つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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前航空幕僚長の論文と防衛装備品の調達に関する質問主意書

2008.11.6

質問主意書

前航空幕僚長の論文と防衛装備品の調達に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。
平成二〇年一一月六日
提出者  辻元清美
衆議院議長  河野洋平殿

前航空幕僚長の論文と防衛装備品の調達に関する質問主意書
田母神俊雄前航空幕僚長は、民間企業が主催する懸賞論文に、政府見解と異なる内容の、「日本は侵略国家であったのか」と題する論文を応募するに先立ち、統合幕僚学校長として、航空自衛隊幹部学校幹部会発行の『鵬友』に下記のような論文を掲載している。「航空自衛隊を元気にする一〇の提言――パートⅡ」(『鵬友』二九巻六号、二〇〇四年三月)=以下「論文一」、「航空自衛隊を元気にする一〇の提言――パートⅢ(その2)」(『鵬友』三〇巻三号、二〇〇四年九月)=以下「論文二」。それらには、下記のような記述がある。
(記述一)「従来から自衛隊に物品等を納入している国内企業からみれば、当然自衛隊に対する売り上げが減るので、自衛隊にいろいろと相談にくる。『何とか当社の製品を買ってもらえないか』(中略)これらの会社からの依頼事項については、防衛産業・技術基盤の維持の観点から、担当者は頑張らなければならない。空幕の装備部長をしているときに(中略)私は、『頼まれたら頑張れ』と指導していた。(中略)しかし、みんなから一斉に頼まれたらどうしようもないではないかという人がいる。そのときは二度、三度と頼みにくる人を優先してあげてはどうか」(論文一、六―七頁)。
(記述二)「指揮官が部下や部隊から頼りにされるのと同じように、航空自衛隊は、自衛隊の戦力発揮を支える防衛産業から頼りにされる存在でなければならない。こう言うと自衛隊が一企業に加担していいのかという意見が出てきそうであるが、自衛隊と防衛産業はそんな単純な関係ではないのだ。防衛産業は自衛隊の戦力の一部なのである」(論文二、二〇―二一頁)
(記述三)「旧調達実施本部における調達不祥事により、防衛調達の適正化について検討が行われ、その中で『競争入札の強化』の方向性が打ち出された。これに基づいてその後具体策を推進中であるが、私はやや行き過ぎているという気がしている。それは防衛装備品を製造するいわゆる防衛産業を守るという視点が欠落しているのではないかということである」(論文二、二一頁)
(記述四)「我が国は諸外国が保有する軍事工廠を保有せず、自衛隊の戦力の維持整備を民間の防衛産業に依存している。また我が国の防衛産業は武器輸出を認められず、自衛隊だけが顧客となるため、少量生産になり、装備品の価格はどうしても割高になる。これらの特性を考えると、自衛隊は『防衛産業を守る』ということを国家政策として強く打ち出すことが必要ではないかと思う。(中略)競争入札の強化一辺倒では我が国の防衛産業の経営は立ち行かない。(中略)だから自衛隊はいま勇気を持って『防衛産業を守る』ということを内外に宣伝する必要があると思う。たとい価格が割高であっても、あえて国産にするという選択をしなければならないときもある。経費を安く抑えることだけが国益にかなうのではない」(論文二、二一―二二頁)
(記述五)「またいわゆる防衛産業ではないが、自衛隊が多くの外国製装備品を使用していることから、我が国の商社は、その輸入業務などで自衛隊との取引を実施している。今回のインド洋やイラクへの自衛隊派遣に当たっても、海外における契約業務の代行などで我が国の商社が活躍してくれている。(中略)防衛産業に守ると言った場合、それは国産にするということであり、武器輸出が出来ない我が国においては、それによって防衛に関する商社の売り上げは減少することになる。自衛隊としては一方でまた自衛隊の任務遂行を支えている日の丸商社に対し申し訳ない気がする。いま与党などで武器輸出緩和の動きがあるが、私個人としてはこの動きを歓迎している。我が国が武器輸出が出来るようになれば、防衛産業を守ることと商社の利益は対立しなくなる」(論文二、二二頁)
また二〇〇八年一一月五日、守屋武昌前防衛事務次官が、防衛装備品の調達をめぐる汚職事件で実刑判決を受けた。防衛省によれば、守屋前事務次官はこれまで航空機部品など二二件で計約五億七〇〇〇万円の過大請求が確認されており、見積書偽造などで正規代金の二~三倍を受け取っていたという。田母神前航空幕僚長がこうした汚職に関与していたのではという疑いについても、政府は晴らす必要がある。
従って、以下、質問する。

一 田母神前航空幕僚長の論文と防衛装備品の調達について
1 「記述一」にあるように、空幕の装備部長が、一般競争入札を経ずに、特定の企業の商品購入を決めることは自衛隊法および自衛隊員倫理規定に違反するのではないか。麻生首相の見解を示されたい。
2 「記述一」にあるように、「頼まれたら頑張れ」「二度、三度と頼みにくる人を優先してあげてはどうか」と、一般競争入札を経ずに、特定の企業の商品購入を決めるよう奨励するのは、自衛隊法および自衛隊員倫理規定違反を奨励していたことになるのではないか。麻生首相の見解を示されたい。
3 実際に「二度、三度と頼みにくる人を優先」するなど、自衛隊法および自衛隊員倫理規定違反の疑いのある行為が自衛隊内でどれくらい行われていたのか、政府は把握しているか。把握したとすれば、どのような処分を行ったのか。把握していなかったとすれば、いますぐ調査すべきと考えるがいかがか。
4 麻生首相は、「記述二」にあるように、「指揮官が部下や部隊から頼りにされるのと同じように、航空自衛隊は、自衛隊の戦力発揮を支える防衛産業から頼りにされる存在でなければならない。(中略)防衛産業は自衛隊の戦力の一部なのである」との認識を共有しているのか。また、日本政府の見解はどうか。
5 麻生首相は、「記述三」にあるように、「競争入札の強化の方向性に基づいた調達不祥事の防止策は、「防衛装備品を製造するいわゆる防衛産業を守るという視点が欠落している」から「やや行き過ぎている」との認識を共有しているのか。また、日本政府の見解はどうか。
6 当時の自衛隊の間で、このような認識は広く浸透していたのか。そうであれば、現在の調達不祥事の防止策は、こうした認識に基づいて再検討されたのか。日本政府は、調達不祥事の防止策についてあらためて再チェックすべきと考えるがいかがか。
7 麻生首相は、「記述四」にあるように、「自衛隊は『防衛産業を守る』ということを国家政策として強く打ち出すことが必要ではないか」との認識を共有しているのか。
8 「記述四」にあるように、自衛隊が「『防衛産業を守る』ということを内外に宣伝」した事実はどれだけあるのか。具体的に示されたい。
9 「記述四」に、「たとい価格が割高であっても、あえて国産にするという選択をしなければならないときもある」とあるが、そうした判断を行っていたのは誰か。また、判断の根拠は何か。本来競争入札にすべき案件を、「たとい価格が割高であっても、あえて国産にするという選択」をしていたとすれば、それは自衛隊法および自衛隊員倫理規定に違反するのではないか。麻生首相の見解を示されたい。
10 実際にそうした判断が行われていたかどうか、日本政府は調査しているか。いたとすれば、どのような処分をしていたのか。していないとすれば、いますぐ調査すべきと考えるがいかがか。
11 「記述五」にあるように、たとえ個人的見解と断った上であっても、現職の統合幕僚学校長が「いま与党などで武器輸出緩和の動きがあるが、私個人としてはこの動きを歓迎している」と統合幕僚学校長名で隊内誌に書くことは、自衛隊法および自衛隊員倫理規定に違反するのではないか。麻生首相の見解を示されたい。
12 このような論文が統合幕僚学校長名で出されていることは、適切であったと考えるか。麻生首相の見解を示されたい。
13 このような論文を書く人物が統合幕僚学校長、そして航空幕僚長という要職についたことは、適切であったと考えるか。麻生首相の見解を示されたい。
14 このような論文を書く人物を航空幕僚長という要職に任命したことで、守屋前事務次官の汚職事件を生むような防衛省の体質を強めたと考えるがいかがか。そうであれば、田母神前航空幕僚長を航空幕僚長に任命した安倍元首相の任命責任はあると考えるがいかがか。麻生首相の見解を示されたい。
15 このような論文を書く人物を航空幕僚長という要職に引き続き任命したことで、守屋前事務次官の汚職事件を生むような防衛省の体質を強めたと考えるがいかがか。そうであれば、田母神前航空幕僚長を航空幕僚長に引き続き任命した麻生首相の任命責任はあると考えるがいかがか。麻生首相の見解を示されたい。
二 守屋前事務次官の汚職事件との関与について
1 田母神前航空幕僚長は、守屋前事務次官が関与した航空機部品などの過大請求、見積書偽造などに対し、決済を行ったのか。そうでなければ、守屋前事務次官の過大請求、見積書偽造などに対し、決済を行ったのは誰か。決済した人物の責任はどう問われるのか。決済したのが誰であれ、航空幕僚長であった田母神前航空幕僚長の責任はどう問われるのか。
2 田母神前航空幕僚長が決済を行ったのであれば、田母神前航空幕僚長は「過大請求、見積書偽造」だと知っていたのか。知っていたのであれば、田母神前航空幕僚長の責任はどう問われるのか。分からなかったとすれば、田母神前航空幕僚長の責任はどう問われるのか。
3 決済の有無を含め、守屋前事務次官の「過大請求、見積書偽造」など当該事件と田母神前航空幕僚長との関連について、日本政府はどのような調査を行い、どのような結果が出ているのか。
右、質問する。