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福島第一原子力発電所における「凍土壁」の解凍要件及び撤退要件に関する質問主意書

2014.6.2

質問主意書

平成二十六年六月二日提出
質問第一九二号

福島第一原子力発電所における「凍土壁」の解凍要件及び撤退要件に関する質問主意書
提出者  辻元清美

福島第一原子力発電所における「凍土壁」の解凍要件及び撤退要件に関する質問主意書

 汚染水問題の早急な完全解決は、日本の政府と国民が世界に負った責務である。
 原子力災害対策本部は、平成二十五年九月三日、「東京電力(株)福島第一原子力発電所における汚染水問題に関する基本方針」のなかで、「廃炉・汚染水対策は、国が前面に出て、適切に進展するよう工程の内容と進捗の確認を行う。その際、汚染水処理対策委員会などにおける専門的知見を活用して、潜在的なリスクを洗い出し、不断に具体的な予防対応や緊急対応のあり方について検討する。各対策の実施時期については、作業工程の精査や、技術の応用・転用等、あらゆる方策を検討し、可能な限り、前倒しを図る。」とし、「技術的難易度が高く、国が前面にたって取り組む必要があるものについて、財政措置を進めていくこととし、凍土方式の陸側遮水壁の構築及びより高性能な多核種除去装置の実現について、事業費全体を国が措置する。まずは予備費を活用して、事業開始を促す」と述べて、「汚染源である高濃度汚染水(注:建屋内に存在する燃料デブリを冷却した水:同本部平成二十五年十二月二十日の追加対策)に新たな地下水が混ざって汚染水が増えるという事態を避けるため、(略)原子炉建屋の周りを囲む凍土方式の陸側遮水壁を設置」し、「平成二十六年度中を目途に運用開始」し、「建屋地下内に滞留する汚染水を完全に除去(ドライアップ)するため、建屋の止水(注:地下水が流入する建屋の隙間等を塞ぐこと)等」の対策を実施するとしている。
 茂木経済産業大臣は、平成二十五年九月三十日の衆議院経済産業委員会において、馬淵澄夫議員が、粘土壁等の恒久的な「第二壁の検討を同時に行うべきではないか」との質問に対し、平成二十五年五月三十日の汚染水処理対策委員会報告に「格納容器の補修が完了し、建屋内の汚染水が完全に取り除かれ、建屋内の除染が完了した時期(平成三十二年頃を予定)には、比較的高い遮水能力を持ち、維持・管理が比較的容易な粘土による遮水壁へと入れ替えを行うことも検討すべき」(同三十五ページ)との箇所を引用し、「フィージビリティスタディもしっかりやっていき、効果が現れない場合には、粘土方式でどこかで切り替える」(茂木経産大臣発言)、「(凍土壁が、リスクが高いと判明したときは、凍土壁を内側にして取り巻く「第二壁」を)やりませんとは言っていません」と答弁している。
 原子力規制委員会特定原子力施設監視・評価検討会において、東京電力は、凍土遮水壁の事業期間は「建屋内止水処理が完了する約七年後までとし、建屋内止水処理の完了後は、速やかに凍土を解凍する」(平成二十六年三月三十一日第十九回資料(凍土方式遮水壁の概要について(参考資料))としている。これに対し、更田原子力規制委員会委員が、第二十一回検討会(平成二十六年五月二日)に、「止水が、いつまで経ってもできなかったら、その時は何らかの撤退を考えると、そういう意味ですか」との質問に、松本純東京電力原子力立地本部福島第一対策部長は、「指摘のとおりであります」と答弁した。
 そこで、凍土壁の解凍要件、撤退要件について、以下のとおり質問する。
一 経済産業省は、凍土壁は、仮設構造物であるとの認識を有しているか。
二 第二十一回原子力規制委員会特定原子力施設監視・評価検討会(平成二十六年五月二日)において、更田原子力規制委員会委員は、「凍土方式は、恒久的対策ではなく、ある一定期間遮水するという性質のものであること」と指摘している。このように、凍土壁は仮設のものであるから、仮に凍土壁が完璧に機能したとしても、いつかは解凍される性質のものであり、解凍されるまでの間に、別途、恒久的遮水工事が完了していなければならない。東京電力は、同検討会で、「凍土壁の完了要件は、建屋内の止水である」と答弁している。「凍土壁の完了要件は、建屋内の止水である」という点について、経済産業大臣の認識も同一か。
三 「凍土壁の完了要件は、建屋内の止水である」とき、経済産業省では、その「建屋内の止水」として、どのような工事を検討・予定していたか。その検討は、どこで、何時から、どのように検討されてきた、あるいは検討されているのか。具体的に示されたい。その際、「建屋内の止水」は、仮設的な工事ではなく、恒久的な工事であるという認識か。
四 第十九回原子力規制委員会特定原子力施設監視・評価検討会(平成二十六年三月三十一日)の資料5-1「凍土方式遮水壁の概要について」七頁の全体スケジュールにおいて、平成二十七年四月過ぎから平成三十二年度までの間、「維持」という記述があるが、ここで「維持」とは具体的にどのような作業を指しているのか。そこには、「汚染水の完全な除去(ドライアップ)」や「建屋内の止水」等は含まれているのか。それとも、「汚染水の完全な除去(ドライアップ)」や「建屋内の止水」等は別スケジュールで管理されるのか。そうであれば、その詳細を示されたい。
五 平成二十五年九月三十日の経済産業委員会において、茂木経済産業大臣は、平成二十五年五月三十日に提出された汚染水処理検討委員会報告書の「約七年間で建屋内止水を完了させる」との部分を引用して答弁しているが、約七年間で「建屋内の止水」を終えることができるとした根拠は何か。更田委員も、前記第十九回及び第二十一回検討会で、「極めて困難と予想される」と指摘している。政府の機関・委員会で、平成二十五年九月三十日までに、「建屋内の止水」の方策およびその困難性について、具体的に検討していたのか。検討していたのであれば、どの機関・委員会で、いつ、どのように、検討されたのか、具体的に回答されたい。
六 「建屋内の止水」の方策について、経済産業省が民間に委託して検討している事実はあるか。あるとすれば、委託契約時、委託先、委託事項、委託金額を明らかにされたい。
七 「建屋内の止水」のために必要な工程・作業、その困難性について
 1 経済産業省は、現時点において、「建屋内の止水」のために必要な工程・作業、その困難性について、どのように認識しているのか、具体的に回答されたい。
 2 損傷した原子炉圧力容器、一次格納容器、二次格納容器(原子炉建屋)は数百カ所にとどまらない穴が開き、水漏れ状態が続いていると考えられる。これらの状態を政府は把握しているのか。
 3 タービン建屋、廃棄物処理建屋、原子炉建屋内部には、突起と凹みだらけの数十の小部屋、大部屋があり、壁面と床面、配管まわりにはひび割れや穴が多数存し、かつ、著しく高い密度の放射性物質を含んだヘドロ等が付着していると想定される。これらの状態を政府は把握しているのか。
 4 損傷燃料デブリを含む、原子炉建屋底部の状態が不明であるため、「建屋内の止水」工事については作業量や困難性を算出するのが困難であると考えられる。にも関わらず政府が「約七年間で建屋内止水を完了させる」としているのは、損傷燃料デブリを含む、原子炉建屋底部の状態について、政府が正確に把握しているからと考えてよいか。そうであれば、原子炉建屋底部の状態について公開されたい。
 5 「建屋内の止水」については、作業現場の放射線レベルが極めて高い。政府は、人的作業での止水工事は可能という認識か。人的作業が不可能であれば、ロボット化を検討しているのか。検討しているのであれば、どの機関・委員会で、いつ、どのように、検討されたのか、具体的に回答されたい。
八 もし、建屋内の止水が完了していなければ、たとえドライアップを完了していたとしても、凍土壁を解凍すればまた建屋内に地下水が入ることになり、何の解決にもならない。したがって、止水が完了できていないまま凍土壁を解凍するには、凍土壁に代わる、恒久的な遮水壁が設置されている必要があると考えるが、経済産業省の認識を示されたい。
九 凍土壁設置後、いかなる状態をもって、「止水が完了した」と評価するのか、経済産業省の認識を回答されたい。
一〇 平成二十五年五月三十日の汚染水処理対策委員会報告における「格納容器の補修が完了し、建屋内の汚染水が完全に取り除かれ、建屋内の除染が完了した」状態と、「建屋の止水」が完了された状態とは同じことを指すのか。
一一 前記資料「凍土方式遮水壁の概要について」では、平成二十七年度から平成三十二年度までの六年間を「維持」期間としているが、止水が完了しない場合、いつまでこれを延長することを想定しているのか、回答されたい。
一二 茂木経産業大臣発言における「効果が現れない場合」とは、どのような状態を想定しているのか。また、「効果が現れない」という判断は、だれが、どのように、どのような基準で行うのか。
一三 凍土壁からの撤退判断は、政府が行うのか、あるいは、東京電力が行うのか、回答されたい。

 右質問する。