つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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2006年10月26日 日本国憲法調査特別委員会

2006.10.26

議事録

165-衆-日本国憲法に関する調査…-3号 平成18年10月26日

辻元委員

社会民主党・市民連合、社民党の辻元清美です。

本日は、私は、憲法をめぐります今の状況と、それから、両法案提出者に対しまして、果たしてこの国民投票法案なるものが単なる手続法と言えるのか、そして公平中立な法案になっているのかという点を質問していきたいと思います。

私は、最近、ここ一、二年、憲法講演ということで、私どもは護憲の立場ですけれども、全国を回ることが多いんです。そのときに必ず憲法というのは皆さんにとって一体何でしょうという質問をいたします。といいますのも、憲法について日ごろ自分たちの暮らしや歴史にとってどういうものであるかということを考える機会が、日常生活では少ないように思うんですね。やはり憲法というものに対する認識が一致していないと、幾ら憲法にかかわるいろいろな議論を深めても、それぞれイメージがばらばらなままになってしまいます。ですから、まず憲法とは何かということを提出者の皆さんに改めて問いたいと思います。

憲法というのは、よく憲法は国民が守らなければならない決まりだと誤解されている方がいらっしゃいます。そうではなくて、憲法というのは、国民の権利を守る、そのために、政府が、国家機関ですね、その権力の行使の枠を決める、制限をするというのが憲法の持つ意味だと思います。これは皆さん変わりがないと思いますが、民主、公明、自民のそれぞれ、自民党はぜひ大先輩の保岡委員にお伺いしたいと思います。

枝野議員

憲法は、主権者が為政者、政をなす者に対して発する命令である。これは、いい悪いじゃなくて、定義でありますので、為政者が国民に対して発する命令は憲法ではありません。これは定義の問題ですので、ほかの御意見があることがおかしいと思っています。

あえて言いますと、大日本帝国憲法も当時の主権者である天皇から為政者に対する命令でありましたし、現行憲法は主権者は国民でありますので、主権者国民から為政者である我々国会や内閣などに対する命令です。ちなみに、十七条憲法も、主権者の代行であった聖徳太子、摂政から当時の為政者に対する命令でありまして、これは国内的にも一貫している定義でありますし、国際的には、当然のことながら国民に対する命令が憲法だなんと言ったら国際的にばかにされる、こういう話であります。

斉藤(鉄)議員

憲法は、国民が権力者に対してこうしなければならない、規制をするというのが基本的な考え方であると思います。

それに加えて、やはり憲法というのは普通の法律の上に立つものとして、ある意味で国のあり方というものを、我々の理想を目指す、こういう国をつくるということも含まれてしかるべきというふうに考えております。

保岡議員

憲法の国民主権主義という点からいえば、国民の最高規範でございますから、権力行使の制限規範という、先ほど来の近代憲法の原則というのは当然あると思います。

ただ、最近の憲法は多様な機能を持っておると私は思っております。それは、一つには、国家機関を定め、そしてそれに授権する、行政、立法、司法と。それぞれ裁判所、政府のいろいろなお役所、それからまた国会、そういった組織について授権する。こういう機能も持っておれば、また、さらに進んで、国民と国家は単に対立するものではなくて、協働関係に立つものであるという観点から、国家の目標を設定したり、あるいは国民の行為規範という側面もあるかと思います。例えば、この憲法においても、納税の義務、教育を保護する子女に受けさせる義務、あるいは勤労の義務、国家がしかるべき正しい権力行使をするような命令に服すると同時に、国民もまたそれに協力して一定の義務を負うことを国民みずから憲法の中に定めている要素がある。

そういった意味では、生存権など、これも一つのそういう国民の責任において自分たちが受ける権利というものを政府に求めているという点もありますし、また一方、公共の福祉の原理という点で権利と義務、責任というもののバランスをとろうとしていることも、この憲法に権利制限の公共福祉の原理の中にそれがあらわれていると思います。

辻元委員

保岡委員の御答弁だけちょっとニュアンスが違ったように思います。

私はなぜこのことを聞きますかといいますと、昨年、自民党が新憲法草案なるものを出されました、その中でこの手続法の議論も進められていることに一抹の危惧を覚えているからなんです。それは、あの新憲法草案の中には、前文に、国民に対して国を守る責務を共有しとか、まるで国家から国民に対しての責務を課すというような方向に憲法のあり方そのものを変えてしまっているというような節があるからなんです。

私は、これは本会議で枝野議員に民主党の提出者としてこの点いかがかということをお伺いしました。そうしたら、枝野議員は、それに対して「憲法の定義を全く理解していない論外のものである」という御答弁をされているわけなんですね。

私は、少なくとも、権力を縛るものであるという共通認識は提案者の上で統一していただきたいと思います。それぞれ、その先の憲法、論じている憲法に対して、いろいろなばらばらのイメージで提出者が法案を出していただくというよりも、きちっとその部分を統一した見解として持っていただきたいと思います。そして、その議論は深めるべきだと思います。

なぜかといいますと、国会の中でも、国会議員、政治家が憲法を守らなきゃいけない立場なのに、憲法は国民に守らすルールやろみたいに勘違いをしているような国会議員の方々も見受けるわけですね。このような国会の状況の中で憲法をどうするかという手続法を論じるということは、私は非常な不幸だと思っておりますので、そもそも憲法とは何かという議論を私たちはまず深めるということが非常に重要であるということを最初に指摘させていただきたいと思います。

さて、その上で、安倍政権になって、私は憲法をめぐる状況は大きく変わったのではないかと思っております。それはなぜかといいますと、今、この時点でも、例えばどういう法案が議論になっているか。一つは、教育基本法のことが議論になっています、愛国心の問題が取り上げられています。さらには、防衛庁を防衛省に格上げする法案とか、それから共謀罪の創設や、アメリカ軍との集団的自衛権の行使への関与などが政治の課題として大きく上がってきています。これらは、私は、戦後の日本国憲法下での日本の国のあり方そのものを変えていこうという方向性を持った政策ではないかと思っています。その総仕上げとして憲法改正ということを射程に入れながら、特に政権党である自民党の皆さんは進んでいらっしゃるのではないかと思うんです。

ですから、今こういう政治状況のもとで手続法と改憲への政治的な流れは別だと言っても、これはもう別だと言えない状況に達している中での議論であるということをお認めになった方がいいと思います。

さて、そこでお伺いします。

自民党の中で、新憲法草案というものをつくって改憲が必要だ必要だと熱心でいらっしゃる方と、はよ国民投票法案をつくらなあかん、つくらなあかんと熱心な方が重なっているんですよ。でも、聞きますと、手続法と改憲は別なんだとおっしゃるわけです。

船田さんにお伺いしたいと思います。

船田委員は、自民党の中でも、この憲法の問題については、憲法の改正案起草委員会の委員をされてリーダー的な存在であったと思います。一方、この法案の提案者にもなっていらっしゃるわけですよ。さっきから改憲と手続法は別なんだとおっしゃっていますけれども、やはり堂々と言われた方がいいと思います。私たちは改憲をしたい、だから早く手続法も成立させるべきだと思っていると。そこから議論を始めた方が、何だかわざと、改憲が必要だということを前に出すと国民が何か心配するんじゃないかな、だから手続法は別なんだと言っていらっしゃるように見えて仕方がないんです。堂々とおっしゃったらいかがですか。