つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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内閣法制局作成の「憲法関係答弁例集」に関する質問主意書

2014.4.25

質問主意書

平成二十六年四月二十五日提出
質問第一四五号

内閣法制局作成の「憲法関係答弁例集」に関する質問主意書
提出者  辻元清美

内閣法制局作成の「憲法関係答弁例集」に関する質問主意書

 内閣法制局作成の「憲法関係答弁例集」(二〇一四年四月二十三日、辻元清美に提出)は、憲法九条解釈に関して政府が答弁する場合に必要な論理と資料について、内閣法制局が整理したものである。集団的自衛権をめぐる議論は、これだけの解釈体系の上にたったものであり、部分だけを差し替えれば済むというものではない。また、現時点で「我が国に対する急迫不正の侵害」が発生する可能性がある以上、現段階の憲法第九条をめぐる憲法解釈が明確に示されている必要がある。
 当該資料には下記のような記述がある。
 (1) 「自衛隊」については、「我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織としての自衛隊は、憲法に違反するものではない」(内閣法制局作成「憲法関係答弁例集」一頁)。
 (2) 「自衛権発動の三要件」は、「①我が国に対する急迫不正の侵害があること、すなわち武力攻撃が発生したこと、②この場合にこれを排除するために他の適当な手段がないこと、③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」(同一三頁)である。したがって、「我が国の自衛権の発動が許されるのは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られる」(同二四頁)。
 (3) 「我が国に対する武力攻撃」とは、「基本的には我が国の領土、領海、領空に対する組織的計画的な武力の行使」(同一八頁)である。
 (4) 「我が国に対する武力攻撃」の発生時点とは、「我が国に対する武力攻撃のおそれがあるだけでは足りないが、攻撃による現実の被害の発生まで要するものでもなく、『武力攻撃が始まった時(相手方が武力攻撃に着手した時)』」(同二四頁)である。
 (5) 「自衛隊の行動の地理的範囲」は、「我が国に対し外部からの武力攻撃がある場合、自衛権の行使として認められる限度内において、我が国の領土、領海、領空においてばかりではなく、公海、公空においてこれに対処することがあっても、それは、憲法の禁止するところとは考えられない」(同二九頁)。また、「武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる『海外派兵』は、一般に自衛のための必要最小限度を超える(我が国に対する武力攻撃が発生した場合における自衛権の行使を超える)ものであって、憲法上許されない(同二九頁)」。「仮に、他国の領域における武力行動で自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではない」(同二九頁)。
 (6) 憲法九条第一項の「武力の行使」とは、「基本的には、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」(同四三頁)であり、「武器の使用を含む実力の行使による概念」(同四九頁)である。「同条の下においては、このような『武力の行使』は、いわゆる自衛権発動の三要件が満たされた場合以外は禁じられている」(同四九頁)。
 (7) 憲法九条第一項の「国際紛争」とは、「国家または国家に準ずる組織の間で特定の問題について意見を異にし、互いに自己の意見を主張して譲らず、対立している状態をいう」(同二六三頁)。
 (8) 憲法九条第二項の「戦力」の意味について、「憲法第九条は、我が国が主権国として持つ固有の自衛権まで否定しているものではなく、この自衛権の行使を裏付ける自衛のための必要最小限度の実力――自衛力――を保持することは、もとより同条の禁ずるところではない」(同一一七頁)。また同条第二項で保有することを禁止している「戦力」とは、「自衛のための必要最小限度の実力を超える実力をいうもの」(同一一七頁)である。したがって、「自衛隊は、憲法が許容する自衛のための必要最小限度の実力としてのみ認められるべきものである」(同一一七頁)。
 (9) 憲法九条第二項が否認している「交戦権」は、「交戦国が国際法上有する種々の権利の総称であって、相手国兵力の殺傷及び破壊、相手国の領土の占領、そこにおける占領行政、中立国船舶の臨検、敵性船舶のだ捕等を行うことを含むもの」(同一四三頁)である。他方、我が国は「自衛権の行使に当たっては、我が国を防衛するための必要最小限度の実力を行使することが当然認められるのであって、その行使は、交戦権の行使とは別のものである」(同一四三頁)。
 (10) 「集団的自衛権」は「我が国に対する急迫、不正の侵害に対処するものではなく、他国に加えられた武力攻撃を武力で阻止することを内容とするものであるので、国民の生命等が危機に直面している状況下で(個別的)自衛権を行使する場合とは異なり、武力の行使を禁じた憲法第九条の下でなおこれを行使することが許されるとする法的根拠はないから、集団的自衛権の行使は憲法上許されない」(同一五一~一五二頁)。
 (11) 「集団安全保障」については、「我が国としては、最高法規である憲法に反しない範囲内で、憲法第九八条第二項に従い、国連憲章上の責務を果たしていくことになるが、もとより、集団安全保障に係る措置のうち、憲法第九条によって禁じられている『武力の行使』又は『武力による威嚇』に当たる行為については、我が国としてこれを行うことが許されないのは、当然である」(同一七九~一八〇頁)。
 (12) 「憲法と条約の関係」については、「憲法の尊重擁護義務を負っている国務大臣で構成される内閣が憲法に違反する条約を締結することができるとすることは背理であること、また、条約締結手続が憲法改正手続よりも簡易であること等からして、一般には憲法が条約に優位すると解される。以上のことは、国連憲章との関係でも同様である」(同一八〇頁)。
 (13) 「国連軍への参加」については「国連憲章第四十二条及び第四十三条に基づく国連軍への我が国の参加については、これまでの憲法第九条の解釈・運用の積み重ねを踏まえて判断する必要がある」すなわち、「①自衛隊については、我が国の自衛のための必要最小限度の実力組織であり、したがって、憲法第九条に違反するものではないこと。②武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超える(我が国に対する武力攻撃が発生した場合における自衛権の行使を超える)ものであって憲法上許されないこと。③憲法第九条の下においては、我が国に対する武力攻撃が発生した場合における自衛権の行使を除き、武力の行使は禁じられているところ、集団的自衛権の行使については、我が国に対する武力攻撃に対処するものではなく、他国に加えられた武力攻撃を我が国が実力をもって阻止することを内容とするものであり、憲法上許されないこと。④国連の平和維持隊の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、国際平和協力法におけるいわゆる五原則(停戦の合意等)のような格別の前提を設けることなく、これに参加することは、憲法上許されないこと。以上のような憲法第九条の解釈・運用の積み重ねから推論すると、我が国としてこれに参加することについては、憲法上問題が残るのではないかと考える」(同一八九頁)。
 以下、質問する。
一 上記(1)~(13)について現時点での政府の解釈に変わりはないか。変更があれば、変更箇所と変更した理由について明らかにされたい。
二 「集団的自衛権は、国連憲章において初めて登場した概念であり、昭和三十年代においては、その内容等につきなお議論があった」(同一五二頁)とあるが、「実力の行使であっても他国の領域以外でなら許される」と述べた答弁は、現在に至るまで存在するか。
三 昭和三十年代における政府見解は、「当時の政府答弁でも、仮に集団的自衛権に実力の行使以外のものが含まれるにしても、『武力行動』、すなわち実力の行使については、その地域を問うことなく、憲法第九条の下では許されない旨が述べられている」「その後、学説等における議論が深められ、今日においては、集団的自衛権は、『自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する国際法上の権利』であるとする理解が、一般に定着したことから、政府としては、基地提供その他の便宜の供与は、他国の軍隊に対するものであっても、基本的には集団的自衛権の行使に当たらず、憲法第九条の禁ずるところでもないと解する一方、集団的自衛権の行使としての実力の行使は、その地域のいかんを問わず、憲法第九条の下では許されないと解してきた」(同一五二~一五三頁)で間違いないか。
四 「我が国に対する武力攻撃が発生した場合」以外に自衛隊がその実力を行使した場合は「我が国を防衛するための必要最小限度の実力を行使すること」を超えると判断されるため、自衛隊は憲法第九条第二項で保有することを禁止しているところの「戦力」となり、すなわち違憲となるという解釈で間違いないか。
五 「我が国に対する武力攻撃が発生した場合」以外に自衛隊がその実力を行使した場合は「我が国を防衛するための必要最小限度の実力を行使すること」を超えると判断されるため、その行使は「自衛権の行使」ではなく憲法第九条第二項で否認されているところの「交戦権の行使」となるという政府見解で間違いないか。
六 「憲法関係答弁例集」には「仮に憲法第九条が集団的自衛権の行使を禁じていないと解するとした場合、同条第二項の戦力の不保持や交戦権の否認の規定との関係を整合性を保ちつつ理解することも困難になる」(同一五二頁)とあるが、何がどのように困難になるのか説明されたい。
七 自衛権発動の三要件である「我が国に対する急迫不正の侵害があること」を「我が国および我が国と密接な関係にある国に対する急迫不正の侵害があること」と解釈変更することは可能か。そう解釈した場合、上記(1)~(13)についての政府見解はどう変わるのか。個々に説明されたい。
八 「我が国に対する武力攻撃」の発生時点を「我が国に対する武力攻撃のおそれがあるとき」と解釈変更することは可能か。そう解釈した場合、上記(1)~(13)についての政府見解はどう変わるのか。個々に説明されたい。
九 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の北岡伸一座長代理は、憲法第九条第一項における「国際紛争」を「日本が当事者である国際紛争を指すと解すべきだ」(二月二十一日、日本記者クラブ会見)と発言している。このような解釈変更は可能か。そう解釈した場合、上記(1)~(13)についての政府見解はどう変わるのか。個々に説明されたい。

 右質問する。