つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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前航空幕僚長の論文「航空自衛隊を元気にする一〇の提言――パートⅢ(その1)」についての麻生首相の認識に関する質問主意書

2008.11.6

質問主意書

前航空幕僚長の論文「航空自衛隊を元気にする一〇の提言――パートⅢ(その1)」についての麻生首相の認識に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。
平成二〇年一一月六日
提出者  辻元清美
衆議院議長  河野洋平殿

田母神前航空幕僚長の論文「航空自衛隊を元気にする一〇の提言――パートⅢ(その1)」についての麻生首相の認識に関する質問主意書
田母神俊雄前航空幕僚長は、民間企業が主催する懸賞論文に、政府見解と異なる内容の、「日本は侵略国家であったのか」と題する懸賞論文を応募するに先立ち、統合幕僚学校長として、航空自衛隊幹部学校幹部会発行の『鵬友』に下記のような論文を掲載している。「航空自衛隊を元気にする一〇の提言――パートⅢ(その1)」(『鵬友』三〇巻二号、二〇〇四年七月)。それらには、下記のような記述がある。
(記述一)「日本軍は残虐非道の軍であった、軍人が暴走した、韓国人や中国人にひどいことをした、南京大虐殺を行ったとかいう無実の罪を背負わされた」「比較の問題で言えば我が国は戦前から他の列強ほどのひどいことはしていない」(三頁)
(記述二)「現在の価値観で昔を断罪することは無意味なことだ。日米関係においても、それぞれの相手国に対する昔の悪行を話題にするようなことは努めて避けるべきである」(四頁)
(記述三)「我が国の政治指導者が反米になることは絶対に避けなければならない」(五頁)
(記述四)「やがて総理大臣の八月一五日における靖国参拝も可能になるであろうことを期待している」(五頁)
(記述五)「私は部外で講演するときなど、あんなものは殆ど恐れる必要はありませんと言っている。 (中略)核兵器は政治的な恫喝に使われるだけなのだ。もし我が国がミサイル防衛体制を整備すれば、その恫喝さえも困難になる。(中略)核ミサイルでない限りミサイルの脅威もたかが知れている。通常はミサイル一発が運んでくる弾薬量は戦闘機一機に搭載できる弾薬量の一〇分の一以下である。一発がどの程度の破壊力を持つのか。航空自衛隊が毎年実施する爆弾破裂実験によれば、地面に激突したミサイルは直径一〇メートル余、深さ二~三メートルの穴を造るだけ(中略)北朝鮮が保有しているミサイルを全て我が国に向けて発射しても、諸所の条件を考慮すれば、日本人が命を落とす確立は、国内で殺人事件により命を落とす確立よりも低い(中略)冷静に考えてみれば北朝鮮のミサイル攻撃による命を落とす確立は交通事故の一〇〇分の一以下だと思う。だから北朝鮮のミサイルなんかに恐れおののくことはないのだ。(中略)。交通事故以下の危険の確立についてはそれほど心配してもしょうがない。これを私は『タモちゃんの交通事故理論』と呼んでいる」(一四―一六頁)
(記述六)「自衛隊の業務を処理する場合も危険の確立を適正に認識しないと業務の非効率化を招き、いろいろな問題が発生する。(中略)今日事故があったら、明日は多分事故はないだろうと考えるのが真理に近い」(一六―一七頁)
当該論文が、自衛隊統合幕僚学校長時代に執筆され、広く流布していたものであることを考えると、対外的な影響があまりに大きい。また、内部向けの会報に掲載されて配布されていることを考えれば、現行の自衛隊の教育内容について至急検証すべきと考える。田母神前航空幕僚長を同職に任命したのは当時の安倍首相であるが、引き続き航空幕僚長の地位に留めた麻生首相の見解を明らかにしたい。
従って、以下、質問する。
一  論文「航空自衛隊を元気にする一〇の提言(パート三)(その一)」に対する麻生首相の認識について
1 麻生首相は、「記述二」にあるように、「現在の価値観で昔を断罪することは無意味なことだ。日米関係においても、それぞれの相手国に対する昔の悪行を話題にするようなことは努めて避けるべきである」との認識を共有しているのか。そうでなければ、アメリカは広島・長崎への原爆投下について「謝罪すべき」という認識か。麻生首相は、広島・長崎への原爆投下についてアメリカに謝罪要求をしたことはあるか。したとすれば、アメリカはどのような回答をしたか。していないのであれば、しない理由を明らかにされたい。また麻生首相は、今後アメリカに対し謝罪要求を行うか。
2 「記述三」にあるように、統合幕僚学校長が「我が国の政治指導者が反米になることは絶対に避けなければならない」と発言することは適切であると考えるか。適切でないとすれば、どのような処分が必要であったと考えるか。
3 麻生首相は、「記述四」にあるように、「やがて総理大臣の八月一五日における靖国参拝も可能になるであろうことを期待している」との認識を共有しているのか。また統合幕僚学校長がこのような発言することは適切か。適切でないとすれば、どのような処分が必要か。
4 麻生首相は、「記述五」にあるように、「北朝鮮が保有しているミサイルを全て我が国に向けて発射しても、諸所の条件を考慮すれば、日本人が命を落とす確立は、国内で殺人事件により命を落とす確立よりも低い」との認識を共有しているのか。
5 「記述五」が正しければ、北朝鮮が核兵器を放棄すれば、「政治的な恫喝」への対抗手段としてのミサイル防衛計画は意味を失う。その場合、ミサイル防衛計画は中止すべきと考えるが麻生首相の認識はいかがか。
6 当該『タモちゃんの交通事故理論』を麻生首相は知っているか。当該『タモちゃんの交通事故理論』は政府の公式見解と同じか。同じでなければ、統合幕僚学校長名で発表され、「部外で講演するとき」に発表されてきたことは適切か。適切でないとすれば、どのような処分が必要か。
7 麻生首相は、「記述六」にあるように、「今日事故があったら、明日は多分事故はないだろうと考えるのが真理に近い」との認識を共有しているのか。そうであれば、どのような統計的根拠により「真理」と考えられるのか。
8 現在の航空自衛隊のリスク管理は、「今日事故があったら、明日は多分事故はないだろう」という認識のもとに構築されていると考えてよいか。麻生首相は、それを適切と考えるか。適切でなければ、どのように修正すべきと考えるか。
9 麻生首相は、このような論文を、田母神前航空幕僚長が統合幕僚学校長として出していたことを承知していたか。承知していたのであれば、処分を行わなかった理由は何か。処分を行わなかったことについて麻生首相に責任があると考えるか。
10 承知していないのであれば、航空幕僚長を引き続き任命するにあたり、適任であるかどうかの調査を行っていないのか。調査を行わなかったとすれば、その理由は何か。また、調査を行わなかったことについて麻生首相に責任があると考えるか。
11 統合幕僚学校長の名前で当該論文が出されていたことに対して、対外的、内部的にどのような影響があったか。また、どの程度の影響があったかについて検証したか。していないのであれば、すぐに検証すべきと考えるがいかがか。麻生首相の認識を示されたい。
12 当該論文が、当時現職の自衛隊統合幕僚学校長が書いていることを考えれば、自主回収すべきと麻生首相は考えるか。
二 安倍元首相の任命責任について
1 田母神前航空幕僚長を航空幕僚長に任命したのは安倍元首相である。安倍元首相は、このような論文を、田母神前航空幕僚長が統合幕僚学校長として出していたことを承知していたか。承知していたのであれば、航空幕僚長に任命した理由、処分を行わなかった理由は何か。
2 承知していないのであれば、航空幕僚長を任命するにあたり、適任であるかどうかの調査を行っていないのか。調査を行わなかったとすれば、その理由は何か。また、調査を行わなかったことについて安倍元首相に責任があると考えるか。
2 麻生首相は、安倍元首相に任命責任があると考えるか。そうでなければ、誰に責任があると考えるか。
3 安倍元首相の任命責任について、政府として調査すべきと考えるがどうか。麻生首相の考えを示されたい。
三 航空自衛隊幹部学校、自衛隊統合幕僚学校および防衛大学校の教育内容について
1 麻生首相は、航空自衛隊幹部学校、自衛隊統合幕僚学校および防衛大学校において、現在、「記述一~六」と同様の認識に基づいた教育を行うべきと考えているか。
2 航空自衛隊幹部学校、自衛隊統合幕僚学校および防衛大学校において、現在、「記述一~六」と同様の認識に基づいた教育が行われているか、日本政府は検証しているか。検証していなければ、至急調査すべきと考えるがいかがか。
3 もしも現在、「記述一~六」と同様の認識に基づいた教育が行われているとすれば、至急是正すべきと考えるがいかがか。
4 航空自衛隊幹部学校、自衛隊統合幕僚学校および防衛大学校では、かつて「記述一~七」と同様の認識に基づいた教育を行ったことはあるか、日本政府は検証しているか。検証していなければ、至急調査すべきと考えるがいかがか。
5 もしもかつて、「記述一~六」と同様の認識に基づいた教育が行われているとすれば、どのように対処すべきと考えるか。
四 現役の自衛隊統合幕僚学校長が、部隊内外で読まれることを前提に発表した以上、「記述一~六」を含む当該論文が政府の方針を示すものとして受け止められると考えてよいか。麻生首相および政府の見解を示されたい。
右、質問する。