど、そういう役割というのが非常に重要になってくる時期だと思うんです。

ですから、私は、憲法九条を武器にしてと言ううと物騒ですけれども、紛争の和解や調停、そして紛争予防というところで日本が国際貢献していくということが今しっかりと論じられ、その方向に行った方がいいなという意味で、九条の、日米安保の再定義と言う人もいますけれども、憲法九条の再定義の時期ではないかというふうに思っています。